162.ペンギンの集落と凍らない海
それから数日かけてペンギン達との共同生活にもすっかり慣れた。
大体どこかしらの氷の裂け目から海に出て魚を採り、それを食べて移動するシンプルな暮らしだったが、自分達が魚を焼いて食べると、大量に魚を持ってくる様になってしまったのはちょっと困った。
ブラックフェニックスは料理が苦手なようで、ペンギンの「魚焼いて~」コールからは逃げられたらしく、羨ましい限りだ。
そして移動していく内に、ペンギン達が言うように泳いだ方が早いゾーンも存在したのだが、遠回りすれば歩ける場所あれば、ボートで抜けてしまった方が早い場所も存在し、その辺の判断は隊長に委ねた。
ちなみにボートってのは試作動力船の事だったので、鉄人を接続して動かしたのだが、やはり好奇心おおせいなペンギン達に乗り込まれ危うく沈みかけたのは、まぁちょっとヒヤッとした。
そんな事より何より広い範囲で海が見える場所での大きな発見は、この凍った地帯はどうやら海岸らしいという事。
南側の自分達が抜けてきた絶望の壁の下まで海が続いてる場所もあれば、陸地になっている場所もある。氷がかけて断崖になっている場所からその様子が見て取れた。
一部だけを見て全体をイメージしようとしてるので、ざっくりとした言い方になってしまうが、リアス式海岸のような複雑な地形の上を氷が覆って、なだらかな氷原に見えているといった感じか?
ちなみに一番南側はやはり誰かが手を加えて作ったとしか思えない一面のツルツルした氷となっており、根の国に入りこむには少々難儀しそうだ。
何のかんのと思ってた以上のスピードで移動し、気がついた時には最西端に辿り着き、遠くに断崖こそ見えるが、確かにかなりの範囲で凍っていない海が続いてる。
そして、まるで集落のように、家と呼ぶには粗末ながら氷を削って作られた風除けが幾つもあり、そこでまだ全身グレーの小さなフワフワとしか言いようのない子ペンギン達が育てられていた。
何が困るって、子ペンギンは大人ペンギンより好奇心がおおせいで、ひたすら群がってくると言う事か。
そんな子ペンギンに群がられ、全身グレーのフワフワになった隊長が氷の岸辺で断崖の方を眺めながら何やら思案気にしている。
「何かあったのか?」
「いや、あったと言うか、何でここだけこんなに凍ってないんだろうってさ……」
「さあな?それで?【帝国】に行くならこの海を渡って西に抜けるしかないんだろうが、試作動力船で水上のたびでも続けるか?」
「それも有りかな。何しろアレならそれなりのスピード出るし、途中休憩できる場所さえ見つけられれば、まだ旅は続けられる」
「ねぇ、変なの見に行く?」
自分と隊長が話してる所に、いつものペンギンがやって来た。未だ見分けはつかないが、何となく喋りかけられれば、いつものペンギンだと認識できる程度には仲良くなった。
「その変なのってどこにあるんだ?」
聞いてみるとヒレで海の中を指すので、自分は完全にお断り。
隊長はおもむろに防寒服を脱ぎ出し、いつの間にやらグレーのフワフワ達も離れて見守っている。
「んじゃ、ちょっと行ってくる」
それだけ告げて海の飛び込むと、あっという間に潜水し、どこまで行ったのやら……。
まぁ、歩いても走っても登っても泳いでもこと移動に関しちゃ目下右に出るプレイヤーがいないと噂される隊長だし、周辺探索は任せておこう。
自分は戦闘職達のバックアップだ。
つまり、温かい飯でも作って待ってるのがいいだろう。
火を使うので子ペンギンたちには離れてもらって、火を焚き始めると、大人ペンギン達が大量に魚を持ってき始めるので、それは忍たちに任せた。
ブラックフェニックスと阿空は魔物が出るという場所まで足を伸ばして、どこかに行ってしまったし、鉄人は子ペンギン達と飽きる事無く喋っている。
さて、遊び疲れた連中に食べさせる飯は何がいいか……偶には鍋にでもするか!
思いついたら食べたくなる。それが鍋って物だろう。
ポッター謹製の大きい土鍋にまずざく切り白菜、適当に火の通りやすい薄さにカットした人参、椎茸も欲しい所、ペンギン達がくれる小さめで丸焼きくらいしか食べる方法が無かった魚をつみれにしていく。
乾燥させた昆布で出汁をとり、それだけじゃ薄味なので自分で作り置いてる和風出汁も混ぜる。
あとは材料をつっ込んで、そこから出る旨味で何とかなるだろう。ならなかったら醤油でも何でもつけて食べればいい。
隊長に言えばポン酢くらいは出てくるかもしれないしな!樽で……。
本当に食道楽の割りに作るものは庶民的、にもかかわらず材料関連は業者かって単位で持ち歩いてるんだから謎な男だ。
自分が作った飯の匂いに釣られてか、ペンギン達とそれに混ざって忍に、どこかに出かけてた阿空やブラックフェニックスが集まってきた。
「隊長が海の中の探索を終えたら飯にするからちょっと待ってろ。何ならペンギンたちも食べるだろうから、そっちの食事の準備を手伝えよ」
そういうと、たちまち辺りが騒がしくなり、これで酒出したら宴会にでもなるのかと、追加メニューに考えをめぐらせる。




