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139.決闘王戦後編

 力の抜けた戦闘員Aの右手からショートソードが滑り落ちる。


 そのサイズから想像できない重量感を持って、石で出来たリングに突き刺さり、金属の振動する重低音を鳴り響かせた。


 観客の腹の底に響くようなソレは、まるで世界の終末を告げる鐘を思わせ、重苦しい雰囲気で闘技場内を塗り潰す。


 しかしその重低音に混じりかすかに混ざるヒトの声。


 「根住」


 突然戦闘員Aから真っ黒な尻尾が生え、炎の巫女の首に巻きつく。


 咄嗟の事で反応できない炎の巫女にダメージを与え、その反動で戦闘員Aを取り落とす。


 地面に落下しつつ、受身を取り、そのままクルッと回転して立ち上がる戦闘員Aはまるで今あった出来事が無かったかのような軽い身ごなしで、更に距離を取る。


 「あ~死ぬかと思った~って言うか死んだのか?」


 言いながら左腕を持ち上げ眺めると、そこにあった黒い蛇はすっかり薄くなり、代わりに陰の腕が張り付くばかりとなっていた。ちなみに右腕の白い蛇の印は元の前腕サイズに戻っている。


 「クックック……はーっはっはっはっは!!何で今ので死なないかね~!あんたは!」


 笑いながら少し距離を取り、取り落とした剣に顎をしゃくる炎の巫女。


 「じゃ、お言葉に甘えて……」


 とあっさり剣を拾いにいく戦闘員Aだったが、


 「あっ駄目だこりゃ重過ぎる。この印ってこんなバフかかってたのかよ」


 言いながら剣を拾うのを諦めた。


 代わりに腿に提げていたナイフを取り出し、構え直す。


 「そうかい、それじゃ私も切り札切らせてもらおうかね!霊鳥の印はただの必殺技じゃないんでね!来な!」


 両手を天上に広げるように掲げると、闘技場の天上に光が集まり、鳥を象っていく。


 そしてそれが舞い降りると、そのまま吸い込まれ、炎の巫女の全身の細胞が輝き出し、燐粉を放つ。


 そのまま一足で飛び込むと乱暴なフルスイングパンチを見舞う。


 かなりのスピードとは言え、直線的で無駄の多い攻撃を横に転がるように回避して距離を取り直す戦闘員A。


 しかし、飛び込みの反動など気にしないかのように向きを変え回避する戦闘員Aを追いかけて、右フックからの打ち降ろしの左で追い討ちをかけていく。


 それらを紙一重でかわしながら、戦闘員Aもさり気なくカウンターで首筋をナイフで狙って行くが、掠れども攻撃自体は見切られている。


 更に炎の巫女が、戦闘員Aの服を掴み、引き寄せ、投げの体勢に入りかけた所で、戦闘員Aの掴みからの白いエフェクトの術が入り、一瞬硬直し逃げられてしまう。


 しかし、明らかな炎の巫女優勢状態で、対応に追われる戦闘員Aだが、諦める様子は微塵も見られない。


 至近距離での打撃の連打から、隙あらば投げに持っていこうとする炎の巫女に、決定打を与えず、のらりくらりとやり過ごす戦闘員Aに観客がやや冷め始めた頃。


 急に唐突にしゃがんだ戦闘員Aがクルッと横回転し、尻尾で炎の巫女の足を取って転がしながらそのまま黒いエフェクトの術で、吸収して、また距離を取った。


 「パワーは圧倒的に負けてるし、連撃でも休む様子を見せないって事はスタミナも相当だ。スピードも追いつかれてるし、反射神経だけなら負けてる。こりゃ万事休すかね~」


 「その割りに余裕じゃないさ!」


 「多分時間制限有るんでしょ?しかも術全然使ってないしさ」


 「ふん!どうだかね!」


 言いながらさらに強引なラッシュに持ち込み、上段突きをかわされ、返すボディフックも外す。


 そこから唐突にリズムを変え、右足と右手を同時に伸ばし、体と腕を一直線に伸ばすリードパンチに切り替える。


 流石の戦闘員Aも急なテンポの変化に付いていけず、左腕で<防御>いつの間にか一度戻っていた白の蛇の印が再び伸びていた。


 すぅっと炎の巫女の光が抜けて行き、中空でただの粒子のようになって弾けて消えた。


 「印も消えたね~これで互角だお互い振り絞ったもんね~」


 「ふん!まだ切り札はあるだろ!電光石火!」


 炎の巫女の姿が消え、一瞬で戦闘員Aを貫くような鳩尾突き。


 しかし、貫いたのは戦闘員Aが着ていた短裾ローブのみ、いつの間にか少し距離を取っていた戦闘員Aは全身に張り付くようなタイトな戦闘服姿となり、ベルトにあるレバーを押す。


 「精神力が必要ないギミック位自分も持ってるし!」


 「その情報は既に持ってるよ!」


 子供の口喧嘩の様だが、この二人は紛れも無く闘技場のトップである。


 白く光り輝き、黒く全身を締め上げる帯状のパーツが、世界観を捻じ曲げる。


 代わりにそれまで纏っていた陰が消え腕に巻きつき、白い蛇の印も元の姿に戻った。


 「何だあんたも燃料切れかい」


 「そりゃ、そっちのカスカスになった精神力から何にも吸えなかったからね」


 雷電の如く、放電を撒き散らしながら一瞬で間合いを詰める炎の巫女を待ち構えて、カウンターを狙う戦闘員A。


 お互いの攻撃が掠めるが、炎の巫女はまだ生命力に余裕があり、戦闘員Aは高い耐性を維持してダメージを最低限に抑える。


 そして、それまで押し込み続けた炎の巫女が半歩引き、それに合わせて半歩踏み込んだ戦闘員Aが呟く。


 「<復讐>」


 スッと突き出されるナイフが、炎の巫女の心臓へと届くかと言う所で、時が止まったように戦闘員Aの動きも止まり、グラッと体が傾いて崩れ落ちる。


 「<蹴り>はまだあんたに見せてなかったね……」


 半歩ひいたのは誘いの手、上段蹴りで間合いに入った戦闘員Aのこめかみを蹴り抜き、クリーンヒットとなった。


 そのまま足を地面に下ろすと、根が生えたようにどっしりと構えて、両拳から無数の連打で畳みかけ、削りつくした。


 連打の勢いで、空中に投げ出されリング中央で大の字になって動かなくなった戦闘員Aと、


 本当に全てを絞りつくした炎の巫女の様子に会場は静まり返ったままだった。

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