115.天上の技術
鉄人の機関銃だが、あれやこれやと有り物を合わせて、最適解をひたすら探した結果、肩部に大きなバインダーを装備し盾として、その後ろに弾丸供給機を設置、右腕へと給弾される。
そして肝心の右腕は小型ガトリングガンとした事で、そう簡単に間合いに敵を入れない、連射力とノックバック力を獲得できた。
「自分はエリーゼ様のガトリング掃射捌けるけど?」
「隊長の話は参考にならないから黙ってろ」
これで今後の鉄人関連のクエストの準備は出来たのでココからは自分の趣味の時間……。
「なぁ、鉄人ってのはどういう体の構造してるんだ?右手が丸ごと銃になってるって意味がわからねぇんだが」
「だから!鉄人の本体は中央の丸い部分に有るコアで、そこさえ傷つかなければ、他は俺の手作りと拾ってきた他のロボの材料で出来てるんだよ」
装備工房のおっさんは相変わらず鉄人に興味津々だが、少し俺の趣味にも付き合ってもらう。
まず、銃の構造だが隊長が昔持ってたフリントホック銃の構造は大体理解出来た。
しかし術の媒介としての銃の作りはまだちょっと難しい。
理由としては樹を材料として使っていると言う事だ。凄く簡単に言ってしまうと術士の使う杖みたいな構造なのだ。
精神力を貯めておく機構とそれを精霊の力に変換する機構、そして術をスムーズに使う機構を備えてないといけない。
という訳で次に宝石の力を装備に流してそのまま術の媒介として使う方法も聞いたのだが、これも難しい。精霊の力を道具として利用するには多分<錬金>の技術が必要だ。
そして宝石を使うにはそのカットの仕方が鍵になるらしく、宝石を扱える人物も必要かもしれない。
いずれも鍛冶屋の自分にはちょっとハードルが高いので、今後木材系の生産職と錬金系の生産職に宝飾系の生産職も連れてくる必要があるかもしれない。
こうなってくると鍛冶屋の自分とエルフ技術は交差するところが無い。
平行線を辿る技術交流に少し気鬱になっていると、装備工房のおっさんに散歩に誘われた。
いくつもの船が繋がる天上エルフの本拠地は、殆どすべてが木製で、一部錨のような錘や、ロープを巻き取る機材なんかに多少金属が使われている程度。
「何かアレだな。金属文化じゃないんだな」
「そうだな。何しろこの辺じゃ金属は希少素材だ。隊長が海の下から大量にもて来てくれたお陰で今は余裕があるが、元々ギリギリでやりくりしてるんだ」
「つくづく鍛冶屋の俺の来る場所じゃなかったな~」
「そんな事はないだろ。俺達だって銛の先や包丁にフライパンくらいは金属で作ってるぞ?」
「包丁とフライパンは俺も得意だがな……」
「クラーヴン!隊長見なかったかい?」
「アイツなら工房で酒飲んでるぞ」
「全く!【訓練】だって言われてるのに一人でサボって酒飲んでるって!首根っこ捕まえて連れてかないとね!悪いねクラーヴン!」
相変わらずのマイペースでのっしのっしと船の廊下を抜けていくガイヤ。
「なんか西の奴らってのはどいつもこいつも自由って言うか、楽しそうだな」
「そう見えるなら、いいんだがな。マイペースな奴ばかりでこっちはヒヤヒヤしてばかりさ」
「そうなのか?アレだけ強いんだから少し位無茶させても別段問題ないだろ」
「そんな無茶についていける様な装備を用意してやろうと思うと、毎度知恵振り絞るのも中々大変だと思わないか?」
「まぁ、送り出すだけの立場の気持ちは分かるがな。その為に俺達の技術の一部でも持ちかえりたいって訳だ。ところが俺達はあまり金属加工を得意としてないと……」
いつの間にか船の縁から海を眺めるが、未だに雲に浮いていると言う実感が湧かない。
「まぁ、いつもいつも当りが出るとは限らないし、興味深い技術があるだけ十分さ」
「はっはっは!そう簡単にまとめに入るなよ。隊長は俺達が作った装備を使ってくれているけど、実際消費精神力が多すぎて慣れない木剣使ったり、精神力の底上げのためにアクセ追加したりしてるだろ?だからこの前のサイバーNINJA装備だったか?実際あれ作ってもらって助かってると思うぞ?」
「そうか?それならいいが、隊長の装備で俺が関わってるのは剣とナイフ程度だからな」
「その剣をどれだけ愛用してるんだ?俺も何度か手入れさせてもらったが、あの常軌を逸した耐久度は一朝一夕で成り立つもんじゃないだろ?何本も使い込んで何代も経てやっと到達する域だし、隊長のあの剣の依存度は結構高いと思うがな」
「まぁな~確かに隊長の剣は毎度俺が打ってきてはいるがな。あれも隊長のなけなしの攻撃力を少しでも上乗せする為に重量は上げたが、左腕の黒蛇の印の筋力補正頼りだしな」
「そこでだ!技術の交換が難しいならコラボレーションしないか?」
「なんだそりゃ?」
「くっくっく!聞いて驚け、隊長の木剣は世界樹様の枝で出来てるって知ってるか?」
「何か聞いた事はあるが、そんな伝説の素材みたいな剣があるならそっち使えよと思わなくも無かったな」
「いやいや、確かに俺達でもそんな素材の剣が有ったら絶対それを主武器にするさ。それでも隊長はあの鉄の剣がお気に入りだ。ならば!あの鉄の剣と世界樹様の剣を混ぜて〔隊長の剣〕を作ってみないか?」
「隊長の剣?」
「ああ、俺達も話で聞いただけだが、隊長ってのはあの邪神の化身を倒したんだろ?俺達の祖先が世界樹様の根を使い切ってやっと倒したと言う伝説のアレをだ」
「ああ、確かに一人で倒した訳じゃないが、大軍を指揮して倒した立役者ではあるな」
「つまり、そんな英雄に相応しい完全専用隊長の名を冠する伝説武器を俺達ででっち上げるってのはどうだ?」
「そんな事可能なのか?」
「世界樹様は火精様と雷精様を苦手としているが、他の水氷風重土石に関しては問題ない」
「……結局攻撃力は伸びなさそうだな?」
そんな事を言いつつも、心の高鳴りは隠す事が出来ない。




