159.ペンギン滑り台
戦闘が終わると勝手にヨチヨチとどこかに歩き始めるペンギンをボンヤリ見送っていると、クルッと振り返ったペンギンが手招きしている。
とりあえずどうするか隊長の顔をみやると、軽く頷くので、そのままペンギンの後を追うことになった。
正直、もどかしいほど足が遅いが、見渡す限りの大氷原を眺めながら雄大な自然の一部になったつもりで、歩いていると、不思議と気分爽快だ。
ゆっくり超極寒の冷気を吸い込み、代わり映えのしない白い世界に思いを馳せていると、急にペンギンが止まった。
どうやら、ずっと平地を歩いているつもりだったが、緩い勾配がついていて、坂を上っていたらしい。
下方にも見渡す限りの氷原が続き、照り返される陽の光のコントラストが幻想的な彩を作り出し、ゲームの中の世界だと分かっていながらも、なんて非現実的な光景だろうと、感嘆してしまう。
「いくよ?」
急にペンギンが一言発したと思ったら、腹ばいになって坂を滑り降りていった。
「……置いていかれた?」
「な、何かソリになるもの!」
急いで全員アイテムバッグの中を漁り出し、氷の上を滑れそうな物を探す。
「あ、あった……」
何も考えずとりあえず鞄を漁っていて出てきたのは、昔の鉄人の足の部品だった。
スキー板状になっており、それを何かに固定できればソリのように滑る事も出来るだろう。
「いやいやいや!そんな物組み立ててる暇ないよ!誰か段ボール箱かなんか!」
つっ込みながらも慌ててる隊長に段ボール箱なんかある訳ないだろとつっこみ返したい。
「もう、ここは一か八か、体で滑ろう!」
「だな!俺から行くぜ!」
「あっ!おい!」
あっという間に風魔小太郎が氷の坂道に身を預けるように飛び込むと、冗談のように滑っていく。
「うわ……マジかよ……」
隊長の呟きが聞こえたが、こうなっては仕方ないと、忍達が滑り降り、ブラックフェニックスも続き、阿空は尻で滑っていった。
自分はどうしようかと思ったら、鉄人に抱き上げられ、そのまま滑り降りる事に……。
「いやちょっと待て!鉄人!抱き上げられたままは怖いぞ!」
「問題 アリマセン 滑走ハ プログラム ニ アリマス」
「そういうことじゃな~い!」
上から見たときは精々が10度程度の傾斜に見えていたのが、今は60度を滑っているようなそんな感覚だ。
滑るを超えて落ちる。お腹がヒュッとなって寒くないのに体の内側から冷えてきた気がする。
シャーーーーー!
っと甲高い滑走音と共に、滑り降り、時折氷壁を登って、一瞬空中に投げ出されたかと思うと、一回転して、また滑走を続ける。
一体何がどうなっているのか、ただ鉄人に持ち上げられている自分には状況が全くつかめない。
気がついた時には、氷原に投げ出され、何もしてないのに荒い息をついて、赤く染まった空を見上げてた。
「夜になる前に皆の所行こう?」
マイペースにペンギンがのたまうが、今は何にも頭に入ってこない。
自分と違って他の連中は、割りとケロッとしているのが、気に入らないが、今は何を言う気力もない。
「隊長来ないな?」
「滑る道間違えたか?」
「いや、一本道だったろ?分岐とかあったか?」
「無かったと思ったけどな?もしかして壁を乗り越えすぎて、どっかに投げ出された?」
「玄蕃のやつ実は絶叫系苦手だったりしてな」
確かに周りを見回しても、隊長だけいない。
一応一行の代表は隊長だし、どうした物か?
徐々に沈み行く夕日に、隊長を置いて先に行くか相談が始まった頃、やっと現れた。
「ごめん遅れた!」
言いながら現れた隊長は、自分達が滑ってたほうとは全然別方向から来た様に見えたが、一体どこからどうやってここまで来たんだ?
「じゃあ、皆の所行こうね」
言いながら、ヨチヨチ歩き出すペンギンに付いていくと、程なくしてそこら中にペンギンが集まって溜まっている場所に出た。
「ん~なんだ?喋るって事はヒトでいいんだよな?家とかなんかは無いのか?」
「家とかなんか?って何?」
「いや住む所さ。こう寒いといつまでも屋外にいるってのもしんどいだろ?」
「???僕達は魚採って暮らしてるから、魚と一緒に移動するし、住んでるのはこの辺一帯だね」
「えっと……えー……?」
「はいはい、そう変な顔しない!なんなら【森国】の島にアザラシが住んでるけど、やっぱり服も着ずにのんびり日向ぼっこしながら暮らしてるし、そういう種族もいるんだから、気にしない!寧ろ仲良くなってこの何もない地域の情報を集めよう」
自分達の疑問を隊長が引き取ったので、一旦思考の堂々巡りはやめて、まずは現状を受け入れる。
とりあえず暗くなったし、寝る所を作ってもらってる間に、食事でも作るとしよう。
ちなみにペンギンにも自分達が食べれる物を与えてしまってもいいのだろうか?
やっぱり、生魚しか食べないのかな?




