24.子供の悩み
それから数日、自分の所にカーチは姿を見せていない。
新たな素材取得地に行く予定まで、まだ少し有るのだから当然といえば当然の事。
しかし、何かと理由をつけて鉄人に会いに来ていた最近の事を思えば、おかしいといえばおかしい。
そんな折、突然店に真っ黒い装束で顔まで隠した男が現れたと、クラブに言われ、そっと入れ替わってみた。
「さて、用は済んだのか?カーチの居場所を知りたいんだろ?」
「ああ、そうだな。ところでアンタは何で、カーチの居場所を知ってるんだ?」
「そりゃ後をつけたからさ」
「ストーカー?」
「はぁ?違う!話を聞いてないのかよ?マリーの依頼で、カーチの様子がおかしいからどこに行ってるのか、こっそり探ってくれって!」
「ああ、そういうアレな。マリーの知り合いだったか。まるで忍者みたいな格好してるから誰かと思ったよ」
「ふふん!そうか!忍者に見えるか?いや忍びの者にしか見えまい!俺は風魔小太郎。【森国】は隠れ里の頭領の元修行し、一応外で自由に活動できる程度には一人前の【隠密】だ!」
「なる程、忍者で忍びの者で【隠密】なんだな?有名な三羽烏だ。そう言えば邪神の化身討伐の時に見かけた気がする。まさかマリーとも知り合いだったとはな」
「おいおい、やめてくれ。我らは闇に生き闇に死ぬ者、宵闇の三羽烏!人知れずこの世の闇に潜む我らが、有名な訳!あるまい?」
「いや、有名だな。現状4人しかいないと言われる忍者プレイヤーを知らない奴の方が少ないだろ」
「おっと~?4人だと?俺達三羽烏ともう一人は誰だ?」
「なんか闘技場の忍者ヒーローだろ?」
「確かに!アイツも素晴らしい忍者スピリットを持ってるし、こと戦闘に関してのみならかなりのものさ。だが、本当の忍者名人と言うのを知らないらしい。まあ市井の者が忍者名人の正体なぞ知る由もないか……」
何かやたら目配せしてきて、聞いて欲しそうだが、それなら知ってる。
「隊長だろ?玄蕃とか言うらしいじゃないか。猿飛佐助から聞いたぞ?」
「お~~~い!佐助知ってるのかよ!じゃあ、どうせ俺の事も聞いたんだろうがよ!って言うか佐助と知り合いだったら、別に忍者なんか珍しくも何もないだろうが!」
「珍しい事は珍しいから安心しろ。それよりカーチのことなんだが?」
「くそ!弄ぶだけ弄んで、飽きたら話変えやがって!ついて来いよ!マリーの方にはもう一人が行ってるからさ!」
言うなり、店から飛び出してしまったので、鉄人は一旦店番に置いて出かける。
仮に自分が出掛けても今はクラブの当番時間だし大丈夫だろう。
忍者小太郎と一緒に【古都】の南門を抜け、ソリで移動することに……。
小太郎的には走った方が早く着くらしいが、自分が一緒なのでこのソリが一番だという。
だがこのソリ、凄い乗り慣れてる気がするんだよな~と思ったら、案の定古代の鉄屑に辿り着いた。
「カーチは確か戦えない筈なのに、何でこんな所に一人?」
「来れば分る。俺達も一度は様子を見たが、何か随分と必死だぞ?」
言われるがままに古代の鉄屑の通路の奥から、下の階に降り、更に鉄人を見つけた部屋に行くと、先にマリーが居てこっそり部屋の中を覗いていた。
「どんな様子だ?」
「あ!お疲れ様です。見ての通り、ずっと何かを探してますよ」
自分も覗いてみると、
「ココにもない……ココにもない……」
何かを呟きながら探し物をしているカーチが見える。
「確かに探し物みたいだが、何か無くした物でもあるのか?心当たりは?」
「それが全然なくて、でも珍しく集中してるって言うか、必死みたいだから」
「そうか、じゃあ多分予想出来るのは一つだろ?俺が聞いてみる」
それだけ言って、部屋の中に入っていく。
「え?クラーヴンさん!そんな不用意に!」
「おい!年頃の娘さんなんだから、言葉に気をつけろよ」
そんな声を背に聞きながら部屋に入り、探し物中のカーチに声を掛ける。
「よう、何やってんだ?」
「え?あっ!クラーヴン!こんな所で何やってるの?鉄人ちゃんの部品探し?」
「いや、まあ色々とな。それでカーチの方は?」
「私は、他にも鉄人ちゃん落ちてないかなって」
「やっぱりそういう事か。マリーとか他の人にはちゃんと伝えてきてるのか?」
「言ってないけど」
「何でまた、内緒で他の鉄人を探そうなんて思ったんだ?」
「私も鉄人ちゃん欲しかったから、そうすれば私も戦えると思って……」
「なる程な。確かにこのゲームの戦闘は難しいもんな」
言いながら、自分も始めたばかりに戦闘を放棄した事を思い出す。
自分の肉体を動かす感覚で戦うというのは、何気に難しい。
しかもこのゲーム変なところにこだわってると言うか、ただステータスを育てて当てれば、ダメージが入るというものでは全くない。
やたら面倒な仕様で、当て方斬り方刺し方、ちゃんと武器と己の肉体を使いこなせるようになるだけでも一苦労だ。
確かに子供じゃ尚難しいだろう。
幾ら若い方が順応性があると言っても、限度がある。そういう意味じゃ飽きずにこのゲームを続けてるだけで凄いか。
「私も皆みたいにモンスターと戦ったり、邪神の化身と戦ったりしたいもん」
「まあ、俺も戦えないのは同じだし、分らなくもないが……」
だが、一個だけ言っておかなきゃいけない事がある。




