764話
「だからこそ今しかないのだ。頼む」
そしてそんな寿命が残り少ないことに何も言えることはなく、口を噤んでいると、目の前に立っていたオルグスはコウに対して頭を下げながら今しかないと懇願してきたため、少しだけ後退ってしまった。
また背後に立っていたアインや魔物達はオルグスがコウに対して頭を下げながら懇願している姿を目にすると、ざわつき始め困惑した状態となっていたりする。
それはそうだ。魔族達や魔物達のまとめ役となる存在であるオルグスがコウに対して頭を下げてどうにかしてここに残って欲しいとお願いをしているのだから。
「なんだよそれ...頭を下げられてお願いされたら断りづらいだろ...」
そして老人となるオルグスから頭を下げられながらお願いをされたことによってコウもこの場では何だか断りづらく、まるで自身の方が悪者ではないのかといった雰囲気となり、なんとも言えない気持ちになってしまうではないか。
「コウさんはどうしたいんですか~?」
「どうするもなにもそんなことを言われたら...」
そんな状況の中、背後に立っていたライラからどうしたいのかと聞かれるたのだが、本心で言えば勿論、ここから再び外に出て様々な場所を見て回っていきたいというのが本音ではある。
しかしこんな雰囲気になってしまったらこの場ではそんな事は流石に言いづらいものがある。
「はぁ...その力ってにはどんな力で譲渡ってのはどれくらい時間が掛かるものなんだ?」
そのため、コウは深くため息を吐きながら頭の中で整理しつつ、まずはオルグスに後継者としてなるために譲ってくれる力とやらは何なのか?そして譲渡とやらのはどれくらいの時間を要するのか聞いてみることにした。
「それはここに残るということで良いか?」
「まず後継者とやらになるのは後で考えるとして話を聞くだけだって」
「ふむ...力については我の血統魔術や我らが住まう土地を移動させたりも出来るだろう」
「なるほど...アルクから転移させることが出来たのはその力のお陰か...」
「譲渡の時間としてはまずは半分ほど力を渡したとしても馴染むのに半年そして扱いに慣れるのに半年といったところだ」
どうやら力の詳細についてはオルグスの血統魔術を受け継ぐことが出来たり、またこのダンジョンを別の場所へ移動させたりもすることが出来るらしい。
ただそんな力を譲渡してもらうにしても力を受け取って馴染むのに半年程時間が掛かり更には力を扱えるよう慣れるのも半年掛かるようで、約1年はこの魔族領と呼ばれる場所で拘束されることとなってしまうみたいである。
そんな話を聞く限りやはりオルグスのお願いを受け入れたくはなくなってしまうのだが、今のところ自身に残された唯一の身内ではあり、出来れば願いを叶えて上げたいという気持ちも無くはない。
「はぁ...分かった...とりあえず力の譲渡だけ受けるためにここへ残るから他の人達には手を出すなよ?」
「...嫌な選択肢を迫って悪いな。勿論その辺りは守ろうとも」
そのため、コウは自身の本心と最後の血の繋がりを持つオルグスの願いを天秤に掛け、どちらを優先するべきなのかを考えた結果、ここはこの場に残ってオルグスの願いを叶えて方が大事ではあると思い、わざわざ助けに来てくれたライラ達には悪いがこの場に留まった方が良いという結論に達する。
「コウさん...本当に良かったのですか?」
「数十年ここにいる訳でもないし...ここまで来てくれたのになんか皆悪いな」
そしてイザベルからは本当に良かったのかと聞かれるのだが、別に何十年もこの場に留まる訳でもない筈なので、ここは覚悟を決めるしかないだろう。
ただここまでわざわざ助けに来てくれたライラやイザベルそしてエルフィー達には申し訳ないと思いつつ、コウは振り返えると、皆に対して頭を下げていく。
「ん~コウさんが決めたことですからね~」
「キュ!」
「お主が受け取れる力とやらを扱えるようになればアルクから消えたダンジョンも元通りになるんじゃろ?早く扱えるようになるのじゃ」
「んなこたぁになるならタダ働きみてぇじゃねぇか...まぁ良いけどよ」
そんな頭を下げたコウに対して各々の反応はしょうがないといった表情であり、そこまで悪いものではなく理解をしてくれたようで、これはこれで一件落着となったのかもしれない。
「じゃあ早速その力とやらを譲渡してくれ。早い方が良いだろ?」
「ふむ...決断が早いものだな。では我の手を握るが良い」
そして再びその場でオルグスに振り返ると、決心が揺らいでしまう前に力の譲渡を早速出来ないのか?と聞いてみると、目の前に手を差し出されながら握れと言われたため、そのまま握手をするような形で差し出された手を握ることにするのであった...。
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