331.そういう事か
敵本拠地から偵察型がちょろちょろと出て来て、それぞれの所有者の下に戻ってきた。
「出来れば、反霊子制御炉を止めたい所なんだけど……」
「無理無理!我も頑張った!ここが正念場の大一番大金星と思ったけど、隙がない!綺麗に覆いつくされて蟻一匹通れない。いや我の方が蟻より役に立つ!」
「うん、能力は信じてるけどさ……こうなるとやっぱり正面突破しかないかね~。室内戦闘となると一度に当れる人数が少なくなる分、消耗戦を仕掛けるしかないか?交代要員を作りながら波状攻撃を仕掛けるのが得策かもな……」
「じゃあ、チーム分けって事になるのか?人数から言って騎士団と嵐の岬が核になるのがいいんじゃないか?」
「やっぱりそれが一番かね。とは言え、ここからはロボ戦だし、戦力比もよく考えないと……」
「ねぇねぇ……動いてるよ?」
隊長と大人達が決戦に向けて相談していると、唐突にカーチが話しかけてきた。
「ん?どうしたんだ?何が動いてる?」
とりあえず手の空いてる自分が、カーチの相手をする為に水を向けると、カーチが建物の方を指差した。
そのまま指の先を辿るように見上げると、確かにドーム型の屋根が回転してる?
「あれは何なんだろうな?時間で回るようになってるとか?いや天井回した所で意味ないか……」
すると今度はゆっくり建物全体が縦方向に伸びて行き、背が高くなり始めた。
ここに至って数人が建物の様子がおかしいと気がつくが、だからと言って、コレが一体何を意味するのか分らない。
ウィーーーーン!ウィーーーーーーーン!
急にメカメカしい音がなり響いたと思ったら、建物がいくつかのパーツへと分解していく。
しかし、分解はされているのだが、どこをどうしているのか?ちゃんと繋がっており、まるでいくつかの関節ができたかのようにも見える。
そのままどんどん上に伸びて行き、天井ぎりぎりと言うところで、ピタッと止まった。
天井ギリギリの最上階と思われる回転していたドームが止まり、ズルッと隙間が開いたかと思うと、そこから赤い目が睨むように閃光を発する。
事ここに来て、何が起こったのか理解した。
「巨大変形ロボだ……」
誰が呟いたか、何なら自分だったかもしれない。それ位同じタイミングで頭をよぎる不穏すぎる単語。
今はもう完全に両腕としか見えなくなった上部の分解されたパーツを伸ばし、そのまま両肩の先までしっかり延ばすと、
ジャキン!ジャキン!
如何にもな金属音と共に先端から手が生えてきて、グー、パー握って感覚を確かめるかのような様子を見せた。
「コレってつまり、反霊子制御炉を……」
「取り込んだって事だな。こりゃチーム分けどころじゃなくなったんじゃないか?」
「総員!攻撃開始!いくぞ!」
隊長が号令をかけると同時にロボ達が、一斉に攻撃を仕掛け始める。
プレイヤー達は、それぞれ生命力を確認しつつ、吸収状態を把握して動いている様だが、現状かなり近い所まで踏み出している様だ。
「悪い!クラーヴン!効果切れる前に適宜フェニックスフォギーボム頼む。湿度コントロールが鍵だからさ!」
それだけ言い置いて隊長も前線に走り、ロボ達の様子を見に行ってしまった。
しかし、自分は責任重大だ。まさか今回の戦いの生命線である湿度100%越え世界の維持を頼まれてしまった。
出来るだけ離れて、戦闘に巻き込まれたりしないように気をつけたほうが良いのだろうが、離れすぎて雑魚に絡まれたとして対応する方法もないし、どうした物か。
「現在戦闘状況優位に展開しておりますが、未だ敵邪生物本体が動作確認中であり、反撃に出ていない事から完全に有利と断定できる状態ではありません」
「ん?鉄人こんな所で何やってるんだ?」
「戦況分析をして情報をG03クロードに送っています」
「……いや戦闘に参加しなくていいのか?」
「武装が高湿度に適応していない為、分析及び戦況確認に従事しております」
言われてみるとイーストキャピタルに入ってから空中に浮いてばかりで、何もやってないかも知れんコイツ。
「水苦手だったか?」
「水上から水中に攻撃する事は可能ですが、水中での戦闘となる場合、雷精の力が水精に拡散されてしまう為、状態としては非常に悪くなります」
この辺の精霊の属性的相性みたいなの、もっとちゃんと勉強しておけばよかったな。
確かに鉄人の武装はことごとく雷精武器だし、何か外付けで武装を持たせるか?
「水精と相性の良い精霊って何だ?銃だったら幾らか持ってるし、突貫工事にはなるが、エネルギーを通して撃てるようにはした方がいいだろう」
「それであれば、氷精、石精、重精のいずれかが適当と思われます」
「だったら氷精にしよう。隊長の銃で慣れてるしな」
と言う事で、湿度を保つしかやる事のない自分にも仕事が出来たので、早速取りかかる。
鉄人なら有る程度大容量の銃器でも扱えるし、軽機関銃タイプがいいか?重機関銃も悪くはないが、流石に重量がありすぎるしな。
両手に軽機関銃を持たせエネルギー回路をつないでやると、うっすら白い燐光を放ちながら鉄人は前線に飛んでいく。
その姿を見送りつつフェニックスフォギーボムを搭載したドローンを飛ばす。プログラムは遠隔でクロードが書き込んでくれるはずだ。




