Vol.76 『後付設定の苦しさ』
物語を書くとき、プロットというプロットを作ってはいなかった。
主人公の名前や性格は考える。どういう世界観であるかも一応考える……が外壁だけだった。
登場人物は思いつきだし、内装も思いつき、その場に主人公を立たせてみてから何となくで書いていく。大した準備もなく主人公は演じなくていけないのだ。台本もなく、私の書きたい部分だけ――かろうじて作っておいたところへ放置気味にワタワタと進まなければいけない。
自由にも程がある見切り発車である。
そして、思いつきでねじ込まれる後付設定により、正しいのか、矛盾しているのかサッパリわからず前進させられ、ふいっといつの間にか主人公から全てを取りあげてしまう……。
いつもそうして書き、「いつか続きを書き直せたら」と夢に思うのだが、裏側は悶々とじくじくとしている。
―― 一つ、どうしても完成させたい作品がある。奴隷について考えていた、パラレルワールドっぽい世界の話だ。
ネガティブな面が強いのだけれど、そのネガティブが薄っぺらい…。つまらない、迫力がない、一気に熱が冷める、目が覚める、「よくこんな展開を考えられたな」と設定という骨組みがボロボロであると目に見えてわかるのである。
きつい。
楽しく書いていた物語を自分自身で受け入れられないことが一番きつい。絵を描くようにはいかないのだなと、つくづく思う。





