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320.狼煙

 フェニックスフレアボムを連結して設置するなんてどれ位ぶりだろうか?


 現在、プレイヤーの手で生産できる物の中で最高火力を叩き出す一品は一回しくじればあっさり自分の生命力など全損する威力だ。


 ロボだなんだと出てきて世界観に随分変化が出た今も威力だけなら最強として、第一線の切り札である。


 勿論ボスドロップやロングクエストで手に入る様な特殊装備やスキルならば、並ぶ威力を出す事も可能かもしれないが、ポイントは生産可能と言う点だろう。


 大量の素材を必要とし金額こそ張る物の、誰でも使えて、材料さえあれば幾らでも大量生産できるソレは、正に兵器と言って差し支えないだろう。


 どれ位の威力があり、どれ位の範囲に影響を与えるのか、戦果を計算しやすく大量に戦場に持ちこめる。


 一発逆転で何が起こるか分らない賭けよりも、確実に戦果を積み上げて、極力計算通りの結果を残す事を至上とするような、正に【兵士】上がりの隊長が好みそうなアイテムだ。


 そう、現在自分達を指揮しているのは、勝つ事を至上とした武士(もののふ)ではなく、決められた戦果を極力誤差なく紡ぎ出し、大戦略に乗っ取った結末に導く冷血な戦争マシンであるという事を忘れてはいけない。


 「それはとても素晴らしく合理的であり、我々の思考ルーティンにも反映させるべき点と思われます」


 いつの間にやら思っていた事が口から出ていたようで、鉄人が返答してきた。ヤドカリのような邪生物分体を引きつけながら、ずいぶんと余裕である。


 「いや、鉄人は十分に合理的だし、いつも助かってるからそのままでいいんじゃないか?」


 「残念ながら研究者によって作られたOSの為、戦況分析等は得意としていますが、瞬間的に差し挟まれる勝機に対する感覚や、目の前の勝利に固執せず最終的な勝利を目指す必要な退却への理解が低いと思われます。これらは処理能力の問題ではなく思考パターンに研究者と戦闘者の開きがある事が原因と考えられます」


 「まぁ、その辺はキジンが担ってるんじゃないのか?確か当時の武芸者だか達人だかの思考ルーティンをベースにしてるんだろ?鉄人が同じ事できる必要ないじゃないか?」


 「その通りですが、意図としてその武人の勝利に対する感覚がキジンの場合強く反映されています。なれば、その武人により大きな枠組みである戦略の点から指示を出すのが役割となる為、隊長総司令の視点が必要と考えた次第です」


 言われてみると、確かにキジンは個の武勇に対するこだわりが強いのか?あくまで目の前の敵に勝利する事を至上として徹底的に戦い続ける。そんな風にも見えなくもない。


 ただ自分はキジンとの関わりは深くないし、是非ともその辺の事はブラックフェニックスに聞いてみたいところだが、どうなのだろうか?


 「そうだな~……最初にアイツに会ったのは【森国】だったが、完全に弄ばれて終わりだったな。それでも、何故か俺に一定評価をして立ち去った姿は妙にヒト臭かったのは覚えてるぜ」


 何でだろうか?今日は皆で自分の思考を読取る日なのか?ブラックフェニックスが平然と他人の心の声に応えてくるんだが?


 「ふむ、確かに武人の思考ルーティンが組み込まれていると言われても納得できるのは確かだ。だとしても強者と高いレベルでやりあいたい自分と、ただのヒトの敵である邪神の化身を滅ぼしたいと感じる何かは別物であるというのは認識している。そして鉄人の指摘通り目の前の敵を殲滅する事が至上の命題であるとも思っている」


 うん……キジンまで……まぁ、いいや。


 「なんつうか、その辺は隊長のロボであるクロードに任せりゃいいんじゃないか?分析の鉄人、武人のキジン、戦略指揮官のクロードで上手く割り振ってだな、勝利を見出すって役割分担が一番上手く回る気がするぞ」


 「そうなると我はどうなる?現状足止めの為に小型地雷の敷設中ではあるが、役割としてはクラーヴンと同じであろう。だが、そのフェニックスフレアボム程の威力の攻撃的生産物は作成不可である」


 「うん、とりあえずレオちゃんはカーチの元で十分な経験を積んでくれ!話はそれからだ」


 適当な感じで切り上げて、とっととフェニックスフレアボムの設置を済ませていく。


 隊長曰く『とりあえず1000基もありゃいけるっしょ!』との事だが、多分……明らかにオーバーキルになる事だろう。


 かつて邪天使相手に一万基設置したのに比べれば可愛い物だが、それでも尋常じゃない破壊力がこの地下の街に渦巻く事は想像にかたくない。


 設置を終えて、プレイヤー達が一斉に街外辺まで逃げてきて、各々最も防御力と言うか、影響を受けない方法を模索する中、作戦が決行される。


 鉄人が敵をひきつけて、唐突に加速して全力逃走すると同時に、赤い光が目の前を満たし、その直後に豪音が鳴り響く。


 あまりの衝撃にその場に伏せる事しかできなかったが、それでも世界が終わろうかと言う地響きが全身を駆け巡る。


 ふと気がついた時には、空中に鉄人が中途半端な逆さ吊りになっているのに気がつく。


 よーーーく目を凝らすと、空中に網があり、それに鉄人が絡め取られているのが分かった。


 そして、まるで世界の終わりのような火の海を歩き出すプレイヤー達、その後をついていくと、既にドリルの邪生物分体は事切れていた。


 「さてさて……邪生物本体が楽しみだねぇ……」


 隊長がボソッと呟いた一言が、どうにも耳に残ってしまう。

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