21.兵器庫
「生物兵器とはまた物騒な話だな。確かに前に強襲艇の向う先は生命科学研究所だとは言っていたが、どんな敵なんだ?」
「残念ナガラ 現状 情報ガ 不足シテマス 更ナル 情報収集ガ 必要ト ナルデショウ」
「これは……随分と深いクエストに引っ掛かったかもね?クラーヴン」
「おいおい、俺はただの鍛冶屋だぞ?何でお前らみたいな戦闘職がやるようなロングクエストに巻き込まれにゃならん」
「逆だと思うの。これまで生産職はクエストと言えば受注するだけで、強制的に巻き込まれるようなものは無かったの。大型アップデートで今度は生産職が巻き込まれるの」
「あ~あ~クラーヴンやっちゃった~」
「あ~あ~ってな~。まあ拾ってきたのは俺だし仕方ねぇか。それで?新たな兵器情報と素材取得地が見つかったんだな。これからすぐ行けるものなのか?」
「兵器ニ ツイテハ 本北辺基地 ニ 保管サレテ イマス」
そう言うと、入ってきたのとは別の扉を開き、再び通路に出る。
「あの指揮所を中心に色んな部門の兵器開発地区に分かれていたのかな?」
「事故が起きても被害が最低限になる様にある程度、離れた造りになってるのか?じゃあ地下に造ってるのもそれか?」
「それは分らないの。だって地上にこんな機械文明の建物なんてないの」
「僕も聞いた事ないね。アップデートで現れたのなら秘匿して、情報独占しようとしてるのかな?それにしても誰もが隠すとは思えないし」
「ああ、でも俺も別に攻略とか見ないし、特に隠しもしなけりゃ公表もしてないからな」
「皆が皆クラーヴンみたいなNPCと間違われるようなプレイしてないの」
そんな話をしながらも視界に映る前からドローンを遠距離で撃ち抜くビエーラ。
連射が売りの筈のクロスボウで、一発の威力と射程を極限まで延ばして、単発式にしてしまった変わり者プレイヤーだが、いわゆるβプレイヤーと言われる一般公開以前からこのゲームをやりこんでる古参の一人の所為か、かなり強いというか、えげつない戦闘能力を持ってるらしい。
生産職の自分にはいまいちピンと来ないが、射程距離では全プレイヤー最長と言う噂は聞いている。
暗い通路にも関わらず、ちょっとした影の揺らぎも見落とさず、ただの一発でドローンを仕留める辺りは、やっぱりおかしいのだろう。
順調に熟練度を溜める鉄人が、
「格闘プログラム ヲ 取得 近接武器ノ 使用性能上昇」
とか言い出した。
「クラーヴン!近接武器だって~!何がいいかな?ビームソード?」
「ビームはまだ作れないから、もっと普通の武器だろうな。関節の造り的にシンプルに振り回すだけになるだろうし、引いて斬る押して斬るみたいな刃物はまず無理だろ?やっぱり遠心力でぶん回す棍棒とかか?」
「え~ロボっぽくな~い」
「もう少し複雑な関節とか作れる様になれば、話は変わるんだろうが、当分はさっきから出てくるドローンみたいなシンプルな武器しか積めないぞ」
そんな事を話している内に兵器があると言う区画へ辿り着く。
何しろ戦闘はビエーラ、カヴァリー、鉄人がやっているので、自分とカーチは喋っているだけだ。
偶に鉄人のダメージが溜まって来たら〔IRM〕を使用してやるくらいだが、これだって大した手間じゃない。
茶筒の様な金属筒を捻って開ければ、フワッと垂れてくる液体とも気体とも言えない光る何かが、鉄人に吸い込まれて、一瞬ボディが光るそれだけ。
筒は空になると勝手に消滅してしまうので、完全にただの使い切り。
出番は連れてこられた区画の兵器について調べる方だ。
いくつか部屋が隣接しているが、どれも扉が大きいという事は、大型兵器が積まれているのか、もしくは大量の兵器を一気にフォークリフトのような物で運んだのか?
鉄人が扉横のコンソールを操作し、ヒトが通る扉よりゆっくりと時間をかけて開く。
やたらとデカイ箱が合ったので、開いてみると中は空。次から次へと開いても全部空だ。
「朽ちて消えちまったかな」
「そうですね。正直消滅判定基準は曖昧ですが、今の僕達が使っていい兵器じゃないということかもしれません」
「まあ、この箱のでかさから言って、それこそ強襲艇に積載するミサイルみたいなもんだろうし、手には負えんか」
「え~新しい武器ないの?」
「いや、デカイやつだったから、もう少し小さな鉄人でも装備できるようなもの探そうぜ」
そう言って、隣の倉庫に移動すると今度はドローンの製造所か保管所。
ここに来て見かけた飛行型ドローンとタイヤのついた地上型ドローンがズラッと並んでいる。
物は試しにと引っ張り出すと、持って帰れるようだ。
現状エネルギー源に関しては不明なので、自分用のドローンとして使うのは難しいそうだが、鉄人のボディに使える部品はいっぱい詰まってそうだし、悪くはない。
ドロップで拾った部品より質が悪そうなのは、あまりに動かしてなくて磨耗してるよ?とでも言いたいのだろうか?
まあ組み立て用のモデルだと思えば、使える。
次の部屋には今の鉄人とそっくりなデコイボディを初めとした幾つかのロボ様ボディが並んでいる。




