124.阿空のクレーム
「おーーーい!ずっとほったらかしで、何やってたんだよーーーー!!あぁあん!」
ゴドレンの店に帰るなりテンションのおかしい阿空をクラブが羽交い絞めにして止めているが、まぁ阿空の鍛え方は尋常じゃないし、本気で殴りかかろうという事ではないだろう。
「ちっと野暮用でな。それでそんなに怒ってるって事は何かあったんだろ?ちゃんと聞くから話してみろよ」
言いながら、お土産の天上産の食物を並べていき、師匠とクラームが片付けていく。
「いいか?俺は未踏破地区の探索とか言う危険な任務を受けるために待機してたんだ。何でか分かるか?」
「そりゃ修行の為だろ?そうだコレ刀系のスキルに効果のある飾り紐お土産だ」
「あ、ああ……ありがとう悪いな。しかしそれとこれとは別問題だぞ!俺は今でずっと小太刀を振るい内へ内へと深めていったが、逆に言えば見知らぬ物を見て触れる事で得られる広がりがなかった!それを求めて旅に出たんだ」
「そうだったな。いい事だと思うぞ。ある意味じゃ俺もそうさ。ずっとこの店で鉄ばかり打っていたのを鉄人と会った事で短い間にも色んな場所を巡って、色々知った」
「そうか、クラーヴンも……それじゃあ分かるだろ!俺は腕を落とさない為に魔物を狩りまくって、魔石を全部売った!それで、一財産作っちまったんだよ!これがどういう事か!」
「ん~良かったじゃねか。地元に帰る時にいい土産の一つも買えるだろうし」
「それは、そう。だが!俺がしたかったのはもっとこう……のどが渇けば朝露でしのぎ、魔物と生きるか死ぬかの瀬戸際で戦い、血の一滴も残さずありがたく喰らう。そんな修行なんだよ」
「<解体>を使っても、そんな血の一滴までドロップはしないから、夢の見すぎだな。結局の所、世界は現実の連続だ。足元をちゃんと見て、細かな所を疎かにしない。見えない所で悪事を働かない。上手くいかなくても投げ出さない。どんな道を進もうが立派なヒトってのはコレを大事にするんじゃないかな?」
「いや、うん。本当にその通りなんだけど、違う。準備に時間がかかるとはいってたけど、何でクラーヴンまでいなくなって、何をやってたんだよ」
「天上の国に行くのに、鉄人の動力が必要なんで付き合ってただけさ。野暮用も終わったみたいだし、そろそろじゃないか?未踏破地区の探索」
「そうなのか?それならいいんだけどよ。てっきり忘れられてたのかと思ったからさ。実際は珍しい北の魔物と足場の悪い雪の中で戦うのも中々乙なもんで、楽しんではいたんだ」
「ああ~そうだったか。隊長もアレで身分があるから色々と忙しいんだ勘弁してやってくれ」
「いやいや、そりゃそうだ。一国の内乱の旗印の一方だ物な。しかも最終的に勝って納めたんだ。忙しいに決まってる。で?いつ行くって?」
「ん~多分ガイヤとの『決闘王』戦が終わったらじゃないか?」
「決闘王ってあの闘技場の伝説の?」
「伝説かどうかは知らんが、現決闘王は隊長だ。だがやっぱりあれは【闘都】に所属する者が持ってた方が筋が通るし、一戦やるんじゃないか?」
「そうか、それは是非見に行きたいな!席取れるだろうか?」
「隊長に頼んでみろよ」
と、まあ阿空にいきなり絡まれたくらいで、済んだ。
しかし、今回は色々ばたついたしちょっと疲れた。
天上に着いてからは気候のいい場所でのんびり過ごしていた筈が、帰り際になって料理対決に狩り出されるわ。
その料理対決も泥沼の泥仕合で、はじめは色だったのが今度は甘さ、しょっぱさ、辛さになり、出汁か油か素材の味かで揉め、最後には隊長も参戦して、1000人に食わせるのにいかに効率がよく美味いかだとか言い出して、どうにもならなくなった。
やっと終わって、鉄人を試作小型動力船に接続して帰ったら、出口で止まれず例の滝を落っこちて、溺れるわ。
結局泳ぎの得意な【海国】のNPCと隊長に助け出されたが、鉄人を引っ張り上げるのに苦労した。
ちなみに出発前に集まっていたヒト達はとっくに撤収していたので、ガイヤはレディに報告に行き、隊長は【帝国】他色々と回るらしい。
自分はと言うと、大河に住む河族に船を出してもらい、【古都】近くにつけてもらって素直に帰ってきたら、阿空のクレームにあったという訳だ。
一先ず店のメンツと阿空といつも飯を食う者が集まったので、天上の国の食材を色々味見しながら酒を飲んでいく。
天上の国の食材は木になる果物や、蔦系の野菜が中心だった。
逆に根菜類は里芋のみ、海に浮かんでるのに野菜や果物があるだけ自然の摂理に反しているのだが、そこは世界樹様のおかげと言うやつらしい。
とはいえ、【帝国】じゃ手に入らない物が大半だ。
瓜すらも切って食べればかなり甘みがあるし、野菜も料理せずに食べても瑞々しい。
保管庫に入れておけばかなり保つだろうが、今から何にして食べるか迷う。
とりあえず、茄子と挽肉の味噌炒めは作りたいから、隊長に味噌を譲ってもらうか。




