762話
「ちょっ...なんでオルグス様がここに来たんすか!皆守るように囲むっす!」
まさか魔族の頭であるオルグスこんなところに現れると敵側のアインも思ってもいなかったようで、周りに立っていた防具を身に纏う魔物達に対して指示を出し、守りを固めるかのようにオルグスのことを囲んでいく。
「守りなどは必要ない...さて...コウよ。リーゼがよく使う隠し通路を使って抜け出すとは思わなかったぞ?親と子というものは似るものだな」
「逃げられたくなかったら隠し通路なんて壊しておくべきだったな」
「そう簡単に思い出というものは壊せるものではない」
しかしオルグスは周りを囲んでいた魔物達は邪魔だと言わんばかりに歩きつつ、道を作り出してコウ達の前に再び立つと、やれやれとため息を吐きながら喋り掛けてきた。
それにしてもどうやら母親であるリーゼが隠し通路を使って度々抜け出していた様子であり、今でも覚えているのかオルグスは懐かしそうな表情を浮かべている。
「そんなことよりも...そ奴らが侵入者か?中々に強者もおるな」
そしてオルグスは懐かしそうな表情から一変してころりと変わり、今度はライラ達やエルフィー達に視線を向けると、まるで身体を鉛にさせるかのような重苦しい圧を掛けていく。
そんな重苦しい圧を掛けられたということで、先程までオルグスとコウが会話をしていた際に一瞬だけ緩んでいた空気感がピリッとした空気感へと戻り、いつ仕掛けてもおかしくない緊迫した状況下へと再びなってしまった。
「...あんたがやる気なら俺もあんたと戦うからな?」
そんな緊迫した状況下の中、コウは一歩前に出るともしもこの場で戦いを望むのであれば、自身も覚悟を決めて戦うといった旨を伝えていくことにしたのだが、これは一種の賭けのようなものである。
確かオルグスは自身に対して嫌なことをしてこないと言っていたので、きっと皆の前に立ち塞がれば手出しはしてこない筈だと思っての行動であった。
「はぁ...全く...我儘な孫だことだ...どうせその侵入者達はコウの仲間であろう?」
「そうだが?それを知ってどうするつもりなんだよ」
そしてオルグスはコウが目の前に立ち塞がったためなのか、ライラ達やエルフィー達に向かって圧を掛けていたのをやめ、今度は仲間なのかと問い掛けてきたのだが、問い掛けてきた意図を理解することが出来ず、どうするつもりなのかと聞き返していく。
「交渉でもしようと思うてな」
「交渉...?」
「なに至って簡単なものだ。そ奴らを外へ逃がす代わりにコウはここで過ごせ」
そんなオルグスから返ってきた答えというのはまさかの大切な仲間をダンジョンの外まで見逃す代わりにコウはここで生活しろといった内容であった。
確か監禁されていた際、オルグスから言われていたのは魔族側に付いて人族に対して復讐を手伝えといったものであったのだが、前よりも内容が少し変化し、ここで生活しろというのは一体どういった心境の変化なのだろうか?と疑問に思ってしまう。
「またそれか...俺がここで生活させても復讐は手伝わないし魔族側に付かないぞ」
「ふっ...コウと暫く話をしたせいで毒気を抜かれてな。我はもう復讐なんぞ考えてはおらん」
そしてコウは自身がここで生活したところで何の意味も無いと伝えると、初めて顔を合わせた時には絶対に言わなかったであろう復讐などをするつもりないといった予想外の発言がオルグスの口から飛んできたではないか。
「はぁ...?じゃあ俺がここで生活する意味は何だよ?だったら外に出ても良いだろ」
「なに簡単なことだ。お前を我の後継者とするためだ」
そのため、復讐心が無くなったというのに何故、自身をここにわざわざ縛り付ける必要があるのかと聞いてみると、返ってきた答えというのはこの魔族領の後継者とするためといったものであり、オルグス以外の人物は大きな口を開け、驚きの表情を浮かべることとなるのであった...。
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