15.発進したのは割れる池
辿り着いた場所は、何にもない森の中。
「なぁ、こんな所に何かあるのか?」
あまりにも何も無さ過ぎて、思わず周辺に詳しいビエーラに意見を求める。
「あるわけないの。ただの森なの」
とまあ、冷たく切り捨てられてしまうのは、分っていたがそれでも、誰かに意見を求めずにはいられない。
「ココデ 間違イ アリマセン」
鉄人の言う事は当てにならん。何しろ記憶が大昔のままなのだから、とっくに朽ち果てて跡形もなくなってる可能性だってなくはない。
フィィィィィィンッ!
と、背中についたファンを起動して周囲をうろつく鉄人、静かな森には大きすぎるファンの音が聞こえていれば、いきなり迷子になる事はないだろう。
「カヴァリーも心当たりはないか?」
「無いですね。そもそもこの森って中途半端なんですよ。街道沿いから近いのに、入り込むのはちょっと面倒くさい。それでいて黒の森のような魔物が強いゾーンでもない」
ごもっともだ。
折角まだ見ぬ大昔の遺跡に期待膨らませ、面倒がらずについて来てくれた夫妻には、何かお礼をしないとな。何がいいかな?
「ねぇ!みんな~~~」
そんな事を考えていると、いつの間にか鉄人についていったカーチの声が聞こえた。
まさか魔物でも出たのかと思い、大急ぎで一緒に来てくれたメンバーと顔を見合わせ、声のする方に向う。
そこにあったのは、何の変哲もない池。
池のほとりで鉄人が佇み、カーチが手を振っている。
「一体、何があったんだ?」
「何かこの池が入り口なんだって!」
「……そうなのか?じゃあどうやって中に入るんだ?もしかして中まで水浸しかもしれないだろ?」
「イイエ 外部水資源 取得ノ為 ノ パイプ ガ 一部 破損シテイル 模様」
「じゃあ、問題はどうやって中に入るかなの。まさかこの中に泳げる人がいるの?」
お互い目を見合わせるが、心当たりが全くない者ばかり。
何しろ、ここは一年中雪降る北辺の【帝国】なのだ。わざわざ<水泳>を取得して寒中水泳ならぬ、命に関わる極寒水泳をしようなんて変わり者、一人しか知らない。
それはもう、天下一変人を決める機会があれば、絶対俺が一票入れる変わり者が一人だけ。
「現在地 ガ 強襲艇 発進 ポイント デ 間違イ アリマセン」
「だからここがあの古代の鉄屑の基地だって言うんだろ?でも入り方が無いだろって話をしてるんだよ」
「? ? ?」
「何が通じてないんだ?」
「鉄人ちゃん!中に入る方法を教えて!」
「コチラ デス」
そのまま、真っ直ぐ池上を滑るように移動していくが、確かに鉄人は重精の力で浮いているし、おかしくはないんだが、思い切りが良すぎるだろ!
勝手に一瞬ドキッとしたが、カーチと鉄人は当たり前の事のように受け入れている。
そのまま池中央に行くと、てっきり雪に埋もれた木が一本生えているのかと思ったが、鉄人がパイルバンカーで突くと、衝撃で雪が落ちた。
そこに生えているのは、明らかに朽ちた金属の塊、何の装置かまでは判然としないが、何をどうしたものか、一部を剥離し、例の充填及び情報交換用のプラグを挿し込み何やら操作する。
すると、池がモーセの伝説よろしく真っ二つに割れて、その割れ目が広がった。
当然割れ目の中に水が入っていくが、下は相当に深いのか物ともせずに全部飲み込んでいく。
丁度鉄人のいる場所に続く通路が一本だけあり、それ以外はただの奥深い巨大な穴。
そして流石ロボだけあって、何も怖がるそぶりを見せずにその一本道を滑るように渡って、穴の縁に戻ってきた。
あっけにとられていると、
「クラーヴンいつまでそんな所で立ってるの?早く探索に行くの」
自分の体感では、数秒も経っていないつもりだったのだが、ビエーラに煽られてしまった。
いつの間にか、穴の縁を伝って下に降りる通路を見つけたらしい。
次から次へと予想外な事が起きたり、心臓に悪い行動ばかり見せられている気がするんだが、普段からあちこち旅慣れしたプレイヤーってのはこんなものなのか?
自分が引き篭もりすぎて、何にでも一々驚きすぎなのか?
フウッと一息息を吐き、落ち着いてその下へ向う通路に辿り着いたのだが……。
「リフトじゃねぇか!」
階段でも、梯子でもなく、池の周りを斜めに降りていくようにラインの引かれたリフトが一機設置されていた。
「リフトだとは思うの。でも何か機械文明の遺跡みたいだし、多分こんなものなの。下に行くの」
あっという間に順応したビエーラは既にリフトの上、乗騎であるシェーベルをビエーラのクランメンバーに預けたカヴァリーも一緒なら、カーチと鉄人も知れって乗り込んでいる最中。
何で自分だけ、さっきからこんなにずっと驚いてるんだ?
何か急に全てが馬鹿馬鹿しくなり、何も考えずに乗り込む。
すると、本当に当たり前のように鉄人がリフトを操作して、
ウィーーーン!!!
と、油の切れたギアが廻る音がして、そのまま下へと向かって行く。
真っ暗でまだ何があるかも分らない深淵に飲み込まれていく。




