161.ペンギンの生活
ペンギン達とどうにかコミュニケーションをはかるべく、色々と手持ちの材料で作れるものを見繕い、ふるまっていると、突然先程案内された氷の割れ目から、明らかにペンギンより大きなサイズの何かが水を割って地上に這い出してきた。
「あ~確かに水の中の方が温かいわ~って言うか、火でも焚かないとダメだなこりゃ。あ~寒い寒い……」
言いながら、鞄から携帯炉を取り出して暖を取り始めるのは、隊長だった。
「何やってんだ?」
「あっ!クラーヴンいたんだ?いやさ魚を採るのに誘われたからちょっと興味本位で行ってみたけど、流石ペンギンだね。早いの何の」
流石隊長だよ。このクソ寒い中興味本位で泳ごうって、どう考えてもその思考には辿り着かないだろ!
「まぁ、とりあえずこれでも食えよ」
水から出て凍えている隊長に温かいスープを差し出すと、物凄く熱い物でも出されたかのようにそっと啜り始めた。
「ふぃぃぃ、人心地ついた~。でもまだ寒いし、耐性でも上げて耐えるしかないかな……<青蓮地獄>」
白いオーラを発すると本当に寒くなくなったのか、平然とそこらのペンギンと戯れ始める隊長。
一体どこからつっ込めばいいのか、耐性が万能すぎる事からか、いつの間にそんなにペンギンと仲良くなったのかって言う所からか。
「それで本当に寒くないのか?」
「うん、肌寒いくらいかな?氷精耐性の適応範疇が広すぎて本当に助かる」
「適応範囲が広いって事は逆に効果自体は低くなる筈なんだけどな?どれだけ盛ってるんだか」
「え?まずアクセサリーでしょ?白蛇の印、いざとなればこの服もそうだし、今使ってる<青蓮地獄>もだね。<気脈術>でも一定時間自分自身の耐性をあげられるわ。んで、<青蓮地獄>と白蛇の印は他の氷精効果を高める効果もあるね。だからまぁ、ボチボチじゃない?」
「ぼちぼちってな……まぁいい。それで?いつの間にかペンギンと仲良くなってたみたいだが、何か情報は見つかったのか?」
「いや、全然見つからないね。そこは昨日の今日だし、仲良くなるのはまだ早いって事なんじゃない?」
それはそうなんだが、北周りで【帝国】に戻るって言う目標がありながら、それが中々進まなければ、多少なり焦ったりとか、そういうのは無いのだろうか?
「ねぇねぇ、君達は何しに来たの?魚食べに来た?」
唐突なペンギンからの質問だが、どうする気だ?
「西に行く方法を探してるんだけど、西の果てって何があるのかな?」
「西?」
「向こうの方だけど」
「あ~海がある。あと変なのとか」
「変なのってどんなの?」
「ん~分かんないけど、西?に行ったら皆でそこで遊ぶね。魚が移動したら一緒に行く?」
「出来ればそうしたいけど、魚が移動するのっていつになる?」
「ん~少しづつ西に移動するから、皆で西に行くと思う。西に着いたらまたこっちに戻ってくる」
うん、確か魚と一緒に移動してると言う話だし、季節や時期によって魚が採れる場所が違うのだろう。そしてその採れる場所を経験か何かで知っているという事だ。多分。
隊長と目を合わせ、それだけで何となく分かる。多分ペンギンと一緒に移動する気なのだろうが、全く気の長い事だ。
そもそもここは東の果ての筈、そこから真反対に戻るまでペンギンの足にあわせたら一体どれだけかかるのか、そうなるとさっさと行ってしまった方がいい気もするが、いかがな物か。
こちらの意図を読んだのか、更に隊長がペンギンに質問を重ねる。
「その移動ってさ。一日にどれ位するの?」
「え?え~っと~ここからは歩いて結構かかるけど、そのあとは滑って圧倒言う間に海だね~。その海を泳いで次の歩く場所があって~それから~……」
「途中、泳いで西に進むの?」
「そうだよ?凍ってる事もあるけど、そういう時は歩いて行くね」
「凍ってる事もあるって、そういう時はご飯どうするの?」
「大体割れ目か裂け目があるから、そこで泳いで採るけど?凍らないのは西の所だけ、小さい内は西に住んでる」
ん~どうやら西の凍らない海ってのがこのペンギンの繁殖場所って事なのか?一応ヒト範疇なのに繁殖って言葉を使っていいのか分らないが、どうにも喋るペンギンとしか言いようのない風体だしな。
「寒いのに、凍らない海か……。泳げなくてもそこまで行けるものかな?」
「ん~泳がないなら~どうやって海渡るの?」
「一応ボートがあるから、それで渡る方法もなくはないね」
「いや、ボートがあるって、お前一体どんな鞄使ってんだ?」
思わず、ペンギンとの会話に割って入ってつっ込んでしまった。確かにアイテムバッグには装備から道具からそれなりの大きさのサイズまで入るのだが、ボートって、入るのか?
「ああ、自分はイベント報酬とか諸々鞄に使ってるから、色々付属機能やらサイズやら他人とは違うかもしれない」
あっさりとした回答だが、確かにアイテムバッグってのは便利だし、イベント報酬のような特別な物をそこにつっ込むのは悪い考えではない。
しかしそれにしたって、ボートって、乗り物だろ?その内、馬車でも鞄に詰め込み始めるんじゃないだろうな?
「ボートって何?」
「海に着いたら見せるよ」
うん、やはり当分はペンギンと移動生活を楽しむしかないようだ。




