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30.廃坑道

 暗い坑道に目が慣れていくと、意外と普通と言うか土道土壁の曲がりくねった道が続く。


 あらかたの予想通り、金属<採掘>用の坑道だと思われ、あとは<採掘>の為に今回一緒に来てくれたマ・ソーニ次第。


 ややゆっくりなペースで、坑道の奥に進む。


 「待って、何か部屋がある」


 突然、生産職にも関わらず、果敢に先頭を歩いていたマ・ソーニのストップがかかった。


 それまで魔物の一体も出てこなくて、油断してたので内心相当驚いたが、立て直し、話を聞く。


 「部屋って言ったか?」


 「そう、部屋」


 言葉数の少ないマ・ソーニが指し示す先には確かに、機械文明の扉らしきものが見える。


 鉄人がその扉に近づき、扉横にプラグを挿し込むと、入り口同様の錆びた重い音と共に上に開く金属扉。


 すると中は、休憩所と見られるベッドとシンプルな調理場のある部屋になっていた。


 「いきなり休憩所とは、どういう造りなんだ?」


 「疑問に思ってる所、悪いけど、私は当然だと思うよ」


 「そうか?」


 「仮に大昔のヒトが、ここで作業してたとするなら、何かあった時の為に入り口付近に休憩所なり休息所を作るだろ?作業ってのは何にしても安全第一、休息するにしても何があるか分からない奥地じゃ不安だろ?」


 「まぁ、一理あるってか、言われてみると確かに自然に感じるな」


 「じゃあ、ここはまだ入り口なの?」


 「そう。暗いからゆっくり歩いてるし、まだ入り口。でもここで休息出来るから、場所を覚えて置けば便利」


 自分達がそんな話をしている内に、鉄人がまた勝手に奥に向かい、更に重い扉を開く。


 予想外の展開に、一斉にそちらを振り向くと奥には、如何にもな機械集積スペースがあった。


 何の回路とも分らないが大量の線が束ねられ、時代と共に落ち垂れ下がり、雑然とした狭いスペースにはいくつかのスイッチと言うか、自分の感覚からするとブレーカーが並んでいる。


 現実で考えるなれば今も現役のブレーカーだが、未来的な文明を持つかもしれないゲーム内では新しいんだか古いんだか分からないつくりのアレ。


 「コレ、スイッチを上げちまっても大丈夫なのか?」


 「不明デス 状態ハ 良ク アリマセン」


 「じゃあ、皆下がってろ。最悪俺一人吹っ飛ぶだけなら何とかなる」


 「いやそんな訳に行かないだろ!一番生命力に余裕がある私が行くよ!そのために来たんだろ!」


 「ガイヤはこいつら守る為に来たんだろ?こういう機械的な事故は俺が一番慣れてる。任せろ」


 そう言って一番左のブレーカーを上げると、バチバチッと音がして、近場の線から火花が散る。


 しかし、一瞬上がった火花に自分の驚いた顔は写ったかもしれないが、大事には至らなかった。


 一息ついて、二つ目を上げると更に大きな火花が散り、離れた連中すら驚いた顔を一瞬照らし出す。


 思わず呼吸が荒くなり、それを押さえる為に敢えて大きく息を吐き出し、整える。


 仮に大爆発が起きたとして死に戻りするだけだし、巻き込んでもNPCは入院するだけなのだが、それは分っていても緊張する。


 ホラーを髣髴させる暗闇と手持ちの灯りを頼りにブレーカーを上げて行くシチュエーション、次が最後のブレーカーなのだが、上げたら最後、化け物が出てきたとしても受け入れられる。


 受け入れられるが、驚かないとは言ってない。


 それはもう、叫び声を上げるかもしれない。


 ここまで予想出来ていても、怖いものは怖いし、驚くものは驚くと言うのがホラー展開だろう。


 逆に、こうすれば驚かないと言う方法があるなら教えて欲しい。


 と、言うか、子供のカーチがいるのにこんなホラーやってもいいのか?


 「なぁ、カーチ?この状況怖くないのか?」


 「え?なんで?バチバチは驚くけど別に怖くないよ?」


 「でも、真っ暗だし、怖いだろ?」


 「……真っ暗じゃないけど?遠くは見えないけど」


 「は?」


 「カーチはまだ子供だから、私達とは表現方法が違うんだろ?年齢に応じてマイルドになるってゲームのHPに書いてあったろ?」


 完全に忘れてた。


 真っ暗闇でよく分からんブレーカーを上げて、生きるか死ぬかのデストラップやってるのは酒も飲める成人チームだけだったのか。


 何気にNPCのマ・ソーニは素知らぬ顔してるし、子供と成人のゲーム世界の見え方については、アンタッチャブルなんだな。把握した。


 まぁ、子供いることだし、感電のグロ表現で死ぬ心配はないだろうと、勝手に安心材料を増やしつつ、最後のブレーカーを上げる。


 すると……何も起こらない?


 いや、これだけドキドキしたのに何も起こらない?


 「ねぇ、ココ」


 マ・ソーニに言われるがまま近づいて、配線を掻き分けると、一番大きな嫌な形のスイッチが残っていた。


 ブレーカーのように指で上げるやつじゃなく。思い切り握って上に押し上げるタイプの、最早スイッチと言うよりレバーのやつ。


 「ふぅぅぅ、じゃあ行くぞ?」


 それだけ言うと察したように遠く離れてこちらを見守るパーティメンバー。


 思い切り、レバーを押し上げると、


 ブゥゥゥゥンと重低音が鳴り響き、自分がいた部屋も明るく照らし出された。


 すぐに重低音には慣れ、聞こえなくなり、そしてさっきまでとはうって変わって明るくなってしまった坑道に出る。

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