Vol.52-ⅱ 『彼の名前はルクス――魔法剣士を生業とする、光の加護を受けし者だ。肩ぐらいの翡翠色の髪、水色の瞳と雪のように白い肌をしている』
前回の続きです。
登場人物の『履歴書』を第一話目からどう料理していこうか? の巻でありますが、まず「履歴書とはなんぞや?」なところから……と言いましても説明しなくてもタイトルに書かれてある通りです。
自分の作ったキャラの設定を、本文冒頭もしくはキャラが登場する度に惜しげも無く説明することであります。(私の中では)
これは診断メーカーで“ひとつまみ”って名前を入れたら出て来た設定ですね。んで、診断メーカーってさ、日が経つと同じ名前を入力しても別の診断が出て来るんですね。試しにどうなるんだろうとやったら、全然違う内容が出て来ますした。こ…これは最初にやったやつが気に喰わなかったら、自分の好きな内容になるまで出しつけられる……のかな?
二回しか試さなかったのでそこのところはわからないですけど、心理テストの結果が嫌で言い訳してやり直す感じに似てんな〜なんて。
ちなみに、絵の人物は一番最初に出て来たものであります。なんだかんだ言ったって、一番最初っていうものは刻まれるものでありますから。
さて、このルクス君――診断メーカーでは
❝魔法剣士で光の加護を受けし者。魔法の発動条件は呪文。性別は男。翡翠色の髪に水色の瞳、雪のように白い肌が特徴。邪なる存在。❞
(あなたは魔法使い!の結果より)
こう出て来るのですが、これをまあ、彼は〜とか私は〜とかを付け足したりなんだりで、
『彼の名前はルクス――魔法剣士を生業とする、光の加護を受けし者だ。肩ぐらいの翡翠色の髪、水色の瞳と雪のように白い肌をしている』
とタイトルのようになる。
こんな文章を見たこと……多々ありません? 正直、これを纏めてボン!と置かれてあっても頭に入って来ません。頭に入って来るときは、このルクス君が物語の中で活躍しているときだけです。
動きと一緒に「こいつはこんな人間です!」と部分部分を行動と一緒に書かれてあるとき、読者の脳内で絵にされて現れて来るもんだと思うのであります。
履歴書のまんまで動き出すのは、第一話目からでは難しく、作品を読み続けて読み続けて読み続けなければ、たとえ主人公であっても「こいつどんな奴だったかな?」な脇役以下の存在になってしまうと思うます。
でも、反面…漫画じゃないんだから、細かい容姿のことはいらん――なんて思う私も存在しているのであります。
作者さんがどれだけ登場人物を細かく作り込んでいたとしても、物語で出て来なければ読者には伝わらない。だから、登場人物一覧みたいなのを作るのかな〜と思ったり。
うん、けども読まれなければ意味がない。書かれてなければ意味がない。そして、長いタイトル、長いあらすじと同じで、本文に書かれていないことがあればただのネタバレになってしまう可能性がある。登場人物一覧を作品に入れるなら、エンドロールがいいのではないかと思う。
もし、作品の一番目に入れるのならば、名前と立場、名刺ぐらいの内容だけで十分ではないだろうか。
ルクス君の場合なら――
・ルクス ✳ 魔法剣士、光魔法が得意。
これぐらいとかですかね?
エンドロール、完結後に書くならそれは彼の容姿から性格から、活躍からウィキペディアのようにでも書けばいいと思います。
じゃあ、本文に書く場合はどうすりゃいいのか?
……登場するシーンの地の文や会話に入れりゃいいのではないでしょうか。しかし、シチュエーションや一人称か三人称で書かれてあるかでも書き方は違って来るのではないかとも思うのですが……一人称の場合は、“私の名前は”、“彼の名前は”、の出だしはやはりあまり必要ないのでは…
主人公が、“私”が、初っ端から誰かに呼ばれるとかすれば、履歴書から脱出できるのではないでしょうか。
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「おーい、ルクス! こっちに来てくれ」
午後の訓練が始まる少し前だった。同僚のイエロが訓練場の端で手を振り私を呼んだ。
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これが第一話目? と思われるかもしれませんが、物語は突然と始まるものであると思ってますので、始まり方に疑問を持たれた方には「じゃあ第一話目の決まりでもあんの?」と聞きたいもんですけどね。
たった三行、スマフォを横にしたら二行に主人公の名前、場所、時間、もしかしたらの職業、もしかしたらの年齢、他の登場人物の名前……あと何がわかりますかね……ルクスとイエロのなんとなくな間柄ですかね? それをニ,三行で書けるものであります。
次に、さらにもっと詳しく書くならどうなるか。
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「おーい、ルクス! こっちに来てくれ」
午後の“魔法剣技”の訓練が始まる少し前だった。同僚のイエロが訓練場の端で手を振り私を呼んだ。
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魔法剣技だけ入れてみたのですが、これで「魔法剣士か?」とルクスの職業について情報を狭められたと思います。
あと、同期、部下、先輩とか立場とか隊長の〜とか副隊長の〜とか、幼馴染で〜とか、同僚を別に料理するればもっとルクスの環境がハッキリとして来ます。
それは、主人公のルクスだけでなく、登場して来たイエロも同じことだと思いますし、わざわざ『彼の名前はイエロ――』と説明しなくていい。
また、イエロの性格。ルクスの呼び方一つで色々と変えられるのではないでしょうか。
律儀である、小心者である、大雑把である、等など、その場から動かずに大声を張り上げる奴なのか、ルクスの側までやって来て話掛ける奴なのか、そして、どういう状況なのか。
他の人間にバレても良い状況なのか、こっそりとしたいのか、作者さんのさじ加減でいくらでも作り出せるものではないでしょうか?
セリフをどうするのか、地の文をどうするのか、どうすれば登場人物の設定を盛り込んで、この育てた人間を読者に伝えることが出来るのか――
考え出すと、面白いもんです。
('・ω・')
「次回、『ほんなら、三人称で書くときはどんな風に考えられるんだろか?』の巻……恐らく」
※魔法使いのリンクを本文に貼ってたので消しました。すみません。調べものしてて気付きました…





