Vol.32 『我に返ったらお終いだ』
物語を書いていて、ほぼあって当たり前の会話、セリフ。書いている自分がのめり込んでいるときはいいのですが、「はっ」と我に返るときがありませんか?
私、よくあるんですよね…
そうすると脳内ツッコミが半端ない。
「う〜わっ、きっも!」
ってね。作者の私は読者の私にいじめられてしまうのです。すると、確かにこの人物は気持ち悪い、こんな奴いるか?と、自分で作り出した登場人物を冷たい眼差しで消去してしまうのであります。
そのため、他にも理由はあるのですが、セリフは誰が喋ろうが…設定で訛りがある場合は別ですが登場人物全員ほとんど同じ喋り方で書いております。
気分は心の中で。
現実はただの文字。
そんな感じです。
我に返っても、気持ち悪いと思わない。それに人物をセリフで決めないようにしておけば、自然と地の文でなんとかしようと頑張り出すのであります。その努力がまだまだ理想の位置には届いていませんが、作者が登場人物に頼り切らない分、文章の肉付けを上手く表現出来ないか悩みに悩んで、結構、初めて投稿したときより幾分…ほんのちょっとかもですが、出来ているようになった。……かな?
だから、第一話目でズラッと主人公なり登場人物の自己紹介を書いていられない。
もったいないもん!
髪の長さとか、肌の色とか、背丈とか、細々した情報は地の文で肉付けのため――仕草+情報で作ると書きやすいんだもの。風景もそうでしょうし、見た目もそう。セリフ以外、またはセリフで使える。
「花子、髪切っちゃったの? あんなに綺麗だったのに…」
「まあね、色々あってね」
花子は肩口で切り揃えられた一房を取り、へへっと笑ってみせた。
なんてね。
肩口でってことは元の髪の長さはそれ以上ってことになるし、綺麗だったって言わせておけば、花子の自慢の髪だったんじゃないか、大事に伸ばしていたんじゃないか、思い入れがあったんじゃないか、色々ってことは「失恋か?」とか……
はなっから情報を全部、「登場人物の容姿が詳しく書かれてないので想像しにくい」なせっかち読者さんのために書き晒すのではなく、自分のために使う。
黒髪ロングヘアーで、色白で、細い脚にはスキニーがよく似合う。黒目勝ちな瞳に、すっと通った形の良い鼻と下唇がぽってりとした――
読まない。読まないから!
どこまで続くんだよ⁉ な、主人公なり登場人物の情報は、私は正直飛ばして読んでいるので、「あ、始まった始まった」、そんな扱いです。好きな方は好きなんでしょうが。
情報は、地の文になる。
情報は仕草と組わせる地の文である。
それを念頭に置いて書くようにしておりますが、なかなか難しいですよね…そして話が逸れましたね。
でも、セリフを書いて我に返ったとしても、またセリフで元に戻れるのです。
作り込まれた、現実でいないだろう喋り方を書かない分、「あれ?こいつ何を喋りたかったんだっけ?」と側に寄せた地の文の仕草+αによって、続きを書こう、そしたら次はこいつが身に着けた物を出してあんなことさせよう、それであのセリフを言わそう! と、繋げていけるのであります。





