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147.根の国の陰達

 「ふーん、それでブラックフェニックスは武器屋の手伝いをして、三羽烏は美人のエルフの尻に敷かれてたと」


 「言い方に棘があるぞクラーブン!」

 「否定できない」

 「普段から厳しい上司に頭が上がらないし、別に思うところはないな」


 「俺は宝石から直接精霊の力を引き出す方法について聞いてただけだ。別に何をしてた訳でもない」


 「いいじゃん、いいじゃん!皆それぞれにここの文化って言うか考え方に触れたんだからさ!向こうとは結構違うから、直接触れてもらった方が手っ取り早いと思ったし」


 「スパルタが過ぎるんだよな。自分が出来るからって誰でも出来るとか傲慢だぞ?」


 「そんな卑劣な感性じゃないって!排他的に見えるからって皆すぐに引き返しちゃったじゃん?でも一歩踏み込めば結構気のいい連中なんだって事を知ってもらいたかったの。それに変わってるのはここからだから」


 「ここから?」


 聞き返しつつ、周囲を見渡す。


 集会所に幕僚総監を置いて、早速未踏破地区探索の為、街から出ようというところ、視界に広がるのはただ薄暗い平原、所々何やら空から地面に伸びて突き刺さっているように見えるが、だから何だというのだろうか?


 「まっそれも見れば分かるから!」


 言いながら平然と平原を歩き始める隊長の後ろをついていく。


 正直な所、本当に見渡すばかりの平原で、後ろに見える街が小さくなればなる程不安を感じる不毛な地だ。


 「ちなみに地面を掘ればサツマイモが出てくるから、いずれ芋焼酎も造りたいとは思ってる」


 「芋は確かにどこでも採れるとは聞いてたが、ここではサツマイモなのか……てっきり色んな種類のジャガイモしか採れないものと思ってたぜ」


 「あれ?ブラックフェニックスも料理に興味あるタイプ?」


 「いや俺は食べる専門だ……」


 『お腹いっぱい食べたいな~!プリンプリン~!』


 突然、腹の底に響くような不気味な声が聞こえ、一斉に身構える。


 「大丈夫、落ち着いてそこを見てみな」


 隊長に指差された方を見ると、薄暗い背景でよく見えていなかったが、真っ黒い陰が佇んでいた。


 真っ黒く輪郭もボヤッとしているが、どうやらヒトの子供サイズのウサギがこちらを見ている?


 『相変わらず、どうやって食べるか分からん物ばかり持ってきやがって!』


 いきなりまた声を発するが、一体なんだと言うのだろうか?


 「こいつがここのフィールドの特徴でさ。意味の分からない陰がそこらを徘徊してて、戦う事もあれば、何かを交換する事もあれば、こういうただ意味の分からん奴もいる。でも<陰精術>をこの地で取得したら、こいつらと契約する必要があるんだ。自分が契約したのはこの『根住』くっつく事と掴む事しか出来ないんだけど、自分からしたら、これ以上ない相棒だね」


 『全く、なんで世界の財力と権力を動かすコネクションと軍権を一手に握るのが、あの困った男なんだ』


 「うん、今ので分かったな。こいつ街の声が聞こえててそれを声に出してるんだ」


 「そうなん?」


 「そりゃそうだろ!」

 「絶対アレだ軍務尚書の愚痴だ」

 「玄蕃……ヒトを困らせるのも程々にして置けよ?」


 すると、ウサギ型の陰はどこへやらと二足歩行で歩いていった。ちなみに前足はプランと体の前に垂らしたままだ。


 ウサギ型の陰を見送っていると、急に三羽烏が騒ぎ出す。

 

 「おい!頭に何か乗っかってるぞ!」

 「ああああ!何だこれ!」

 「……」


 三羽烏の一人が鎖鎌を抜いた所で、隊長が止めに入る。


 「待って!そいつは有益だから、話を聞いたほうがいい!さっき街で稼いだ銀貨を出しな」


 『ねぇ・・・お金頂戴。くれたら君のスキルの熟練度ちょっとだけ増やしてあげる』


 「え?え?これでいいのか?」


 三羽烏の内、なんとなく天然っぽいと言うか、いや三人とも天然か……、快活な雰囲気の腰の後ろに短刀を装備した男が、銀貨を差し出すと、ふよふよと黒い雲のような陰がそれを受け取り何処かへ飛んで行った。


 「自分はここで生活してる時、何度かアイツに遭遇して結構熟練度貰ったし、銀貨は幾らか稼いでおいたほうがいいよ」


 「なんつうか本当に不思議な場所だな。って言うか<陰精術>ってあれと契約する術なのか」


 「いや、違うぞ?闇に隠れたり」

 「目くらまししたり」

 「敵の陰に隠れて奇襲したりする術の筈だ」


 「それは賢者の石を使った場合じゃん?ここのヒトはそんな物出来るより遥か昔にこの地に流れてきたらしいから、全く別の方法で術を使うんだよ。ところで<陰精術>って、陰に肉体を与えて具現化する術じゃなかったの?」


 「何言ってんだ?隊長も分かって無いじゃないか。どちらかと言うと闇精術って言った方がしっくりくるような術だったと思うぞ」


 「隊長が今言ったのは<陰陽術>だ」


 それまで、静かにこちらの話を聞いていた阿空が急に発言したので、視線が集まる。


 「<陰陽術>って……言葉自体は聞くが、精霊の相性的に反発しそうな気が?」

 

 「いや、それはない。俺のベルトも陰と陽を同時に使えるし、寧ろこの二つを同時に使う事で、調和的なエネルギーになる」


 「詳しい事は俺も専門でないので分らんが、生命の根源に触れる術とは聞いている」


 ふーむ、なにやらだだっ広い平原を歩くのに退屈しないで済みそうな位、話題豊富な連中と組む事になったようだ。

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