745話
さて...散歩中の犬の手綱を引くかのようにロガーを引き連れてようやく古城付近へと到着した訳なのだが、少しだけ時間が掛かってしまったと言えるだろうか。
何故、少しだけ時間が掛かってしまったのかというと、古城へ向かう道中で多くの魔物が目の前に現れたからである。
当たり前だが、目の前に都度現れる様々な魔物達と無駄な戦闘はしたくなかったし、ロガーを引き連れていたということもあって隠れたりしてやり過ごしたため、少しだけ崩落してしまった街の中心部にある古城付近への到着が遅れてしまったのだ。
それにしても古城へ近づくに連れて先程まで目の前に現れていた魔物達が少なくなってきたような気がしないでもないし、歩いている道も魔物が現れない場所になってきたということでなのか、多少なりとも綺麗であり、歩きやすさを感じる。
「そろそろこの拘束を解いてくれや。ここから先は生活区域で他の魔族もいっからこのままだと変な目で見られちまうぞ?」
「...」
「ここまで来たらもう逃げる気もねーよ」
いまいち信用が出来ないが、この先は魔族達が生活しているらしく、もしそれが本当なのであれば、流石に犬の散歩のように氷の鎖で繋いでいるロガーを引き連れて歩くのは不審な目で見られてしまうため、それだけは回避しておきたいところ。
「しょうがないな...絶対に逃げるなよ?」
「ふぃ~...手首がいてぇなぁ...」
ということで、ロガーの手を縛っていた拘束を解除してみると、先程の約束通り、この場から逃げ出すことはなく、少しだけ痕が付いてしまった手首を擦りながらボヤいていた。
そして拘束を解除したというのにボヤいているロガーと共にそのまま古城に向かって進んでいくと、今度は遠目からでは認識出来ていなかったシャボン玉の膜のようなものが見えてきたではないか。
「なんだこれ?」
「これはあれだ。魔物が入ってこねーようにするもんだな」
どうやらシャボン玉の膜のようなものはここから先の魔族達の生活区域へ魔物が入ってこないようにする結界のようなものらしい。
それにしても個人的には魔族と魔物はお互いに仲が良く、協力をし合うような関係性だと思っていたのだが、想像していたものとは全く持って違うようだ。
「ふぅん...魔物と魔族って仲が良いんじゃないのか?」
「んなわけねーだろ...人型の魔物は大体知性があるから魔族に従うがそれ以外はまた別だ」
「そういうものなのか...」
どうやら魔物の中でも人型の魔物は魔族に従うことが多いらしいのだが、それら以外の魔物はあまり魔族に対して従うようなことはしないらしく、寧ろ襲ってきたりすることが多いとのこと。
つまり最初に出会ったサイクロプスの身に付けている物が人と遜色ないくらいの物だったというのは、もしかすると魔族に従っていたからなのかもしれない。
そんなことを考えながらシャボン玉の膜のようなものに触れてみると、ぶにぶにとした感触が手に伝わり、本当に通り過ぎてもよいのかと戸惑ってしまう。
そしてその場で戸惑っていると、ロガーがそのまま進んでいってしまったため、コウもぎゅっと目を瞑りながら同じように通り過ぎていくと、一瞬だけ肌に纏わりつくような感覚がしたが、すぐにその感覚は無くなった。
さて...無事にシャボン玉の膜のようなものを通り過ぎて更に奥へ進んでいくと、ロガーと同じように頭に角が生えている者達がちらほらと歩いているのが見え始めたではないか。
まさかロガーの言う通り、本当にダンジョン内で魔族達が生活を営んでいると思ってもいなかったので、正直なところ驚きを覚えてしまう。
それにしてもそこらを歩いている魔族達は何と言うか人や獣人はたまたエルフやドワーフなどと同じで生活している風景は何ら変わりないと言えるだろうか。
個人的な魔族の印象というのはもっと荒々しく、あちらこちらへ危害を加えようとする者達だけだと思っていたのだが、こんな風景を見てしまった感じ、何だか印象が変わってしまう。
「坊っちゃん!なんでこんなところに!?」
そんなことを思いつつ、コウは魔族達が生活している街中を歩いていたのだが、背後から肩を叩かれながら聞き覚えのある声で喋りかけられたため、振り向いてみると、そこに居たのはまさかの帝国で一度会ったことのあるメイドのビビであった...。
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