33.パーティの戦闘技術
「ところで、この鉄鉱石は普通のと何が違うの?」
「それは分らん。調べたら何か違った」
「不明デス」
「それは分らないんだ?」
そこに鉄鼠が降って来たが、ガイヤがあっさり腹パン?しつつ拳に纏った火で燃やし尽くしてしまった。
ガイヤの腹パンは型がかっちり決まっていて格好はいいのだが、なにぶん自分は格闘に造詣が無いので、腹を思い切りグーで殴ってる様にしか見えない。
よく見ると思い切り右足を踏み込んで、斜め下から擦り上げる様に角度を決めて打ち込んでる。
敵の鉄鼠は凶悪な長い爪を持ち、素人目にも踏み込めばその爪で引っ掛かれてダメージを負いそうなものだが、まるでそこにヒト一人分の隙間があるかの様に滑り込み、鉄鼠の足が浮く程のパンチがめり込む。
そして火精使いのガイヤは戦闘中両手に火を纏う。
それは不意打ちであっても一瞬で発動し、燃やし尽くす。
火精は一般的に攻撃力上昇のバフや火傷のデバフ、シンプルな攻撃力強化に使われる事が多い。
ガイヤの装備は利き腕の反対側と胸部と脛だけ金属で覆い、あとは布皮か、露出して刺青が入っている。
外では毛皮のコートを着ていたものだが、坑道内に入ってからは結構な薄着だ。
自分には坑道内も寒く感じるのだが、多分火精系のバフで耐寒なんかも盛っているのだろう。
何だかんだ格闘による近距離を得意としつつ、術による中遠距離も可能。
防具はやや少なめだが、やられる前にやる攻撃寄りのスタイルなのだろう。
早い、上手い、強いの三拍子揃った戦闘スタイルは、闘技場と言う限定スペースとは言え、最強と言われるだけはあるのかもしれない。
そして、更に追加で現れた鉄鼠をマ・ソーニが受け持つ。
武器は両手槌だが、元々子供のように身長の低いドワーフ女子が持つと、やけに大きく感じる。
それをいきなり鉄鼠に叩きつけるのではなく、地面をぶっ叩くと、地面から石錐がいっぱい生えて、鉄鼠の動きを止めた。
地面に対する術で範囲攻撃しつつ、足止めも同時に行う。
仮に複数体の敵が出てきてもあっさり対応しそうだ。
そして、動きの止まった鉄鼠にデカイ槌が振り下ろされて、一撃で屠る。これまた強力過ぎて、鉄鼠の強さがよく分らない。
攻撃一発ごとの振りが遅い分、強力な一撃がちょっとやそっとの防御力は抜いてしまう。
そんな気にさせる鈍い音が、坑道内に響き渡る。
ちなみに服装は生産職らしく皮服のように見えるが、鉄鼠からの攻撃はほとんど通っていないように見える。
物理防御補正といえば、石精だったと思うので、多分その使い手なのだろう。
硬い、重い、強いの三拍子揃った生産職NPCとか、無敵と言うか、最強のガイヤの相棒と言うだけの事はある。
そして、うちの鉄人だが、まず左手の空圧銃は鉄鼠に対してはいまいち通りが悪い。
全く効かないという事もないので、牽制に上手く使っている。
そして水圧銃はよく効く。
水精の術ダメージが乗るのだが、鉄鼠相手にはかなり有効らしい。
水精は溶解とかの象意だった筈だし、その効果だろう。
デバフで防御力の低下した鉄鼠に接近して右手の鉄球で殴り倒す。
うちの鉄人とは思えない活躍ぶり、偶々嵌っただけだと思うが、それにしても狩りが順調なのは助かる。
そして自分とカーチは、応援だ。
ささっと、魔物から離れ、
「よーし頑張れー」
「頑張ってー!大丈夫!絶対勝てるよ!フォー!!!」
「かっせーかっせーはっ倒せー」
「いけるよー今ならいけるよー!絶対勝てるよ!拳を信じて!」
と、テンション高めで応援しつつ、逃げ回る。
まぁ、脇役には丁度いい役回りだろう。
あくまで、装備のメンテナンスやなんかを担当するだけの生産職だ。
鉄人に付き合ってこそいるが、本来はこんな魔物が出てくる場所に出張るのはガラじゃない。
世の主役に装備を提供しつつ、遠くから見守って、程よく適当につっこんだりぼやいてれば、世は万事上手く回るもの。
戦闘を早々に諦めた自分には、すでについていけない次元の戦い、巻き込まれないようにするのが精一杯。
ふと、気がついたが、楽器を持ってたらもっと盛り上がるんじゃなかろうか?
サッカー応援時の定番、ブブゼラなんかはどうだろうか?
これは、盛り上がるし、戦闘職の連中もテンションが上がってきっと戦闘力が上がること間違いなし!
もしくはタンバリン?
でも、変にリズム刻んだら、戦闘職には迷惑かもしれないしな~。
「クラーヴンはさっきから何考えてるの?」
「いや、応援しか出来ないなら、何か応援グッズがあると盛り上がるかも知れんと思ってな」
「それはさすがに迷惑だよ?」
「そうか?じゃあやめておくか。戦闘中手持ち無沙汰なのがなんともな」
「クラーヴンも何か戦闘手段を持てばいいのに」
「そんな事言われても、あまり得意じゃないものはどうしようもないからな」
「じゃあ、せめて回復とか補助とかは?」
「そういうのだって、タイミングとかあるだろ?戦闘の先読みして、必要な時に必要なバフをかけるとか、それこそ戦闘センスが問われるだろ」
「だよね~。やっぱり応援するしかないか~」
「二人共、先行くよ?」
応援組み二人で話している内に、どんどん坑道奥に向かって行くメンバー。
強者とロボには先行き不安なんて言葉は通じない。




