322.フロート製作と
隊長の指示で第二拠点にフロートを並べ始めて何日経ったろうか?
フロートと言っても中空の金属の容器を片っ端から並べるだけだ。より大きな物ほどその中空の空間を物置に出来るとかその程度のもん。
まぁ、その程度とは言え、次から次へと生活に必要そうな物を並べていくだけでそれなりに見えてくるから不思議なものだ。
コレが海なら、漂流生活体験でも出来たかもしれないが、
幸か不幸か、ここは地下にある街であり、遭難する事だけは間違いなくありえない、そんな場所だ。
そのフロートに何艘もの小船が停泊しており、誰かが来るたび街の外へと続く道に運んでいく。
現在戦闘職達は巨大邪生物の分体を探して地下ダンジョン中を移動している筈だ。
最近では光剣の普及も進み、ドローンを取り込んだ邪生物にも早々苦戦しなくなったと聞いているし、多分準備も整ったと考えていいだろう。
何となく邪神の化身である邪生物との決戦の時が近い事を誰もが感じ、ちょっと重い雰囲気であることは否めない。
そんな中自分が出来る事と言えば、黙々とフロートを広げてその上に必要な建物を建てつつ、ちょっとした簡易拠点になる様に拡張するばかり。
折角の鉄人と言う強力な自動機械人形を守備にまわしてしまうのは心苦しいが、地下ダンジョンを行き来する上で重要な拠点の守りだし、ここは飲んでもらう他ない。
逆に隊長のクロードなどは、あちこち引っ張りまわされて不満かな?と思いきや、結構第二拠点でサボ……メンテナンスと称して休んでいるのを見かけるのだが、隊長はそれでいいのだろうか?
更に第二拠点で変わった事と言えば、正式にブラックフェニックスのラボとして割り振られた区画が整備され、目下フェニックスフレアボム増産中である。
隊長からもたらされた大量の根の国産宝石をふんだんに使用し、片っ端から抽出する事で今やちょっと怖い量のフェニックスフレアボムが山積みされている。
かつては砦を一個爆破する為に一万基を繋いで設置したものだが、隊長は今回コレをどうする気でいるのだろうか?
……言わずもがな。アイツは徹底的な破壊活動の為にちょっと過剰なくらいの火力を用意する馬鹿だ。
しかし、邪生物本体はある種、エネルギーを吸収する能力を持っていると考えられるのだが、本当にフェニックスフレアボムで、大丈夫なのか?
地殻の下と思われるマントルを抜けて火山から飛び出した邪生物本体に対してちょっと不安を感じなくもない。
ふむ、今日もやるべき事はやったし、飯でも食ってログアウトするか……。
なんかこう……今日もしっかり労働したんだが、がっつり食うと言うよりは楽にささっと食って終わりたい気分だ。
こんな時はやっぱりうどんに限るか。
現実じゃ、やたらこだわったりなんだり、ここ最近急にうるさくなった食品だが、自分の感覚からしてみれば、もっと日常的にささっと食べれる身近な物だった筈だ。
やれ喉越しだの何だのと言うが、あれって要はグルテンがどれだけ強固に形成されてるかって話じゃないのか?
だとしたら、うどん消化に悪いとかもっと言われてもおかしくないのに、体が弱った時に何故鍋焼きうどんを出す?
まぁ、これらはあくまで主観的認識に過ぎないので、この位にしておくが、自分が日常的に食べるべきうどんは即ち日本なら南の果ての南国果実が良く育つあの地域で食べられているフワッフワのやわやわうどんだ。
小麦でグルテン形成する系の食べ物なら少しでも消化にいい方がいい!そんな勝手なイメージから、隊長がどこからともなく集めてきた中力粉を使い、やわフワうどんを拵えていく。
しかしそこで大変残念なお知らせだ。イリコ出汁がこのゲーム内にはない。
いや有るのかもしれないが、まだ誰も流通させていないので、今回は海草とキノコで出汁をとり、醤油ベースのスープにするとしよう。
代わりと言ってはなんだが、野菜と肉を具材として使う事により、味に深みを出していけばそう悪い物にもならない筈だ。
ささっと、それらを纏め上げ、あとは麺を茹でて食べるだけとなった時、唐突に後ろから声を掛けられた。
「クラーヴン!何食べるの?」
「おっ?カーチか珍しいな。これからうどん食べるんだが、一緒に食べるか?」
「うん!」
と言うことなので、一食分追加して、テーブルに並べる。
「「いただきます!」」
うん、あっさり優しい味とまでは行かなかったが、食べ応えと満足感とそれでいて食べやすさを兼ね備えた一品になった。
「クラーヴンは最近何してたの?」
「ここの足場作ったりとか、まぁ色々作ってたな。カーチはあちこち掘削作業してたんだろ?」
「うん!やっとねチテイコ?の水が溜まったから、隊長がそろそろだって言ってた」
「そうか、地底湖の水がね……」
「そろそろって邪神の化身と戦うんでしょ?皆のメンテナンスしてもらってもいい?」
「ああ、そりゃ勿論だ。それが仕事だからな。とりあえず、今日はログアウトして、次のログインから本格的にメンテナンスだな」
「分かった!クラーヴンオツカレサマ!」
ふむ、なんだろうなこのざわつく感じ、ここから先は戦闘職連中に任せるしかないってのに、負ける訳には行かない邪神の化身との決戦に不思議と緊張感が沸き立ってくる。




