184.死の丘
鉄人の先導で、部屋の奥の壁から上に繋がるリフトを発見した。
そう大きくない物だが、鉄人が少し弄ればエネルギーが供給されて無事動き、重低音を鳴り響かせながら、上へと向かって行く。
「な、なぁもうすぐ天井だがいつ止まるんだ?」
急にライダーマスクが慌て始めたが、確かに勢いが変わらず、このままだと激突する!
思わずその場に全員しゃがみこむと同時に、頭上から光が降り注ぎ、気がつくと目を開けるのがやっとの明るい太陽の下に出ていた。
「リフトが近づけば自然と開閉装置が作動します。ここから航空機を利用して脱出した模様です」
うん、全部終わってから解説されても困る。
とりあえずリフトから降りて周囲を見回すとそこは少し小高い丘の上だった。
南は遥か彼方まで続くグレーの荒野、東は比較的なだらかな高原地帯、西には山と言うか山脈が見える。
アレが大霊峰かな?と何となくその向こうの根の国や天上の国に思いを馳せていると、馬に乗った見知らぬ人物が一人こちらに駆けて来た。
「おい!お主らそこで何しているか!」
「え?あ、いや……」
呆気にとられていると、皆がこちらを見てくる。コレは完全に代表を押し付ける気だなと思ったが、まあ仕方ない。
目の前に迫ってきたのが老齢の男性で、いかにも旅の途中立ち寄った【馬国】のゲル集落に住むヒトのいでたちだったので、まず【馬国】のNPCに違いないと話を進める。
「地下を探索していたら、ここに出てしまったんですけど、ココはどこですか?」
「ここは死の丘と呼ばれておる。どんな生き物でも一晩寝れば死んでしまうのだ。遠い昔口減らしが必要だった頃は安らぎの丘とも呼ばれていたらしいが、今は誰も近づかん。お主らも早々に離れよ」
「それって、アレだよな?生物兵器の影響……」
「余計な事は言わないの。とりあえず帰り道を教えてもらうの」
「実は俺達は黒い蜘蛛のヒトに道案内を頼んだんだが、見当違いの場所に出てきてしまって、困ってるんだ。何か言い方法はないか?」
「黒い蜘蛛?おお!偉大なる高原の族長の元に現れたという黒蜘蛛の勇士か!良かろう連絡を取ってやるから、それまで我等の集落に泊まるが良い」
「なんか【馬国】のヒトって芝居がかってるよな」
「【教国】はキラキラ王子様か紳士ばっかりだし、【海国】は荒くれ者ばっかりなの」
「確かに!【帝国】のヒトは皆ムッツリしてるよね!」
「そ、そうか?あんまり意識した事なかったが?」
「つまり慣れていない雰囲気のヒトに会うと違和感を感じるだけで、国ごとにそれぞれ民族性があるんでしょう」
【帝国】はそんなにムッツリしてるか?と師匠やクラブ、クラームの顔を思い出すが、皆いつもわいわいやってて、それこそ自分よりは表情豊かな気もするが?
そんな事を思っている内に、小さな集落に辿り着き、ゲルを丸ごと一個貸してもらえる事になった。
これでいつでもログアウトできるのだが、気になる事が一個ある。
「大昔の話は関係者全員で集まってやった方がいいとは思うんだが、さっき一個どうしても聞きたかった事があるんだ」
「何でしょうか?何なりとご質問ください」
「さっき鉄人ちゃんは航空機って言ったの。もしかして地底には空を飛ぶ技術があったの?」
「あ!コウクウキって飛行機か!生物兵器から逃げる為に飛行機作ったんだね!」
「見ての通り、私は重精を利用し、空中に浮く事が可能です。この装置を大規模化し、更に風精による推進装置で飛んだと思われます」
「……飛行機じゃなくて飛行船だったのか……地下の文明の進み具合から、ジェット戦闘機とか、そうでなくともレシプロ機位あるのかと思ったぜ」
「どういった物か予想の範疇を出ませんが、地下で生活していた為、空中を飛ぶ技術は重要視されていなかったのではないでしょうか?」
「確かにそうかもしれませんね。進んだ科学技術に見えても、根底には精霊の力の利用があるみたいですし、いきなりジェット戦闘機は考えにくいかもしれないですね」
「いや、飛行船だって十分だろ!確かに浮遊ドローンは現物があるし、もう少し真面目に考えて開発してもいいかも知れん!」
「クラーヴン!先にキジンちゃんだよ!ブラックフェニックスにはお世話になりっ放しなんだから!」
「分かってる。まずはカーチの新たな機械人形とキジンの修理だな。そして今迄世話になってきたブラックフェニックスに、一応ガイヤもか?」
「もし人手が必要なら、隊長にも声をかけておきますか?嫌とは言わないでしょう」
「そうだな~でも忙しいだろうからな。何であんなにゲームでアクセク働いてるか知らんが、金が欲しいって訳でもなさそうだし……金といえば阿空はどうしたんだ?最近会ってないな」
「守護者阿空様は『これ以上ここにいると金ばっかり貯まって心に贅肉がつく。そろそろお暇するって、伝えておいてくれ』との事です」
「なる程な。それでなんで今迄言わなかった?」
「『別れを言ってから顔を合わせたんじゃ気まずいから、何日か置いてから伝えてくれ』との事でした」
全くどいつもこいつも、NPCだろうがプレイヤーだろうが、自由な連中ばかりだ。




