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食器が割れないか、ついでに家が倒壊しないか心配してる

 カタカタ…


 朝からカタカタと食器が鳴っている。

 音の出所を探すと、コロンが作った産まれたての子鹿仕様の不安な棚に乗っている小皿。


 あれは確か…江戸期の物。

 その手前の100均の小皿もカタカタと言っていた。


 カタカタカタ…


「家、倒壊しないか心配」


 コロンは憂いた。




 朝から道路を跨いだ斜め向かいの家を壊している。

 カタカタカタとあちこちから音がして、ついでに家も潰れてしまわないかと心配になる。


 たって家が古い。冷蔵庫は斜めになってて、扉が自動ドアみたいにバーンと開くほど完璧に傾いている。壁と冷蔵庫の隙間を測ったら、上は2.5センチだが、下は5センチの隙間。

 凄い傾き。


 築50年。ボロボロだが、そこに愛おしさを感じる。



 約50年前。

 うちを建てたのは、三井物産の重役だった人だと聞いている。

 今調べたら、現在でも年収2000万の会社だそう。


 なるほど。相当お金持ちだったろうな。

 ならばどうしてこんなごじんまりした家を建てたのだろう。


 都心部ではないけれど東京。腐っても東京。

 うちの周りはみんな大きなおうち。


 世代交代の時期らしく、あちこちで家を壊している。

 素敵な古い家が壊されバーンと更地になった後、今風の大きな家が建つ。

 それには全く興味はない。



 カタカタカタ…



 コロンち、中は総リフォームされてて凄く綺麗。

 賃貸だから壁に画鋲とか刺せないんだけど、違うの。

 刺さんないの。

 壁がめちゃくちゃ硬くてピンが刺さらない。細い針のピンはピンが折れる。

「ぐぎぎぎ…」と、普通の太さのピンをギリギリと力を込めればなんとか刺さる。

 そこで気づいた。


「これほど硬い壁にする必要あ……るな!きっと柱のフリして壁で支えてるんだな!」

 たぶんそうだな。


 潰れないように。硬い壁で支えられた家。



 あと、廊下の一部が盛り上がって歪んでる。

 その歪みを感じるたびに「この下にタケノコ生えて床を押し上げたんだ…」と思う。

 本当はそんな事ないけど、タケノコのせいと思うと微笑ましいので。




 こうして書くと変な家に思われるかもしれないけれど…



 この家が好き。

 だからお願い。潰れないでね。







 おわり。



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