人畜無害!?【ベルク宰相視点】
ここから11話ほどベルク宰相の視点になります。
東の新ダンジョン発見から皇位継承を決める貴族会議までの話です。
お気に召さない方は読み飛ばしてください。
次の章からは主人公のジョージ視点に戻ります。
今年の三月に帝都の東に新ダンジョンが発見されたとの一報があった。
すぐにエクス帝国騎士団に調査を命じる。
次の日に続報が届く。
新ダンジョンは特殊なダンジョンで同時に二人までしか入れないそうだ。
サイファ魔導団団長とゾロン騎士団団長に継続調査を指示して私は執務に戻った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
東の新ダンジョンの調査報告が上がってきた。
何と地下3階にオーガが出現するとの事。
ダンジョンの深層に出没するオーガ。それがそんな低層に現れるダンジョンがあるなんて。さすがに騎士団でも、二人でオーガと連戦はキツい。
これ以上の調査は断念と感じたが、なんと索敵要員の魔導師がオーガを瞬殺して、連戦を可能にしているとのこと。
聞いた瞬間理解ができなかった。
どうして魔導師がオーガを瞬殺できる? それもオーガとの連戦を可能にするとは……。
その魔導師の名前を聞くとエクス帝国魔導団第三隊のジョージ・モンゴリと言われた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ここ数日は、東の新ダンジョンの地下3階での騎士団と魔導団の実力の底上げについて検討している。
そこに驚くべき報告がサイファ魔導団団長から上がってきた。ジョージ・モンゴリが体内魔法の身体能力向上と体外魔法の攻撃魔法を併用ができると。
私はサイファ魔導団団長にジョージ・モンゴリの戦闘能力について確認をする。
「ジョージ・モンゴリは現在25本のファイアアローを精微なコントロールで使いこなします。対人戦では無類の強さを誇るでしょう。また多人数にも対応できます。他を寄せ付けない魔力制御に加え、ダンジョンでのレベルアップにより、スピード、コントロール、パワーと三拍子揃った稀有な魔導師になっております」
そこまでの戦闘能力か!?
「斥候としてもトップレベル。敵の殲滅力も凄いでしょう。ジョージ・モンゴリの戦闘能力は国として抱え込まないといけないものと考えております」
英雄の誕生なのか!?
もしかしたらこの大陸を統一する人物になるかもしれない。
「また、これは一部のエルフの中で言われているのですが魔力制御が優れていると不老に近づくと。ジョージ・モンゴリは私より魔力制御に優れております。既に不老の域に達している可能性があります」
そんな化け物が不老だと!?
ジョージ・モンゴリの性格が悪辣だったなら、暗黒時代に入ってしまうかもしれない。
早めに殺すか?
「サイファ団長。ジョージ・モンゴリの家族構成と性格を教えていただけませんか?」
「家族構成は母親と妹が失踪、父親は学生時代に亡くなっています。現在は天涯孤独ですね。性格は品行方正というより、人畜無害の言葉が合うかと思います」
英雄になれるほどの人物が人畜無害!?
殺すより帝国に取り込むのが最善か。
私はそれからジョージ・モンゴリを調べさせた。
その後、数日頭を悩ませた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
またまた東の新ダンジョンの続報が届けられた。
ジョージ・モンゴリが地下4階で強力な魔力反応を感じたそうだ。ジョージ・モンゴリは実際の魔物を見ていないのに関わらず、地下4階の調査の中止を進言している。地下4階の調査を命じた場合、ジョージ・モンゴリが魔導団を辞める可能性がある事。
緊急に皇帝陛下を入れての会合が開かれた。
地下4階の調査を望んでいるのは皇太子とゾロン騎士団団長。
慎重派は私とサイファ魔導団団長。
皇帝は中立だった。
会合の結果は、結局ジョージ・モンゴリの意向を聞いて決める事になった。
新ダンジョンが見つかってから、事態が急展開で動いている。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
初めてジョージ・モンゴリを見たのはエクス城の会議室だった。
黒い髪色に黒い瞳。少し髪がボサついているが、変わり者が多い魔導団の中では整っている雰囲気だ。
私が調べたジョージ・モンゴリの性格は大人しくて人畜無害だった。しかし椅子に腰掛けているジョージ・モンゴリにはどこか腹が据わっている印象を受ける。
私の発言から会議が始まる。
まずは現状の説明をした。
カイト皇太子の挑発にジョージ・モンゴリが応戦する。結構、辛辣な言葉が出ている。聞いているこちらがヒヤヒヤしてしまう。
ザラス皇帝陛下の仲裁で地下4階の調査は中止となり、地下3階での騎士団と魔導団の実力の底上げをする事になった。
終わりそうな会合に私が待ったをかけた。今日の会合はこれからが本番だ。
「もう一つ考えて欲しい事があります。それはジョージ・モンゴリの処遇についてです。ジョージさんはエルフを超える魔力制御です。そのせいか体内魔法と体外魔法を併用する事ができます。これは身体能力向上をしながら攻撃魔法が使えるという事です。現在は近接戦闘もそつなくこなすようになっています。弱点の無い魔導師です。また類い稀な魔力制御により20本を超えるファイアアローをピンポイントで弱点を狙い撃ちにできます。近接戦闘、遠距離戦闘、多人数との戦闘と穴がありません。また他の追随を許さない魔力ソナーで斥候も得意でしょう」
話しながらジョージさんを見ると何か居心地が悪そうな感じになっている。
褒められ慣れていないのかもしれないな。
「あとこれは確定ではありませんがエルフでは魔力制御が優れているものほど不老になると言われています。もしかしたらジョージさんはエルフ並みの寿命、所謂不老になっている可能性があります。これだけの人材を魔導団第三隊所属というのではジョージさんに我が帝国を見限られる可能性があります」
先程ジョージさんと言い争っていたカイト皇太子が不機嫌そうな声をあげる。
「何が言いたいんだ?」
こいつは頭が悪いのか。これだから侵略戦争推進派は困る。
「私の提案としては、まずは魔導団での地位向上。魔導団第一隊に所属してもらって特別チームのリーダーになってもらいます。業務内容は魔導団と騎士団を東の新ダンジョンの地下3階に連れて行くことです。いつまでも第三隊ってわけにはいかないでしょう」
まだ話はこれからだ。
私はお茶で喉を湿らせた。
「もう一つは陞爵です。ジョージさんは魔導団に入団した事により魔導爵になっております。今後もエクス帝国で力を発揮してもらう為にできれば伯爵、最低でも子爵にと思っています」
予想通りカイト皇太子が怒鳴り出す。
「ベルク宰相、お前は正気か! コイツはもともと平民だぞ! それを歴史あるエクス帝国の伯爵だと! 寝言は寝てから言え!」
これくらいの言葉は想定内だ。
努めて冷静な声で反論する。
「もともと爵位とは功があったものに与えられるものです。古い家系に敬意は払いますが、ジョージさんの能力は伯爵になったとしても足りないくらいです。他の国への抑止力が抜群ですから。ロード王国なら伯爵、あるいは侯爵にするかもしれませんよ。ジョージさんがエクス帝国を見限ってからでは遅いんです。はっきり言いますが、貴方は皇太子としての自覚があるのですか? これだけ有能な人材の気分を害する事ばかり言っておられる。このままでは廃嫡の未来しか見えませんよ」
さすがにここまで言うとザラス皇帝陛下が間に入ってくれた。
結局、ジョージさんはザラス皇帝陛下に忠誠を誓う形で伯爵の陞爵が決まった。
カイト皇太子といろいろあったが、これでジョージさんのエクス帝国への取り込みが最低限できて私はホッとした。
エタらないため、気晴らしにベルク宰相の視点で書いてみたら止まらなくなりましたwww
反省はしているが、後悔はしていない。
もっとショートで入れないとダメですねwww
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