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32.やっと掘り出す

 「あった」


 他のメンバーに対して、自分はいまいち集中力を欠き、こっそり大欠伸をしていた所のマ・ソーニの不意打ち。


 遂に<採掘>ポイントを見つけたらしい。


 通常<採掘>ポイントは土壁なんかが光って見えるものなのだが、自分のサボりにサボった能力では反応しない。


 まぁ、普段素材は購入に頼っているのだから仕方ない。


 偶に気まぐれで堀に行ったり、狩りに付いていって<採集>したりと元々フィールドワークは得意ではない。


 取り敢えず、マ・ソーニが<採掘>している間に魔物が近づかないように、周囲を見張っていると、坑道内につるはしで壁を叩く甲高い音が鳴り響く。


 カンッカンッ


 と、聞きなれた音なのだが、土壁でこんな音するかな?とついいつも心の中で突っ込みを入れてしまう。


 しかし、<採掘>用の環境音なんだから仕方ない。


 寧ろ、スキルを使って作業してますよと言うのをちゃんと示しているのだから、これでいいのだろう。


 そしてマ・ソーニが掘り出し、差し出してくるのは……。


 「鉄鉱石だな」


 「そう、ここは鉄の坑道みたい」


 「鉄人、ここはお前の名前の元でもある鉄坑道らしいが、鉄なら買えば一山幾らで買えるんだが?」


 「クラーヴン技師長ハ 鉄ガ 最モ 安定シタ 素材ダト イウノハ ゴ存知カト」


 「ああ、師匠の口癖だし、実際使ってみても安定感が抜群だ。癖がなくて何にでも使える」


 「その代わり、変質も受け付けにくい」


 マ・ソーニが自分の言いたい事を繋いで言ってくれたが、正にそれが鉄の特徴。


 この世界の物質は全て霊子で出来ている。


 それを変質させてしまうのが、邪神と呼ばれる存在が撒き散らす魔素だ。


 魔物も元々居た生き物が魔素の影響を受けた結果変質したと考えられているし、アンデットと呼ばれる死体の魔物は、魔素を受けすぎたヒトの成れの果て。


 本来敵性のその魔素すらも便利だからと生活に取り入れるのがヒトの業と言うものだろう。


 鉄は魔素による変質を全く受けないわけではないが、変化の幅が一番少ないのは確かだ。


 更に変質と言うと、この世界を構成する神の一柱である精霊というものが存在するが、この精霊も性質を変化させる。


 変質と言うよりは、その力が宿るという言い方をするのは、やはり敵性との区別なのだろうか?


 精霊は自分達が想像するところの属性及び、それぞれの性質を付加する。


 しかし、鉄はそれが染みづらいと言うか何と言うか、鉄には精霊の力も多少のバフがつく程度に抑えられる。


 つまり精霊の力の宿る武器を作ろうとすれば、鉄以外を使うか、鉄に何かを混ぜて作る必要がある。


 と、まあざっとこれらが一般的な鉄の解釈だ。


 鉄製品は安価で便利だが、特殊な武器を必要とするプレイヤーには全く人気が無い。


 あえてそんな物をメインの素材として使ってる自分が如何に田舎のマイペースな生産職か分るだろう。


 そしてそんな自分でも頼りにして、武器の製作を頼んでくれる変わり者達の為に力を振るうのは吝かではないどころか、本望だ。


 だから今迄武器防具製作で手を抜いた事は一度もない。


 そしてそれらを大切にしてくれなくてもいいので、十分に使い込んで、壊れたら持って来てくれればそれでいいのだ。


 「コノ鉄ハ 扱イ方ニヨッテ 自由度ガ アリマス」


 「私はただの鉄鉱石に見える」


 「……溶解して、変形する時に構成をいじれる?」


 マ・ソーニから預かった鉄を調べていくと、自分にはそういうフレーバーテキストが見える。


 「ハイ 熱デ 溶カス ノデハナク 霊子分解 スルト 形状ヲ 分子レベルデ 再形成 デキマス」


 「霊子分解っつーのが分らんのだが、それを出来る設備なりがまたそのうち見つかるのか?」


 「可能性ハ アリマス」


 なんともまぁ、また大昔の超技術が現れた。


 鍛冶屋がハンマーで鉄を叩くんじゃなくて、分子レベルでその形状を変化させる時代が来てしまった。


 と言うか大昔にはあったので、それを復活させる事になってしまった。


 鉄を叩いて叩いて不純物を取り除き、そこから更に添加剤で純度を上げた後、炭素の量を調整して鋼にする。


 その技術がいらなくなってしまった場合、今までやってきた事はなんだ?って話。


 大昔の技術って奴は復活させちまっていいモノなのか?


 今自分のイメージの中ではでっかい3Dプリンタみたいな機械に鉄鉱石を放り込むだけで、好きな形が出来てしまう。そんな光景が広がっているのだが、我ながら頭を抱えてしまう。


 「ねぇ、クラーヴン大丈夫?」


 カーチにまで心配されてしまう始末だが、コレばっかりは頭を抱えずにはいられない。


 「クラーヴンは、この技術で現行の鍛冶屋の仕事がなくなるかもしれないから危惧してる?」


 「マ・ソーニには分るか?」


 「確かにこれは画期的技術だけど、あくまで形状を整えられるだけの事、鉄を折って重ねて一体化させるまで叩くのとは全く違う」


 「ソノ通リデス 構造的ナ 自由度ハ 広ク ナリマスガ 鍛冶技術トハ 別物デス」


 「それならいいが、俺はその構造自由な技術を使ってやりたい事もあるし、それだと今までの自分を否定するかもしれないって言う危惧もある。簡単に割り切れるもんじゃないんだよ」

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