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143.暗い国

 ある日ログインすると阿空が店の奥でいつものように食事をしていた。


 まぁこの光景は【帝国】内乱以降、割りとよく見かけるので別に何とも思わないのだが、


 「おっ起きたか!根の国に行くぞ!」


 とあっさり言ってくれる。


 「そりゃそのつもりで準備は済んでるが、唐突だな。しかも国の方から誰か連絡しに来るんじゃなかったのか?」


 「その予定だったが、俺も未踏破地域の探索チームだから、ついでにクラーヴンも連れて来いってさ」


 「俺は鉱石やらの買い付けに行くだけで、その探索とやらは行かないぞ?」


 「そりゃ生産職にはちっときついだろうし、別にいいんじゃないか?寧ろ道中どんな危険があるかもわからないし、護衛代わりに一緒に来いって事かも知れんし」


 「なるほど?根の国ってのは殆ど誰も行った事ないんだもんな?」


 「らしいな。実際ポータルで飛んだことある奴は多いみたいだが、最初の街だかから先には進めないらしい」


 割りとありふれた情報を確認しながら【古都】のポータルに向かい、根の国へと飛ぶ。


 ぐにゃっと変な感覚がよぎった直後には、昼なのにやたら暗い場所に出た。


 正直な所【古都】はいつでも雲がかかっていて暗いのだが、雪の所為でほの明るくも感じなくはない。


 しかし、ここは本当に暗い。目が慣れてくれば真夜中と言う程でもないが、夕方の日が落ちきった一瞬で時が止まってしまったかのような視界の悪さを感じる。


 どうやらここは何にもない丘の上の様なので、眼下に見える街を目指して降りていく。何しろ明るく目標になるものがそこしかない。


 「足元に気をつけろよ」


 「そりゃ、気をつけるが噂には聞いてたものの本当に暗いな」


 「確かにな。【森国】も場所によっちゃかなり暗いが、ここまでじゃないな」


 自分と違い近接戦闘職で身体能力も高い阿空ならもっと素早く移動する事も出来るのだろうが、自分を気にしてかゆっくりと進んでくれる。


 次第に近づいてくる紫っぽい明かりが、よく見ればネオンの看板だった。


 文字はゲーム内の文字になっているので<言語>スキルをセットし忘れて何が書いてあるかは分からない。


 しかし、ヒーロー達が見たら絶対例の店に使いたいって言い出すだろうなと想像に難くない。


 大型アップデート以降、妙に近代的だったり未来的な要素が盛り込まれて来たなと感じなくもないが、個人的には嫌いじゃない。


 ファンタジー世界なんだからもっと中世ヨーロッパに寄せてくれとかそういう層は、まずつるべ井戸で水汲みからしたらいいのだ。


 寧ろそれに近い不便さを解消しようと言うのが隊長のやりたい事らしいし、そういう発展要素も盛り込んでいるのがこのゲームの面白さだと受け取っておく事にする。


 さて暗い中でネオンが点灯する街中、怪しげな浮浪者か酔っ払いでも転がってそう……そんな事を考えてたら、本当に酒抱えて寝てるヒトがいる。


 見る限り耳の形状がやや特殊で、エルフっぽくも見えるが普通のおじさんにも見えなくもない。


 先に天上の国に行ったのが悪いのか、自分にとってエルフとは健康的に日焼けした細マッチョのイメージが強すぎる。


 装備工房のおっさんですら、おっさん感はあってもくたびれた雰囲気ではなかったし、食堂の支配人は体こそ大きかったが、内側に筋肉が張り詰めている戦士タイプだった。


 それに対して目の前にいるおっさんのくたびれ感と厭世感は何由来だろうか?


 まあ、でもしかし、よくよく考えれば道で寝てても平気な程治安が良いとも取れるし、ここは一旦スルーしておこう。


 「しかし、適当に歩いちゃいるがどこに向ったらいいんだ?」


 「さあな?まぁ道で寝れる程治安がいいみたいだし、適当にそこらに顔出して話を聞いたらいいんじゃないか?」


 と言う事で、明らかにヒトが多くいそうな雰囲気を醸し出している建物に入る事にする。


 何しろ大きなネオンが光っていて、大勢のヒトの混ざった声がするのだから、多分公共の場所だろう。


 ヒトの自宅に勝手に入りましたじゃ、さすがにばつが悪いが、公共の場所なら道を聞くくらいの事は出来るだろうという判断だ。


 ちなみにゲームなので開いてる家なら入っても住人が出てきて普通に会話になるだけだが、出来ればそういうのはやりたくない。


 大丈夫だと分かっていても気まずいものは気まずいのだ。なんなら凄く冷たくあしらわれる事もあるし……。


 ゲーム当初とりあえずやってみてやらかして以降は、何かを聞くときは公共の場所で、と決めている。


 とりあえず中に入ると、明らかに酒を飲んでいるヒトが大勢いる。


 結構思い思いいろんな種類の酒を飲んでいるように見えるのは、もしかして根の国は酒の国なのか?


 とりあえずカウンターに向かい、ただで情報を聞く訳にもいかないので、食事と酒を頼むと銀貨2枚と言われ支払う。


 「おい、兄さん。この金はここじゃあ使えないぜ」


 「は?そんな事あるのか?」


 「ああ、ここの銀貨はこういうやつだ」


 店員から差し出された銀貨の意匠は確かに、向こうの物と違う。


 てっきり、どこに行っても同じ金だと思い込んでいた。


 って言うか、先に金額提示してくれなかったら危うく無銭飲食だったぞ……。

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