19.小部屋調査
ドックと比べれば狭くは感じるが、十分工場と言っていいサイズの機械部屋。
朽ちたロボットアームが垂れ下がるそこは多分部品製造所だったのではないかと、連想させる。
警戒しながら狭い通路を抜けるが、現状は異常なし。
この部屋にはドローンは出ないのかな?と思いつつ、色々と物色していると、何気にチラホラ良さ気な部品が手に入る。
やはりここは基地とは言う名の、素材回収用のダンジョン扱いなのかもしれない。
魔物代わりのドローンが出てきて、小部屋を漁れば部品が手に入る。
ドローンを倒して手に入れたものより、重量が増す代わりに強度の高い素材が多いと言う事は、いずれもっと大型のロボを作れるか、何なら機械船でも作れるのか?
何しろ、鉄人は強襲艇で生命科学研究所とやらを攻撃する途中だったらしいし、その強襲艇はこの基地で造られたか、メンテナンスをされていたのだろうから、同じ物と言えないまでも、これまで以上の性能の船を造れる可能性はある。
ちなみに本ゲームは、現状誰もが想像するファンタジーゲームなので、船は基本帆船を使用している。
いきなりあらゆる過程をすっ飛ばして、機械船と言うのはロマン溢れるが……。行く行くやってみたさはあるな。
まあ現状は突貫で作った子供サイズのロボが限度なので、あまり期待し過ぎない程度に、心の片隅に止めておこう。
「この部屋はどうやらクラーヴンの趣味用みたいなの。また今度じっくり探索するの」
「おお、悪いな。つい集中しちまった。次から次へと部品が手に入るもんで、鉄人をどう改造してやろうかってさ」
「別に構わないの。私達はクラーヴンのクエストを手伝いに来たの。あと旦那様が何かこういうの好きみたいなの」
言われてみると、カヴァリーがあちらこちら漁っているのが見える。
スキル上取得できるものには限りがあると思うのだが、手に入れた物を確認しては興味深そうにしている所から、多分カヴァリーも男だけあって、少年の心を解するのだろう。
こういうごちゃごちゃとした機械部品は何しろ少年の心をくすぐらずにいられない。
混乱するほどの色んな部品を組み合わせて、どんな動作をするか考えるだけでワクワクする。それが少年と言うものだろう。
「クラーヴン!見てくれ!このネジ機構!上手く使えば水筒を作れるんじゃないかな?クラーヴンの超技術でぴったりはまるキャップ付きのやつじゃなくて、捻るだけの誰もが使える水筒を大量生産できる!」
「まあそうかもしれないが、俺達は普段デカイ甕みたいなのに大量に水入れてアイテムバッグにしまってるのに、今更水筒なんて……」
「クラーヴン!それは違う!まずNPCはアイテムバッグを持ってない!そして僕達【兵士】職はあちこち行軍しなきゃならないんだ。気楽に蓋を開け閉めできる水筒がどれだけありがたいか!何よりネジ式の水筒を腰に提げて行軍したい!」
「わ、分ったよ多分今のスキル熟練度ならねじ切り位は出来るから、今度作ってやるよ」
どうやらカヴァリーは機械の事じゃなくて、本職の【騎兵】で使える技術が無いか探していたようだ。
確かに術とかいう要素を除けば、原始的なものが多いし、便利な物が増えればそれはそれで皆助かるだろう。
そんな事を考えていると、
「ねぇクラーヴン。そろそろ時間なんだけど」
カーチが服の裾を引いてきた。
左手の甲を見て、現実の時間を確認すると確かに子供には十分遅い時間だ。
「分った。鉄人!引き上げよう!カーチが寝る時間だ」
「ソレナラ 休憩可能 ナ 部屋ガ アリマス」
それだけ言うと、ドックに戻っていき、さっきビエーラとカヴァリーが見つけた部屋の一つを開ける。
そこには、ちょっとした簡易ベッドと調理場が設置されていて、仮眠室の様相だ。
それならばと、大急ぎでアイテムバッグから食材を取り出して<調理>を始める。
このパーティでは、自分とカヴァリーが料理の心得があるので、食材を切ったりは任せて、自分は火を扱う方を担当する事にした。
外ほど寒くないし、あまりスープや鍋ばかりじゃ飽きるだろうと、今回は焼き物にしようと思う。
和風食材や調味料は【森国】から輸入できるし、肉類は大河を挟んで向こう側の【馬国】から輸入できる。
というか、そういう食材ばっかり運ぶ奴がいた所為で、いつの間にか輸入ルートが出来てしまった。
つまり何を作りたいかと言うと、豚の生姜焼きだ。
幸い米もあるし、米・味噌汁・豚の生姜焼きの最強三点セット定食で夕飯にしようと思う。
別にゲームの中で幾ら食べた所で太らないし、現実に戻れば結局腹も空く。
人生で食べれる食事の回数が増えるとしたら、それは得な事か損な事か。
それは、上手い物を食べれさえすれば得な事だろう。
腕によりをかけて作った生姜焼きは、口に合ったようで、皆残さず食べてログアウト。
ちなみにプレイヤーにとってはログアウトだが、ゲーム内のNPCからすると自分達は眠りについている事になる。




