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152.不気味な星

 鉄人の攻撃の余韻が薄らぎ、徐々にはっきりとしてくる部屋中央の魔物の姿は、一言で言うなら大きな星。


 このゲームの魔物は大抵何がしかの動物を巨大化させたり、部分的にデフォルメしているものが多いのだが、この星はただ異様としか表現しようがない。


 円の中に生き物特有のブヨブヨとした質感で五芒星が描かれ、その星の尖った部分から伸びる様に触手のようなものがはえている。


 さて、戦闘となると全く門外漢の自分としてはどうしたものかと、周囲を見回すと、大部屋のあちらこちらに分散していた連中が一斉に中央に集まっていく。


 自分の近くにいた服部半蔵と猿飛佐助も既に戦闘態勢で待機していた。


 さて、今回のこの探索チームのリーダーと言えば、隊長だろう。どんな指揮をするのか見物するつもりでいたのだが、一向に声がかからない。


 少し遠巻きに気持ちの悪い星魔物を囲んだまま、何故かジェスチャーでやり取りしているが、全くこっちには伝わらない。


 「探索中ニ 受ケタ 攻撃デ 声ガ デナイヨウデス」


 「そうなのか?俺達がうろうろしてる間にも戦ってたのか……」


 「イイエ 所々ニ 設置サレテイタ罠ニ 触レタ為デス」


 「……もしかしてあの一枚鏡みたいな吸い込まれるアレか?」


 「吸イ込マレテ ハ イマセン 水ノ ヴェール ニ 覆ワレテ 姿ヲ認識デキナクナリマシタ マタ 魔物ノ任意デ 姿ヲ 別ノ場所ニ イルヨウニ 偽装シテイタ ト オモワレマス」


 「じゃぁ猿飛佐助が触ったあの氷壁は何だったんだ?」


 「本物ノ氷壁ト 差シ替エタ 模様」


 まだまだ魔物の能力は気になるものの、今は戦闘だ。


 しかし、何故かまだまごまごしているのは一体なんでだ?


 「術ノ 使用ヲ 妨害サレタ ヨウデス」


 「何で分かるんだ?」


 「隊長総司令 ノ 口 ヲ ヨミマシタ」


 どうやらこのロボ、読唇術まで使えるらしい。一体全体どこまで高性能なんだ……。


 「まぁ、今の話を聞く限り、俺達がやるっきゃなってことだな!口寄せ猿猴!」

 

 猿飛佐助が何やら忍者みたいなことを言い出したと思ったら、さっきまで完全にペットにしか見えなかった猿が、変身を始めた。


 元々黒かった毛は赤っぽく変色し、体の内側から見る見る筋肉が盛り上がっていくのが分かる。


 顔つきもかなり凶暴なそれとなり、味方ならとても頼もしい姿へと変貌した。


 「中距離援護は俺がやるから、遠距離から佐助と一緒に鉄人も頼むぞ」


 そう言うと、さっと射線を開けて、斜めからボスを狙いに間合いに走っていく服部半蔵。


 「じゃあ鉄人、くれぐれも味方に気をつけて、援護射撃頼む」


 「イエス サー」


 右腕の小型ガトリングを魔物に向け、射撃を開始する。


 やや上方に向って撃つのだなと思ったが、どうやら魔物は相当に大きいらしくあっさり命中した。


 広い部屋だとは思ったが、どうやらこのボス、サイズを見る限りユニオンかレギオン相当ではないかと思われる。


 すると唐突に床から何枚もの氷壁がはえて来るが、探索中に見たような鏡にはなっていない。


 その壁に鉄人の攻撃が当り弾かれるも、連射で数発当てれば割れて砕け散る。


 そこら中から氷壁が生え射線を塞ぐが、そこに猿が大きく飛び上がり、右手でおもいきりぶん殴った……。


 しかし、壁はビクともせず、寧ろ反射ダメージを貰ったかのように右手を押さえてその場にしゃがみこむ猿。


 「術デ デキタ 壁ト ミラレマス 術デ 攻撃シテクダサイ」


 確かにこのゲームは術は術で相殺が基本だ。


 しかし、猿はその場を動かない。


 「おい、落ち込むなって。お前の防御力も豊富な生命力も攻撃力もスピードも体力もいつも助かってるからさ!術が使えないのは仕方ない!本体を殴れるターンまでもうちょっと待とう!な!」


 どうやらこの猿は物理前衛らしい。代わりと言っては何だが飼い主である猿飛佐助は忍者らしく、手裏剣を投げつけているが、何をどうやっているのか器用に氷壁の隙間を縫って、本体にダメージを入れている。


 更に走って氷壁の隙間を抜けるのが服部半蔵だ。


 いつの間にか間合いを詰めて鎖鎌の分銅で不気味な星に攻撃開始していた。


 鉄人もガトリングだけでは限界を感じたのか、雷撃砲を使って一発で不気味な星への射線を確保し、弾雨を浴びせ始めた。


 これで、幾らかでもダメージが蓄積されて、メインの近接職達も開放されれば、戦えるんじゃないか?


 敵のサイズに対してこちらのメンバーが少ない気もしたが、多分この魔物は弱いのだろう。


 だからこそ、探索で分断し弱らせてから、捕食しようしたんじゃないか?


 見た目の割りに頭の回るいやらしい魔物だ。


 気がつくと、術が使えない筈の連中まで、戦闘に参加していた。


 確かにエフェクトは出てないし、術は使ってないんだろうが、いつの間にか不気味な星からはえた触手を斬り付けまくっている。


 なんと言うか、本当に近接戦闘職のこういう所が分からない。


 何しろデバフを掛けられて、声もでなけりゃ術も使えない不利状況で、一先ず物理なら通るからとばかりに巨大生物に殴りかかるって言う神経がおかしい。


 しかも何故か楽しいそう。不利を嘆くどころか、寧ろいつもよりテンション高く見えるの、本当にヤバイやつらなんだろうな。

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