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14.出発

 「クラーヴン!お待たせ!」


 「いや時間通りだぞカーチ」


 「じゃあ、早速お出かけ?」


 「いや、その前にこいつは俺とコージァからのプレゼントだ」


 そう言って、特にラッピングされてるわけでもない服一式を手渡し、着替えられる部屋に連れて行く。


 少し、店頭で待っていると降りてきたのは茶色のツナギに身を包み、昔のハーレー乗りが使いそうなゴーグルを額に当てた少女。


 元々、癖毛のアバターも相まって、活発そうな感じが強調される。


 「何これ!凄くいいんだけど!何で?」


 「折角冒険するんだから、服装備しか出来ないなりに、最低限の防御力と耐寒耐暑機能付きの服が必要だろうと思ってな。それでも都の外に出ると寒さがきついだろうから、上からこのコートも着ろよ」


 そう言いつつ、子供のカーチが着るには十分なサイズのカーキ色のロングコートを渡し、頭にはフワフワの耳当て付き帽子をかぶせる。


 はっきり言って、女の子が装備するには渋すぎるが、逆にそれが軍属少女っぽくて悪くはない。


 流石コージァデザインだけある。


 はしゃぐカーチを連れて、都の門に向うと既にカヴァリー、ビエーラ夫妻が二人乗りで待機しつつ、近くにビエーラのクランメンバーがソリの運転席にスタンバイしていた。


 「悪い、待たせたな」


 「大丈夫、時間通りなの」


 「それじゃ行きましょうか!」


 重精ホバー装置のお陰で軽くなった鉄人をソリに乗せ、カーチもやって欲しそうだったので、持ち上げてソリに乗せる。


 一応自分は重量装備を作成する時に、国から貰った筋力補正装備があるので、ヒト一人持ち上げるくらいなら造作もない。


 何なら、到底人間では持ち上げられないような鎧のパーツを作らされた事もあることに比べれば、軽い事この上ない。


 ゆっくりと動き出すソリの方向はおおよそ北西。


 何しろ、大昔から雪国だったとは言え、地形や地図は変わっているらしく、鉄人も例の基地への道筋は全く分っていない。


 ただ記録にあるのは、その基地から発進して、生命科学研究所とか言う施設を破壊する事が当時の任務だったということだけだ。


 何でその生命科学研究所を破壊しなければならなかったのかすら記録が無いのだから、まあ平和な時代に復活して良かったねと言った所。


 その為目的はその大昔の技術習得の為に探索する事。以上である。


 そんな完全に純然たる趣味に付き合ってくれるカヴァリー、ビエーラ夫妻には感謝しかないし、ロボ好きで何となくついて来ちゃったカーチも楽しめればそれでいいと思う。


 木と鉄だけは山程産出する【帝国】だけあって、そこら中、森だらけなのだが、白く暗い森の木々の合間を縫ってひたすら北西へと進んでいく。


 どこに方位磁石を設置しているのか修理した自分でもよく分らないのだが、鉄人が時折方位を指示してくるので、あとはカヴァリーの土地勘に任せて、先へと進む。


 相変わらず飽きずに鉄人とずっと話してるカーチに、中のいい夫妻のカヴァリー、ビエーラ。


 のんびり気楽な道のり、しかしビエーラが一瞬鋭い鷹のような目をしては、遥か視認出来ないほど遠方の魔物を何事もない様に狩っている事は気が付いている。


 そんなこんな、結構な時間が経ったのでセーフゾーンと呼ばれる焚き火で休憩。


 セーフゾーンの名の通り、追われたりしない限りは魔物が攻撃してこない安全な一角で食事を作る。


 何しろずっと寒い行程、幾らゲームとは言え体の心まで冷えていては、いざという時パフォーマンスを発揮できまい。


 ちなみにこのゲームで<調理>スキルを取れば、料理は出来るが、それは厨房のようなちゃんと施設のみの事。


 ずっと食事バフはあっても、街で食べてから出発したのではその恩恵にあずかれるのは極わずかな時間と言う、料理不遇に一石を投じたのが、やっぱりあの変わり者。


 <簡易調理>とか言う、如何にも即席スキルが実はセーフゾーンにある焚き火でも料理可能と言う事実を発見し、当たり前の事のように実行していた。


 それを見習い、自分も<簡易調理>を取得しその上で<調理>も持っているので、諸々のスキルと合成する事で、セーフゾーンでもそれなりの食事を作れるようになった。


 しかし、まあ体の芯まで冷え込む雪中行、出来るだけ温まるものがいいだろう。と言う事でカレー鍋にする。


 香辛料の名産地【砂国】プレイヤー、カレーマンに頼んで集めつつ調合してもらったスパイスと、例の変人に分けてもらった出汁素材を混ぜ、更に方々からおすそ分けしてもらった肉やら野菜やらを適当に切って鍋に詰め込んでいく。


 ぐつぐつ煮ている内に、かさが減り、いい香りが漂う。


 寧ろこの香りで魔物が集まってこないのが不思議なほどだ。


 ちなみに鍋は【鉱国】生産プレイヤーポッターの最高級(自称)土鍋を使わせてもらっている。


 不思議とあらゆる素材がふっくらと仕上がる、いい鍋だ。


 鉄鍋なら自信があるが、土鍋では到底敵いそうもない。


 そんな事を思いつつ、皆でハフハフしながら、カレー鍋を平らげ、再び北西を目指す。

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