34.異形
ふと、目の前に鉄鼠が倒れているのを見つけ、一斉に駆け寄る。
そして調べようと触れた瞬間には、光の粒子となって消えてしまう。
思わずパーティメンバーと顔を見合わせるが、結論は出ない。
多分誰かが倒したのだろうが、この坑道に自分たちより先に入った誰かでもいるのだろうか?
恐る恐る奥へ進み、天井が高くなったと思った瞬間、ガイヤに突き飛ばされ元の細い坑道に戻された。
「なんだなんだ!何があった!」
「分かんないよ!ただ、気がついたかしらないけど、生命力が一気に吸われてたから一旦引き返しただけさね」
言われて見ると確かに生命力が半分近くまで減っていた。
普通はダメージを負うとそれなりに痛みだったり、ダメージを負ったと分かる感覚があるものなのだが、バグか?
「確かに皆ダメージを負ってる。あの部屋に入った瞬間だとすると、かなりの速度でやられてると思う」
「私も半分ない!」
「こりゃ、一応素材の特殊な鉄は手に入ったんだし、一旦引き上げるかい?」
原因も何も分らないのに引き上げるのは何とも気持ち悪いが、しかしかなりのダメージを負ったのも確か。
しかも強者であるガイヤとマ・ソーニも相応にダメージを受けてる様子から、一筋縄でいかない事も容易に想像できる。
「デハ 単独デ 潜入 内部ノ 探索ヲ 行イマス」
「何言ってんだ?鉄人」
「ダメージ 無 自分ガ 内部ヲ 確認 スルノガ 最良ト オモワレマス」
「へー!やっぱりこれはクラーヴンとそのロボのクエストって訳だ!見てきてもらったらいいじゃないか!」
「いや、ちょっと待て。これで内部破壊されてコアが取り残された場合、どうやって回収するんだ?」
「鉄人ちゃんとお別れなの?」
「いや、それはないだろ!正体不明の敵にいきなり即死なんてそんな救われない展開は流石に無いよ!」
「だが世の中ってのは意外と残酷に出来てるからな」
「コア部ダケハ 死守シテ 必ズ 帰還シマス」
それだけ言うと、二足歩行で奥へと進んで行ってしまう鉄人。
すると、いきなり発砲音が鳴り響く。
鉄人の空圧銃の軽い音が連射し、明らかに戦闘になっているのが分るが、中を見通すには入り口が狭すぎる。
生命力を確認しながら近づける限界を探るガイヤが、合図を出したので全員で部屋に近づき、中を見守る。
中には色といい形といい表現の仕方が分らない不定形の何か。
ヒトより少し大きい程度の何かは茶色く、黒く、黄色く、白い。
納豆と黒豆とバナナと牛乳をミキサーにかけたのに全然混ざり合ってないような気持ち悪い色に、
不定形で、グズグズと形が変わるのにスライムのような生易しい半固形ではなく。
液体としか思えないサラサラ部から、完全に個体の場所まで一貫性無く適当に混ざり合ってる何か。
「何か汚いね」
カーチがはっきり言ってしまうが、その正体も分からない内から、何か汚いと思えてしまう敵?
鉄人が水圧銃で吹き飛ばし、壁にぶつかるとそのままグズグズ崩れ去っていく。
ガイヤが内部の安全を確認しつつ敵に近づき、自分は鉄人の状態を確認する。
汚い見た目の敵にあちこちやられ、本格的な修繕が必要な体にされてしまっていたが、取り敢えず移動に関しては問題なさそうだ。
〔IRM〕で取り敢えず装甲だけは回復してやりつつ、破壊されてしまった武器は帰ってから新調してやろう。
「駄目だね。何か汚い感じの敵としか分らない」
そう言って、こちらに戻ってきたガイヤ。
応急処置を終えた鉄人が、また勝手に動き出し部屋の奥へと向かう。
そこには基地にも置いてあったようなコンソールが並び、そのうちの一つにプラグを挿す。
多分またデータの取得をしているんだろうと、一旦放っておき、自分は例の汚い敵を観察しに行く。
見た目の割りに変な匂いはしない。
やっぱり固形物と液体が混ざり合ってない、例えようのない何かは、目を初めとした生物としての器官もなさそうに見える。
<解体>して素材の一つも手に入れた方がいいのだろうが、どうしても触れる勇気が起きない。
それは他のメンバーも同じようで、NPCのマ・ソーニもあからさまに避けて近づかない。
しかし、まあ何でこんなのが坑道奥にいたのか、謎だらけだが仕方ない。
取り敢えずこの部屋が際奥のようだし、鉄人の情報収集が終わったら撤収しよう。
素材が手に入ると言っても、それを加工する手段がまだないのだから、あまり時間を使わせても悪い気がする。
また何かあった時に連絡できるようにしておけばいいだろう。
そんな事を考えつつ、鉄人の元に向うと、
「あ!」
カーチが唐突に大きな声を出したので、振り向いた。
しかし声が聞こえた筈なのに、すでに姿は無く。すぐさまガイヤ、マ・ソーニと顔を見合わせ声が聞こえた辺を捜索すると、
「あ!」
今度浜・ソーニの声が聞こえて、振り返る。
しゃがみこんだマ・ソーニが壁を覗いているかと思ったら、中からカーチが出てきた。
どうやら、身長が低くないと死角になっている場所に更に奥に続く道があったらしい。




