307.雷霆
「なんか、頑張ったらできちまった」
そうとしか答えられない超巨大バリスタは<鍛冶>と霊子分解装置の融合、そして自分が使える素材を使えるだけぶっこんだ結果出来たただのゲテモノだ。
ありとあらゆる物をくっつけて、繋げて、積み込んだ所為で、最早誰も持ち上げる事適わないそれは、棒状の何かであり、どの武器に類すると言えばいいのだろうか?
バネ、空気圧、コイル……普通ならどれか一つを選択し威力を高めるのだろうが、取り敢えずの全部乗せ、からのスキルの力で全てが相乗的にお互いの力を増す構造になってしまった。
そして最早ボルトと言うにはその能力を説明する語彙を探すのに苦労する弾丸は、衝撃を高める重さ、貫通力を高める鋭さ、対象物を破壊する硬さ、そして肝心の破壊効果がちゃんと乗った一品だ。
急造したにしては必要な要素の揃った武器を前に、思わず笑みがこぼれてしまうものの、自分が出来るのはここまでだ。
何しろログアウト時間が迫っている。
本来ならこういったものは数日かけて作るものだが、敵がいつまで待ってくれるとも分からない、本当に急場しのぎのそれであり、思い通りの威力を発揮してくれるかどうかも一発勝負で確認する他ない。
それでも設置が終わった頃にビエーラが現れ、静かに建物の屋上で敵を睨んでいる。
「クラーヴンは良くやったの。クラーヴンがそれ作ってる間にログアウトしてきて、ログインできる時間は稼いできたから後は任せるの」
「そうか?俺に出来るのはここまでなんだが、本当に大丈夫か?」
「既に本隊や他の戦闘職にも連絡が行ってるから大丈夫ですよ」
いつの間にかビエーラの横には旦那のカヴァリーが立っていた。
多分現実で直接話し、大急ぎでこちらに駆けつけてくれたのだろう。そして同時に応援要請までちゃんと掛けてくれるのだから、本当に仕事の出来る旦那だ。
「クラーヴンと僕はそろそろログイン時間限界ですし、それの威力を是非拝んでからログアウトしたいですね」
「安心するの、今ぶっ放すの」
「いやちょっと待て!敵がどんな反応するかも分からんのだから、救援が駆けつけてから勝負に移った方がいいんじゃないか?」
「そんな悠長な事は言ってられないの。剣聖の弟子がログアウトしたら水中の時間稼ぎも止まっちゃうの。それなら今の内に大ダメージを与えて、水上戦で足止めをするの」
納得できるような乱暴すぎるような答えを貰いつつも、やはり戦闘に詳しくない自分は頷く他ない。
ビエーラがクロスボウと言うにはあからさまにおかしなギミックを搭載しすぎた長大な棒の前に寝そべり構える。
その間に筒の内部の空気圧を限界間で圧縮し、更に雷精の力を筒が纏い、パチパチと紫のエフェクトが飛ぶ。
そしてカウントダウンもなければ、何の掛け声もない。ただビエーラの呼吸が整った瞬間に放たれるボルト。
一見するとそれはただの太すぎる杭ながら、異様な回転数により螺旋の効果で先端にエネルギーが集まる。
ほぼ同時に展開される鉄人の電磁パルス砲によって空間に紫の幕がかかり、それが正四面体を覆いつくす。
見た目こそ大人しい幕だが、それの及ぼす破壊力は自分が十分承知している。
広範囲に広がり、回避不能のダメージを与え、ロボのようなタイプの敵には多大な影響を及ぼすその攻撃でどれだけのミサイルをいなし、ドローンを屠ってきたか……。
何をどうやったか今回邪生物分体はドローンを乗っ取り、殻のように使ってきたが、鉄人には逆効果だ。
作戦ではバリア装甲を無効化する為の術ダメージを与えて相殺する筈だったが、既に巨大な正四面体から火を吹き始めている。
そこに着弾する太すぎる杭が、一瞬で遠目でも分かる大穴を開け、文字通り敵の外殻に大穴を明けた。
四面体の丁度折り重なる頂点に穴が開いた事で、瓦解しかかる巨大ドローンを内部の触手が強引に引き止めた。
その姿はまるでヤドカリが自分の家の貝殻を手放さないように必死になっている姿にも見える。
ここからどんな敵の反撃が待っているか分らないが、そろそろログアウトの時間が来てしまったようだ。
ビエーラとカヴァリーを振り向くと、軽く頷くので、ログアウトできる宿泊施設に向う。
出来る事はやった。
だが、最後まで見届けられないのはなんとも心に残る。
生産職としてコレまで武器防具装備を渡して、あとの事は戦闘職に任せてきたし、万全の準備を整える事が仕事だった筈。
今回も別にコレと言って戦闘に参加している訳でもないのに、後ろ髪を引かれる気持ちは一体何なのだろうか?
モヤモヤした物を抱えつつ、ログアウト。
もし、自分がログアウトしている間にこの拠点が落とされたらどうなるんだろうか?
色々考えつつも、ゲームのルールである一日8時間のログイン時間を誤魔化す事など出来ないし、明日も現実では仕事が待っている。
なんならちょっと長居し過ぎた。さっさと寝よう。




