325.敵地制圧戦
「ブラックフェニックス及びクラーヴンが頑張ってくれたお陰で、予定をかなり前倒しできた!しかもわざわざ敵に潜入せずとも直接乗り込むことの出来るメリットは非常に大きい!ここが勝負どころ!行くぞ!」
隊長の檄が飛び、集団戦ではすっかりお馴染みになった隊長の『行くぞ!』が出た事で、こぞって気合を入れて邪生物本体の占拠する街へと飛び込んでいくプレイヤー達。
先陣を務めるのは当然ながらロボ集団、上空を鉄人が浮遊しつつ周囲を警戒、クロードが後方から戦況分析をしてロボ達に指示を出す。
ロボ達の戦闘にはキジンが歩き、今一閃で邪生物分体を斬り落とした。
光剣と物理剣を使い分け、最短最速で敵を斬り捨てる様は、確かに達人を思わせる。
疎らに意図もないまま、本能的に襲い掛かってくる邪生物分体達を数の力で鎧袖一触にし、順調に進んでるかと思いきや、唐突に隊長から指示が飛ぶ。
「はい、ストップ!ここらでそろそろプレイヤーは生命力を吸われはじめる筈。皆気をつけて?」
隊長の言葉にざわめき確認するプレイヤー達の中に、該当する者がいたらしく、すぐさまその場から離れ、最後尾に回って回復をし始める。
「O.K.皆!不安そうにしない!ここまでは想定内だったでしょ?ここから先に進めないからロボだけで行かす訳にもいかず、決戦準備してたんだからさ!」
そう言いながら、自分の方を見て何か差し出すように手で要求してる?一応改良型フェニックスフレアボムを搭載したドローンを渡すとどうやらコレでよかったようだ。
そのドローンをクロードに手渡すと、両手に持ってあっと言う間に命令の書き込みをして、空中に飛ばす。
すると、そう離れてもいない内に空中でホバリングし始めたドローンを皆で不思議そうに見つめると、
カチッ
小さいのに妙に通る音が鳴り響き、思わず周囲のプレイヤー達と顔を合わせて……数秒も経たない内に一斉にそれぞれ自分の頭を抑えてその場に伏せる。
正直その程度でなんとかなる威力でもないとは思うが、体が勝手に反応したのだから仕方ない。
すると頭上からドンッと鈍い音がしたかと思うと、急に目の前が真っ白になった?
頭を上げて周囲を見渡すとやっぱり、視界0と言って過言ではない程の白さに包まれ、呆気にとられる。
「はい、コレが改良型フェニックスフレアボム、名を改めフェニックスフォギーボムだ!」
「うん、霧がかかってるのはそりゃ一目瞭然なんだが、視界ゼロだしこれからどうしろってんだ?」
「どうしろもこうしろもないけど?生命力吸収能力が阻害できればいいんだから、水ぶん撒くしかないじゃん?見てみなよ!フェニックスフォギーボムを連鎖させる事で、湿度100%を超えた世界を!」
言われて見ると、確かにいつの間にか嵐にでも会ったかのように全身べしゃべしゃで、近くにあった建物に触れても、じっとりしているし、地面にもいつの間にかうっすら水が溜まり始めている。
まぁ、湿度は100%越えたら、自然と雨や水としてそこら中に現れるので100%以上にはならないはずだが、それでもその御題目通りの水分量が今自分たちの身の回りには溜まっていて、触れるもの全て濡らしてく。
「しかしコイツは流石に気持ち悪いな……」
「クラーヴンは全身タイツ着てこなかったの?」
思わず出た感想にいつの間に近くにいたのか、カーチから質問された。
「いやそりゃ、何にもないのに全身タイツなんて着てこないだろ?」
「私はコージァちゃんに作ってもらった!ボスは水に弱いんだから、水用の装備整えとかなきゃって言われた」
いつの間にやら仲良くなってた【帝国】【古都】の引きこもり革防具職人とカーチだが、確かにカーチはいつものツナギではなく、体にピタッとした服の上から、半ズボンとカジュアルなジャケットを着ている。
てっきり普通のオシャレタイツか何かと思っていたら、まさかの全身タイツだったとは恐れ入る。
かなり初期の頃から全身タイツを愛用していた『タイツは体の一部』な隊長ならなんと品評するだろうか?
そんな一部のタイツライクな連中はさておき、徐々に霧に目が慣れてくると、周囲の他のプレイヤー達もこの異様な湿度による不快感に中々慣れなさそうだ。
しかし、同時に隊長がストップをかけた線より進んでみてもダメージを受ける様子はない。
「実験成功だね。いや失敗する可能性も考えたんだけど、コレならダイブ楽だわ」
「失敗する可能性もあったのかよ!」
「うん、そりゃね。敵の周りを水浸しにしないと、生命力吸収を抑制できない可能性があったからさ。自分達の周りを覆うだけでいいなら、かなり楽になるし、フェニックスフォギーボムも節約できる」
言われてみればその通りかと、思いなおし湿気の不快感は極力気にしないように我慢しながら、街の中を進む。
濡れた邪生物分体はかなり弱っているらしく、さっきまでよりも更にあっさりと倒して、霧が薄くなってくれば、フェニックスフォギーボムで湿度を足す。
その繰り返しの内に、いつの間にやら巨大な影が、霧に映し出された。




