315.光剣じゃなくてもいい?
サイーダを仲間に入れたとて、闇雲に突っ走った所で何も解決しない。
まずは何でもいい、錐の一穴をあけられるような突破口を……あっさり見つかった。
「試作剣が見たいってのはどういう事だ?クラーヴン?」
「どういう事なんだろうな?サイーダ?」
「だ~か~ら~光剣をパワーアップしたいわけじゃん?だったら光剣と似たような特性の術剣使いにその剣を見せてもらえばいいじゃん?ご存知の通りブラックフェニックスは<錬金>使いで、武器や道具に精霊の力を利用するだけで、コントロールはできない。それでも強力な術剣を使えるんだからさ!ここは参考にさせてもらおうよ!」
ふむ、どうやらブラックフェニックスは光って蹴るだけの存在じゃなかったらしい。
言われて取り出した筒は確かに光剣にちょっと似ているなと思ったら、その筒から紫色の光が一本立つ。
「コレが試作剣で雷精を発動した場合の姿だ」
「コントロールとかはどうなってる?」
「コントロール?……最初からこういうもんだし、特に操作はないな。精神力を流すかどうかそれだけだ」
ふむ、威力調整や攻撃範囲調整は不可であると。
そして肝心の構造だが、どんな複雑な構造になっているのか?何なら戻せなくなったらどうするか?
色々心配しながらそっと筒を分解してみると、超がつくほどシンプルなつくりで、何を隠そうゲーム内の現代の技術が詰まった作品であった。
大昔の技術であるロボ製作技術の構造の複雑さなどなく、宝石から直接精霊の力を引き出してた頃ほどの謎理論が盛り込まれているわけでもない。
異様なほどに抽出を繰り返して純度を上げた精霊の力を一方方向に出力して、剣……と言うより揺らめく鞭状の軌道で敵や対象にぶつける。
何となく一方方向に出力されているから、剣に見えてるだけのエネルギー垂れ流し武器じゃないか。
「こいつは、ちょっと燃費が悪すぎて俺が思ってる方向とは違うかな」
「だろうな。今はこっちさ」
そう言ってブラックフェニックスはメインウエポンにしてるのであろう何かの尾羽をモチーフにした鞭剣を手渡してくる。
そしてその武器の手元にもブラックフェニックスの力の元と言っても過言ではない、フィルムケースと当人が呼んでいる円筒状の濃縮された精霊の力の挿し込み口が付いていた。
「なるほどな。結局は実体に精霊の力を乗せる方が、燃費は良くなったってわけか。ますます光剣の存在意義が疑われるな」
大変残念な結果だが、あえて防御不能の術剣を使用したい場合を除き、光剣は要らない子と言う事になってしまった。
「え~!!!でも今回は硬い装甲に身を包む邪生物分体を倒さなきゃだしさ~!!!!」
「プレイヤーが弾をいっぱいにした銃を自分のロボに持たせた方が、効率がいいかも知れん。射撃プログラムを本格的に流通させるしかないな。量産型は近接タイプが多いし……」
「何だ……光剣のパワーアップの為に俺の試作剣Ⅱを見たいって言うから何事かと思ったら、ロボに光剣を装備させる話をしていたのか」
「ああ、まあな。だがキジンは特殊制御炉持ちだから、別扱いだぞ。量産型は精神力に該当するエネルギーを持たないんだからな」
「そりゃまぁ、俺も生産職の端くれだし一応の常識としてそれくらいは把握しているが、現状近接攻撃を得意としている量産型に銃を持たせるって案は、ちょっと違うんじゃないか?」
「だよね!ブラックフェニックス!やっぱりあんたはロマンと言うものを分かってる!伊達にベルトの力で戦ってないよ!」
「いや、別にロマンとかそういうんじゃなくてな……」
「何か意見があるなら是非教えてくれ、やっぱり俺なんかはただの鍛冶屋だし、現場の事だと知らん事も多い」
「大層な話じゃない。結局の所慣れた武器ってのが一番使い勝手がいいし、アレが駄目だからコレ!なんて簡単に切り替えられる物じゃないって話さ。確か殴るのが得意なタイプのロボもいれば斬るのが得意なのもいたろう?やっぱりそれぞれの間合いで戦えた方が絶対いいと思うぞ」
……確かにその通りだ。いつからだろうか?ロボだからと画一的に同じ武器を持たせようと思ってしまったのは……。
よく考えるまでもなくブラックフェニックスの言う通りで、誰しも得意な間合いと言うのは存在する。
例えば重装型の盾持ちに光剣を装備させたところで、振る速度は低いのだから要らない武器になってしまう。
それなら、大盾とショートドリルランスで詰めた方が、よっぽど相性がいい筈だ。何なら盾に仕込みをして、攻撃してくる敵に自動でカウンター術攻撃が当るのも悪くない。
逆に拳で殴るタイプの高機動型も剣なんて持たせない方がいい、雷精か火精辺りで殴って上での追加ダメージとかそっちの方が絶対合う筈!単発の威力より積み重なる術ダメージが効くだろう。
そして剣と言えば多腕型の出番だが、光剣でなくてもいいかもしれない。剣を攻防両面で使うタイプのロボに攻撃一択の光剣は似合わない。どこかの変人が未だに鋼の剣を持つのと一緒だ。
光剣って形にこだわる必要が全くない事に気がつき、今後の方針が決まった。




