141.【砂国】
景色がぼやける暑さ、照りつける太陽とそれを反射して返す白い砂原が、見渡す限りの世界を焼き尽くしてしまったかのような不毛の土地を目の前にして思い出す。
何で見たのかは定かじゃないが、世界の温暖化を止める為に仮に世界中の砂漠を植物でいっぱいにしたとして、世界は寧ろ暑くなるらしい。
何でも気温だけで言うのならば、太陽の光を砂漠が反射する方が、低く保てるのだとか?
地球全体で見れば、砂漠のお陰で人間が生活できる気温になるらしい。
嘘かホントか知らないし、確かめようもなのだが、つくづく自然と言うものは自分の認識を遥かに越えた存在で、そのルールの中でしか自分は生きられないのだなと思う。
あと、日陰から一歩も外に出たくない。
どう考えてもヒトの生活できる気温じゃないし、日差しは確実にこちらを料理しにかかってるとしか思えない。
いや、本当にゲームでこんな苛酷な環境再現するなよと、そりゃ視覚だけのテレビゲームやVRだけならいいが、フルダイブとか言う五感で感じられるゲームでやっていい限界を完全に越えてると思う。
まあそもそも、このゲーム自体、最初はゲームとして作られたわけじゃないらしいし、様々な方面の実験の結果こういう形になっているのだろう。
そして、どういう理屈で自分が五感でこのゲームの環境を感じ取れてるかも分からなければ、他には存在していないフルダイブVRに基準も何も無いことは分かってる。
つまり何が言いたいかって、要は暑すぎるので、愚痴を言いたいだけだ。
一応、情報として暑いというのは聞いていたので、耐暑効果のある服装で来たのだが、幾ら日陰で我慢しようが、慣れる事はなさそうだ。
「どうするクラーヴン?一旦【古都】に帰る?今回はソヘイラ様に会って<粧印術>教えてもらうだけなんだけど?」
「いや、ここは一つ我慢して見聞を広めよう」
覚悟を決めて日差しの中に出ると、一瞬目がくらむがそっちはすぐに慣れた。
全体的に白い建物の並ぶ綺麗な街並みを眺めると、色ガラスが嵌め込まれた家が多く、思った以上にカラフルなようだ。
そう言えば、ガラス系の産地としてはこのゲーム内では有数だったな。時間があればどこぞの工房でも見てみたいモノだが……。
あちこち田舎モノよろしくキョロキョロしていると目に入ってきたのは、トカゲ人間。
ちょっと時間がかかって、リーザードマンかと思い至ったが、あからさまな見た目に一瞬思考が停止した。
普段見かける普通のヒトより背丈が高く、尚且つ体のサイズも大きい。なんなら目のつき方も視野が広いのかもしれない。
何やら後ろに輿を持つヒトを引き連れて都の通りのど真ん中を通り抜けて行く。
ちなみにこちらは道端を歩いているので、横目で見ながらすれ違おうと思ったら、隊長が急にその場に止まる。
そして同時に輿も止まり降ろされ、何やら中からヒトが出てきた。
あからさまな薄着で肌の露出も多く、絶対砂漠で暮らす格好じゃないと分かる色白の女性が、話しかけてきくる。
「お久しぶりですね」
「久しぶりです。<粧印術>教わりに来たんですけど」
「はい、それではそちらの店を借りて済ませましょう」
お互い示し合わせたかのように話がとんとん拍子を越えて、ぶっ飛ぶ。
「どういう事だ?」
「ソヘイラ様は未来が見えるから、何のかんの言わなくても全部分かってるの」
そして外観からは何の店かさっぱり区別のつかない建物に入ると、そこは何の店なのだろうか?
どうやら店員はソヘイラ様の事を知っているようで、あっという間に個室を用意され、案内されるままに入る。
そこは厚いカーペットとクッションが置かれた部屋で、二人は手馴れた様子で座り込み、自分もそれに習う。
自分の後ろのカーペットの無い所で鉄人はしゃがみこむが、ソヘイラ様は特に気にしていない様子だ。
「では早速印を刻みましょう」
言うが早いか立ち上がり、何やら小さな丸い玉を持って隊長の額に触れると、その玉から墨が流れ出るように吸い込まれ、隊長の額に怪しげな横線が引かれた。
「これで完了?」
「はい、あとはその印を使っていれば徐々に成長していきます。名前は『第三の目』です。そのままでも感知系スキルに多少の影響を与えますが、是非使い込んでください」
とまあ、あっさりとしたもので、正直拍子抜けだが、やたら時間がかかるよりは話が早くていいかと腰を上げかける。
「それではお連れ様ですけど、鍛冶の方も鉄の方も大きな運命を背負っています」
「え?あ?俺達は付き添いで来ただけなんだが?」
「いいから!ソヘイラ様は全部お見通しだから、聞いときなって」
「全部とはいきません。私の力では結末の見通せない大きな戦いがあります。残念ながらその敵を理解する事すら出来ていません。今のこの道を行けば、多くの仲間が見つかるでしょう。そして同時に多くの別れもあるでしょう。その別れが不幸なものとならぬよう、力をつけてください」
それだけ言うと、さっとソヘイラ様が立ち上がり、いつの間にかすくっと隊長も立っていて、続いて自分達も立ち上がる。
ソヘイラ様はその優美さと反して、結構身体能力は高いのかもしれない。全く勿体つけない体の動きに生産職の自分では反応が遅れる。
そして何事もなかったかのように店を出て、特に何にも購入しなかったけど大丈夫なのか、心配になるが、その辺は詳しいのであろう二人に任せる。
「じゃあお世話になりました」
隊長が言う時には輿は持ち上げられ、道の真ん中を進み出す。
「さて、さっきの店で何か食べてくか」
隊長の一言で、やっとさっきの店が食堂だったと知る。
さっさと店に中に戻ってく隊長についていく前に、
「大きな戦いって、生命科学研究所か?」
「ワカリマセン」
無意識で、鉄人のボディに触れる。
「あっつい!!!」
太陽光で熱を持った鉄人で火傷したかと思った。




