339.あとは見守るだけ
「計画はほぼ完了したな。追加はあるのか?」
「いや、元々余裕を持った計画だったし、十分すぎるよ。お疲れ」
高射砲及び重機関銃の設置が終わり、生産職である自分達の仕事は終わった。
頭上では今も鉄人が邪生物に片っ端から攻撃を加え、所々穴が開いては日差しが漏れては、修復されていく。
「しかし、ダメージを負うとその分小さくなってくなんて珍しいよな?」
「そう?」
「そりゃ、普通は部位破壊や何かになって動かなくなる事はあれども、切られた分減ったりはしないだろ?」
「ああ、そうか……クラーヴンは邪神の尖兵と戦った事無いんだっけ?」
「邪神の尖兵ってスライムだろ?雑魚と見せかけて強敵とは聞いてるが?」
「そう、それ!核以外は斬っても斬っても再生するんだけど、体の総体積が減ってくのさ。そう考えると邪生物も絶対その性質を受け継いでるよね?それが生物兵器だった頃からそうなのかは分かんないけども」
なる程、未だに知らない魔物の特性やゲームのルールは多い。結局装備を整えてやって鉄火場に送り出す事しか出来ん生産職の限界と言うやつか。
それにしても、急に暇になったがどうするか?
「そういや、量産型達にフェニックスフレアボム持たせたんだよな?どうやってあんな高い場所にいる連中にぶつける気だ?」
「そこは既に解決済みだ。コレを配布してある」
レオちゃんが手に大きなプロペラを二個持って差し出してくる。形状から言って飛ぶ為の道具だというのは分かるが、なんとも手回しの良い事である。
「やっぱり、量産型達も自爆させるのな?」
「まぁ、そこは自爆しても修理できるっていう前提だけどね。鉄人もクロードも嘘はつかないと思うしさ……はい!そこ!サボらない!左翼弾幕薄いよ!」
話しながらもちゃんと全体の戦況は把握しているらしいが、自分の目には今も天を覆う黒い幕が小さくなっているようには見えない。ただそういう報告が耳に入るのみだ。
「このペースで、殲滅できるのか?」
「分かんない」
「分かんないって……」
「試算上、すり切りいっぱいで、核の露出まで持っていけるんじゃないか?って感じかな。そして核は宝剣じゃ切れないっていうか、近づいただけで吸われる」
「それで反霊子制御炉と核の両方に対して自爆が必要な訳だ。何で一つにまとまってないもんかね?」
「それが生存戦略なんじゃない?とりあえず核が残ってりゃ生きのびるし、時間なんてあってないもんじゃん邪神の化身からしたらさ」
「まぁ、そりゃ大昔としか言いようのない、遠い昔に生命科学研究所ごと地底の底の底に封じられてた訳だからな」
余計な事を喋りながら臨時で指揮所としている場所へと戻った。
隊長の陣取るやや小高い丘に登り、地上から打ち上げられる花火のような攻撃群を見つめ、それがどんな派手な爆発を見せようとも、黒い幕に吸収されていくような錯覚を覚える。
「隊長、我も特殊制御炉を搭載しているぞ?」
急に声を上げたレオちゃんに思わず振り向くと、カーチもモグラちゃんの上からレオちゃんの方を振り返るところだった。
カーチの仲間は大半が地上戦用で既に、じうん同様やる事はなくなった為、一緒に指揮所に戻って来ていた。いや自分同様と言うのは語弊があるか、何しろ邪生物を地上におびき出す水路工事に最も尽力したのがカーチだし、カーチ無しにこの計画は無かったのだから。
「レオちゃんもやっぱり行くの?」
カーチの何か悟ったような質問に、レオちゃんが静かに答える。
「我は余りに長く在り続けた。それは多分我を作ったヒトの想定する以上の時間……今の世界には過ぎたる反霊子の技術を消し去る為にも行くべきであろう」
「そっか……」
「レオちゃん……生命科学研究所だって沈黙させる事は出来たんだし、レオちゃんの制御炉だって何とかなるんじゃないか?」
「いつか誰かが制御炉の危険性を忘れ、安易に道具として利用する時が来ないと言えるか?長い時ヒトを見守って来てそれは不可能であると我は断ずる。なれば負の遺産である邪生物と共に消してしまった方がよい」
カーチは既に覚悟していたことのようだし、自分も言い返す言葉が見つからない。こういう時感情的になって理由もなく止められる様な性格だったら、どれだけよかったか……。
「あのしんみりしてる所、悪いんだけど、一応計画では鉄人とキジンの二つの制御炉で邪生物の反霊子制御炉と邪生物の核は潰すつもりなんで、レオちゃんを自爆させる予定は無いよ?」
そんな空気をあっさりぶち壊しにしてくれる隊長の様な性格にならなくて本当によかった。
「万が一という事もある。それまでここで待機していよう」
そう言うと、その場に静かに佇むレオちゃん、そして肩をすくめるようにしてクロードに何やら指示を出す隊長。
そう言えば、隊長が指揮を代わってからクロードは何をやってるんだろうな?
レオちゃんもクロードも沈黙し、ただただ地上から打ち上げられる爆発に目をやりつつ、戦況を見守る。
空に掛かる邪生物の所為で中途半端に暗い戦場には、妙に重苦しい空気が漂っているように感じられた。




