27.姪
今日も今日とて大雪の探索日和。
「ビエーラ、カヴァリーは今回はお休みか」
「そうなの。折角だし、ロボクエストにもう少し参加したいけど、パーティ人数的に多すぎても多分困るの」
「機械とかロボとか嫌いじゃないんで、また別の機会にはご一緒したいですけど今回は<採掘>なんで譲ります」
一応今回は新素材取得を目指しているのだが、戦闘職の二人は遠慮してくれた。
そしてカーチは自分のロボを手に入れる事を目指して、今回も参加。
だが、問題は<採掘>担当だ。
自分の狭いコミュニティではどうにもならなかったので、ビエーラ、カヴァリー夫妻に頼んだはずだが……?
そんな事を思いつつ約束の集合時間、
バンッッ!と店の扉が開き、ややハスキーな女の声が店内に響く。
「時間通りだね!」
はっきりと誰に何を聞かれても恥じる事はないとばかりの声、自己主張が強く並みの感覚では着れないであろうマフィアが来てそうな毛皮のコート、燃え上がるような真っ赤な髪。
こんな特徴を持つのは、プレイヤーの中でも頭一つ抜けた対人戦のプロ『ガイヤ』。
何かもう、言葉の端々から見た目から自信と言うものが溢れ出して、洪水の様に押し寄せてくる。
ゲーム内でも有名すぎて、主な戦闘手段が格闘と火精だと割れているにも関わらず、闘技場と呼ばれる対人専用施設での戦闘では右に出るものがいないとか……やっぱりいるとか。
まぁ、ごく一部の戦闘職の中には対等に戦える者もいるらしいが、闘技場最強と言う二つ名に異を唱えるものもいないのも事実、自分のような生産者から見れば雲の上の強者だ。
しかしまあ、何でそんな有名人がこんな人気のない【古都】まで来て、更に普段は身内くらいしか寄り付かない内の店に来たのか?
答えはすぐに出た。
ガイヤが目立ちすぎて気がつかなかったが、すぐ後ろに小さな女性の影がある。
一瞬子供かとも思ったが、どうやらドワーフのようだ。
このゲーム、プレイヤーが選べる種族は現状ニューターと言われる標準的なヒト型のみ。
体型の設定も現実から大きく離れないように制限がある。
つまり、ニューター以外の種族は全部NPCだと思って間違いない。
そしてそのドワーフが、おもむろに店内に入ってきたと思ったら、
「叔父さんの店なのに、お客さんがいるって珍しい」
といきなり失礼な事を言い出す。
「うるせぇな!マ・ソーニ!久しぶりに顔見せたと思ったらよ!なんだ?酒でも飲みに来たか?」
と、奥から親方が現れた。
つまり、この叔父、姪を会わせるために来たという事か。タイミングが悪い。
「ビエーラ、取り敢えずここじゃなんだし場所を変えるか?<採掘>をやってくれるって言う相手は何かあったか、遅れてるんだろ?」
「そんな事ないの」
「何言ってんだい!新素材の<採掘>だろ?私がついて行ってやるって!道中の危険は私が振り払ってやるから!大船に乗った気で……」
「いや、俺達が待ってるのは<採掘>担当だから、戦闘職は間に合ってる」
そう言って、横を抜けようとすると、
「だから、うちのマ・ソーニを連れてきたろ!私の相棒は何だかんだあらゆる危険な場所で宝石や何かの収集をしてきた凄腕だから、役に立つよ!」
「ん?」
「ん?じゃないよ!アンタが腕の立つ<採掘>スキル持ちを探したんだろ?だからビエーラの伝手で私が来た!」
「あ~そういう……」
そう言えば、ビエーラ同様ガイヤもβ版からのプレイヤーだった。
β版からプレイしているプレイヤーはかなり限られてるので、結構顔見知りが多いらしい。
これまた賑やかな探索になりそうだなと、思いつつ。確かに戦闘においては不安はなさそうだなと、切り替える。
つまり、今回は前衛ガイヤ 遊撃鉄人 生産職マ・ソーニ、カーチ、自分と言うパーティでの探索と言うわけだ。
前回は戦闘できるのが3人に生産職2人だったのだが、その比率が逆転と言うわけだ。
こりゃ自分もそろそろ真面目に戦闘手段を持たないとまずいか?
まあしかし、いきなり付け焼刃でどうにかなるものじゃないし、今回は最強と呼ばれるガイヤの世話になろう。
「状況は飲み込めたみたいだね!」
「ああ、それで報酬はどうする?」
「別に!邪神の化身を倒した事で変わった世界を見に行くだけさ!」
「何か作ってもらったらいいのに?」
さっきまで親方と話していた筈のマ・ソーニがいつの間にか会話に参加していた。
「何かって、何さ?」
「さぁ?でも叔父さんが言うには腕はかなり立つみたい。叔父さんが認めるって言う事は、そういう事だから」
「そういう事?」
「ふーん、確かに【帝国】のクラーヴンって言ったら、結構な有名人だし、何か作ってもらうのも悪かないか」
「そりゃ鍛冶屋だし、鉄製品作れってなら何でも喜んで作るが、素手で戦うのに必要なものでもあるのか?」
「そりゃ私ら【闘士】だって防具はつけるからね。予約の取れない鍛冶屋クラーヴンの防具って言うなら、報酬としても十分さね」
「別に店に来れば作るがな?」
「ねぇ、クラーヴンは前にお店に人がいっぱい来て困ったから、私達が代理で注文受けてるんじゃん」
カーチにつっこまれて、確かにその通りだと思いつつ、取り敢えず報酬としてガイヤの装備製作は引き受ける事にした。
「さて!話も決まった所で、皆私についてきな!全員目的地まで守ってやるさ!」
「ついて行くのはいいが、行き先は知ってるのか?」
「知らないよ!」




