321.片づけ
レオちゃんがいつの間にやら設置していた空中の網に引っ掛かっていた鉄人を地面に降ろし、第二拠点の被害状況を確認してみると、第二拠点の約1/3が消し飛んでいた。
邪生物分体ですら建物を幾つか倒壊した程度だったのに、守備側が思い切った所為でこの有様だ。
「人的被害は出てないんだからいいじゃん?建物は所詮元々有った物を利用してたに過ぎないし、形在るものはいつか消える!」
とは、今回の事件の最大の責任者の談だ。
それなら復興に金を出せといえば、あっさり出すだろうし、なんなら何も言わなくても前より快適な環境に変えてしまう可能性すらある。
今現状は対邪生物の前線基地と使っている事もあり、抑えているが、平和になったらもう遠慮などないだろう。思うがまま地下道を整備しつくされる未来しか見えない。
「しかし、まぁ……派手にやったもんだな」
「仕方ないだろ?隊長は何かああいう爆発が大好きなんだよ。それよりブラックフェニックスは自分の生産品をこんな破壊活動に使われて……」
「ああ、なんつうか……<錬金>の可能性をまざまざと見せられたし、もっと面白い物作れるんじゃないかって……戻ったらまた研究だな」
うん、全然気にしていないらしい。結局ブラックフェニックスも同類だったらしく、コレだけ大規模な爆発に対して、感心こそするものの、特に反対とかそういうのはなかった。
ただただ、何もなくなった爆心地には敵の残骸だけが<解体>を待つようにその場に沈黙するものの、その他の物は吹き飛んで霊子に還ってしまったらしく、コレでもかと言わんばかりに何にもなくなってしまった。
ぐるっと周囲を見回して、そういえばと、敵が地面にあけた穴を見に行く。
すると、既に隊長を始め数人が穴を囲んでおり、調査中だった。
この穴は遠くから見る分にはそうでもなかったが、近くで見ると、井戸や何かを思わせる程度には太い円状に綺麗に地面がくり貫かれており、底が見えない。
そもそも第二拠点に張っていた水を全部抜くくらいだし、相当な深さに、相当量の水を捨てている筈だ。
「コレは良くないね~」
「そうなのか?」
「そりゃそう、ただでさえ水責めが今回の邪生物に対する戦略な訳だから、ここでどこへ行ったか分らない大量の水ってのは、ちょっと怖い」
「いざとなれば、水を抜いて邪生物に逃げられる可能性もあるからか?」
「それは十分にありうるよね。これは一旦邪生物本体を追い込むのも考え物か?動きだないようにギリギリの所で見守って、ある時タイミングを決めて、一気呵成に攻め込む。言うは易しだけど……」
今まで徹底的に敵に対する嫌がらせを考え、実行してきた隊長の判断がちょっと曇る。
まぁ、確かに分体を上手く使えば大量の水を処分できるというのが今回の件でハッキリしてしまった訳だ。
今後邪生物本体との決戦において、別働隊として分体が本体の動きを制限する水を処理する方向に動かないとも限らない。
あっちを攻撃しながら、索敵しつつ怪しい動きをする分体を破壊する。そんな器用な事が可能なのだろうか?
今現状、隊長を軸とした作戦構築で何とかかんとか戦っているというのに、例えばプレイヤー達を二手に分けて、片や分体を攻撃し、片や本体を攻撃するなんて言う二面作戦を成功させるとしたら、どれだけの指揮上手が必要なのか。
とりあえず大穴は塞ぐ方向で話がまとまったので、全部を埋めるほどの土を用意するわけにもいかず、分厚い金属板で覆って、その上にまた水が溜まって行くようにしていく。
とりあえずすぐに底が抜けることもなさそうなので、そのままにしておいて、問題は更地に何を作るのかって話だ。
「何もなくていいんじゃないの?水を張るのが優先だし、逆に水の上から何か建設するのって難しくない?」
「水位に関係なく浮上する拠点を幾つか作ってはいかがですか?」
「あ~巨大フロートみたいなのを拠点にして、皆が休めるようにするとか?そもそも波なんて有ってないようなもんだし、それも悪くはないか……」
鉄人の提案をあっさりのむ隊長だが、それを作るのって、多分どころかそのまんま自分なんだろうな……。
霊子分解装置にそんな空洞構造で組み立てやすい材料があったか後で探しておこう。
「うっし、方針は決った!」
唐突に隊長が声をあげ、代表者達が耳を傾けると、邪生物本体との最終決戦に向けて指示が出る。
大まかに言うと、
一つ目、今まで通り掘削作業は進めて、さっさと邪生物本体にプレッシャーをかけていく。
二つ目、邪生物本体との戦いで水を差されないように、これからは積極的に巨大分体を襲撃する。
三つ目、フェニックスフレアボムは確実に有効な攻撃手段なので、金や材料にイトメをつけずに大量生産する。
以上が概要となる。
今まで巨大邪生物分体から身を守るので精一杯だったのが、こちらから攻勢を掛けるとの事だが、戦闘職の連中はやる気そのものでは有るが、実際どうする気なのか?
何しろ直接戦闘はロボじゃなきゃ出来ないというのに……。




