302.第一拠点防衛戦
プレイヤーとロボ達が邪生物分体を倒しつつ、徐々に包囲網を縮め、水面下ならぬ地底ではカーチが水路を繋げて、邪生物の下から水責めにするべく今日も掘削工事を行っている。
自分は時折持ち込まれるロボの修理や、武器のメンテナンス、機械人形の試作なんかをしつつ、第一拠点での生活にもすっかり慣れた。
近未来と歴史ロマンを思わせる水上都市を混ぜて出来たような街並みは、自動で動くドローンの舟で行き来するのだが、下手にヒトが勝手に漕ぎ回るよりもずっと整然としてて、ストレスなく移動できる。
移動の自由と言う点では多少苦手な者もいるかもしれないが、趣と言う点では中々の物だと思う。
地表には見渡す限りの無骨な高原が広がり大型魔物が闊歩している事を思えば、地底にこんな心休まる地があっても悪くは無いんじゃなかろうか?
コレで上手く邪生物を倒せたら、ある種の観光地として開くのも面白いかもしれない。
そんな事を考えたある日の事、そろそろ食事にしようかと買出しに向う途中で突然豪音が鳴り響く。
はじめは地震かと思い、地下で地震を食らうとこんな感じなのか?とか思いつつ、揺れる船から振り落とされないように船の縁を掴んで踏ん張っていたら、二度三度と豪音が続いた。
そして、土煙が立ち込め、その向こうに大きな影が立っていた事で、はじめて状況に気がつく……敵だ!
『敵襲!!!!』
どこからとも無く大きな声で叫ぶ声が聞こえ、あちらこちらで慌しくヒトの動く気配がある。
問題は今現在舟に揺られて、何をする事もできない自分の処し方か?
とりあえずドローンに近場に着けてくれと頼むと、街の中でも火を使っていい貸し調理場とでも言うのか、公共の調理場に降りる事になった。
ドローンはただ命令を遂行する存在なので、敵が現れた事も関係無しに、そのまま舟を漕いでどこかへ去っていってしまう。
ちなみに、漕いでいるのは格好だけで、舟はスクリューで進んでいるのだが、まぁ今はそんな状態じゃないか。
慌てる気持ちと何も出来ないもどかしさが、どうしても思考を散らし集中できなくさせてくる。
だからと言って結局何もできないのだから、精々他人の邪魔をしないようにするしかないと言うのも一応は分かってるつもりだ。
しかしこんな大事に調理場に居る者もいない、取り敢えずは屋上に出て敵の姿を拝みに行くと、土煙もダイブ収まっていて、壁に大穴空けた犯人の姿がよく見える。
それはなんとも幾何学的な形の存在、平面と直線で出来た物体と言ってもいい何か。
巨大な正三角錐は何を考えているかは勿論分らないが、時折こちらに向ける面がクルッと変わり、そのたびビクッとするが、結局何もしてこない。
正三角錐、またの名を正四面体と言うそれは、各面違う色の着いたガラスのような巨大な何かなのだが、通称雨天バリアーをモノともせずに、空中に浮き、クルクルとその場で回っている。
うーん……どうしようか?
まさか第一拠点が狙われるとは思っていなかったしな。
何故ならば、第二拠点が出来て以降、第一拠点の存在意義はかなり薄まり、それゆえ生産職達はここに留まり、後方支援を担当していた。
そこに来て、この襲撃である。
戦力は何体かの修理済み量産型機械人形に、第二拠点の清掃が終わった事で近くに戻ってきた鉄人、以上だと思う。
「鉄人……いけるか?」
「問題ありません」
「だけどあのサイズに対して、戦力が少なすぎるよな?どうしたらいいと思う?」
「敵が何をしてくるか形状からは不明です。現状この街の大半は後方支援の任務に就く方ばかりと考えれば、避難するのが最良と思われます。なれば遅滞戦闘を行い消極的に対応する事で、脱出の時間を稼ぐ方針です」
どうやら最初から鉄人の中で第一拠点に残る後方支援組は戦力とカウントされていないらしい。
まぁそれはそうか……実際に今も脱出のため大慌ての連中だし、それが何か悪い訳でもない。ただ前線に立つ素養もプレイもしてこなかった連中の精一杯の生存戦略それが即時撤退。
この際時間を稼ぐ鉄人の身になって考えれば、一秒でもいいからさっさと逃げた方がいいのだろう。
しかし、考えてしまう。今目の前にいる邪生物分体は、何故水の降り注ぐこの街中で平気なのか?
こういう奴が近づけないようにする為の雨天バリアだよな?
別に考案した隊長を責める気は微塵もないが、水に弱かった筈の邪生物が進化した?
可能性は無くはないが、ここまであからさまに弱点としていたモノがそうじゃなくなりましたなんて、インフォメーションも無しにあり得るか?
多分何かからくりがあるはずだ。そう思えてならない。
今もくるくる回るだけで何もしてこない正四面体の中身を暴いてから逃げても遅くは無いんじゃないか?
死に戻る覚悟ってのが、ちょっと固まってきた頃に、ようやっと敵も動き出す。
水に浮かぶ正四面体が、ゆっくり展開されていく。
割れる三角の中にはぎっちりと植物の蔦の様な物が詰まっており、丸まっていたそれがジワジワと伸びて、近くの建物に巻きついていく。




