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噂によるとどうやら彼はクズらしい。(web版)  作者: 紺野
噂によるとどうやら彼と彼女は
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3




「ダメだ、アルテンリッヒ。お前は屋敷に残りなさい」



「アルバーノン」



父様は物凄い形相で厳しい眼差しでそう言う。

そして、陛下はため息をついて父様の名を呼んだ。


「陛下、あなたがたの事情に我がルーファス家が巻き込まれるのはもううんざりです。

私の息子には関係ない」


「……アルバーノン、確かにこれは私の我儘だよ。

けどね、完璧に隠し通せる事実なんてこの世界に本当にあると思うのかい?

例えば君が死んだ後は?例えば本人が真実を知りたがったら?

現に今そうなっているじゃないか、アルテンリッヒは真実を求めている。

何もかも全てが終わってから真実を知る者の気持ちが分からない君ではないだろう?

全てが終わってから他の者の犠牲を知る者が抱く感情は虚無感と罪悪感と、ただ後悔だ」


「知る必要のないこともあります」


「それを決めるのは当人であって君ではない。

君の娘も、私の弟も、結局は知ってしまっただろう?感情がある限り、隠しきれはしないんだよ」




陛下の淡々とした台詞に父様はまたひとつ眉間にシワを増やした。

歯がすりつぶされそうな程に噛み締められた唇からギリ、と鈍い音が漏れ出る。


僕が知りたがっていること、と陛下は言った。

となれば、やはり、父様が隠し通そうと躍起になっていること、父様の心労の原因に少なからず僕の両親が関わっている。


自嘲気味ともとれる笑みを浮かべる陛下に僕は驚き、口を閉ざした父公爵に代わり口を開いた。



「陛下、発言しても宜しいでしょうか」



「もちろんだとも」



「城に行けば僕の知りたいことが分かるのですね」



「そうだね、君の望む答えかどうかは別として、真実が分かるだろう」



「……そうですか」



陛下に礼をして真っ直ぐ父様に向き合うと、もう父様は顔面蒼白ともいえるような顔色で、どこか諦めたふうに僕を見ていた。



まるで、僕の次の言葉がわかるかのように、……いや、ただしく分かるのだろう。


だって、僕の父親であるのだから。




「父様、困らせてしまい申し訳ございません。

ですが僕は真実を知りたい」



「……知らない方が良いことだってある。後悔するぞ」



「承知しております。

何もせず後悔するより全てを知って、乗り越えて胸を張って生きていきたいのです。

ルーファス公爵家に恥じぬよう」



「……そういう、強情なところはアルテイシアにそっくりだな」



「そうですか?僕はよく、父様に似ていると言われますよ」



僕が首を傾げると父様はなんとも微妙そうな顔をした。

後ろでくすりと笑い声が聞こえた。




「僕も着いていきますよ、父様。

何も知らずに守られているばかりの人生は嫌なのです」



父様は1度、その空色の瞳を見開きそれから長いため息をついた。

顔色は未だ良くはないが、どこか晴れやかにも見える。



「……やはり、姉弟か………」



「父様?」


ぼそりと何かを呟いた父様は僕にそれ以上なにも言わなかった。



「では、行こうか」



既に初めの頃のような明るい声音ではない陛下は口元にだけ笑みを浮かべてそう言った。



それが、なんだかとてつもなく不気味で、そしてなぜだか悲しく見えた。








ーーーーーーーーーー









陛下とは別に、ルーファス家の馬車に乗り込んだ僕と父様は1度も会話をしなかった。

その代わり、馬車を降りる時に父公爵は1度僕の頭をくしゃりと撫ぜた。


それからぎこちない笑みを浮かべた父様に驚愕して固まっている間にその大きな背中は先に行ってしまった。


父様の笑顔なんて、いつぶりだろうか…。


そもそも、あれが、笑顔と呼べるのかどうかは怪しいところだけど。




陛下と、父様と、僕、それから近衛騎士団の団服を身にまとった無表情の男が2人。

大層な大所帯で行動したにもかかわらず、城で誰一人としてすれ違う人は居なかった。


誰も口を開かないまま、通ったことのない道ばかりを進み、たどり着いた場所はどうやら地下のようだ。


薄暗く、湿っぽい。


しんとした石造りのその空間に一切の窓はなくぼんやりと浮かぶランプの明かりが何故だか恐ろしい。


むき出しの鉄の門の前に2人門番が立っていた。

彼らは陛下を目に留め、すばやく膝をつく。

2人のうち、1人の兵士に騎士団員はなにかを耳打ちした。



そして、鍵を開け、扉をもうひとつ解錠し、重たそうな扉の前にたどり着く。




「私が連れてきて、なんだけど、この事は他言しないでね。

それから、あまり、近づかない方がいい」



陛下の声はどこか哀愁を含んでいた。

振り返ることなく告げられた言葉に隣の父様をちらりと見るが父様はもう扉しか見ていない。


音のない空間に誰かのため息が響いた。





ギィィィ



耳障りな音を奏でて扉が開く。


ぼんやりと明るい光が視界に飛び込む。


「お帰りヴィクター、遅かったのね」




ジャラりと金属がぶつかる音がした。

とても不釣り合いないやに明るい声音に背筋が伸びる。


ベッドがひとつ、高い位置に吊るされた明かりが一つ、部屋の隅に蹲るそれはゆっくりと顔を上げた。


長い金髪がばさりと広がり顔が顕になる。



陛下と良く似た顔立ち、年齢を重ねてはいるが少女のような可憐さを未だ持ち続ける女性。



直接会話をしたことはそういえば無かったと思う。

それでも、パーティーや城で遠目で見たことはあった。


その方は間違いなく陛下の実母、フィルメリア様その人だった。

お久しぶりです。

ずっと更新せずにすみません……。全然完結しない、びっくり。

しかもどシリアス(恋愛とかどこいったー)

しんどいですがもう少しお付き合い下さい…


いつもブクマ、評価、ご感想ほんっとーにありがとうございます!

熱中症に気をつけてがんばりましょう!

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