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719話

「断る」


「何故だ?」


 そんなオルグスの話を聞いたコウは反射的に断りの返答を返していくと、不思議そうな顔をしながらに何故か?と問いかけが返ってきた。


 ちなみにオルグスと共に魔族領へ一緒に行かない理由としては今の冒険者生活を壊す気にはなれないし、何よりも王都やら帝国やらエルフの住まう土地などに侵攻してきている時点でコウとしては魔族側は信用なり得ないからであった。


 そのため、例え自身の祖父であろうと一緒に付いていく気には残念ながらなったりはしない。


「今までの魔族の行いが信用ならない。というかそもそも何で俺を連れ戻そうとするんだ?」


「我の後継者として育て上げるためだ」


 そして今度はそもそも何故自身を連れ戻そうとするのかと聞いてみると、返って来た答えはコウのことをオルグスの後継者にするためのようだ。


 はて...?後継者とは一体何のことだろうか?


 自身の父であるハイドの家柄はまぁ過去の話を聞く限り、伯爵家と悪くない家系だった気がしなくもないけれど、母方であるリーゼは高貴な魔族やら当時で1番の実力者であった魔族の一人娘というのは聞いていたが、家系に関してはメイドのビビから何も聞いていなかったりする。


「後継者?」


「魔族領を治めるためのな」


 そして後継者?と疑問符をつけながらコウは聞き返してみると、オルグスから魔族領という言葉が出てきたではないか。


 魔族領が何処にあり、どれくらいの規模なのかは知らないが、言い方的にそんじょそこらの魔族とは立場が違うのかもしれない。


「そんな魔王みたいなことを...「昔はそうも呼ばれたこともあるな」

 

 そのため、まるで魔王だなと思いつつ、つい思ったことを口にすると、被せてくるようにオルグスは昔はそう呼ばれていたと、まさかの告白をしてきてコウは目を丸くしてしまう。


 そしてそんなオルグスの口から出てきた告白を耳にしたコウはとある出来事を思い出すこととなった。


「確かダンジョンにあった黒い石碑に触れた時に...」


 それは過去、ダンジョン都市アルクの3階層幻影砂漠にて砂丘の頂上に見たこともない文字を掘られた謎の黒い石碑のようなものに近寄って触れた際に見せられた光景の先にいた魔王と呼ばれる存在のことだ。


 確かその魔王とやらも目の前にいるオルグスの風貌と名が一緒だったこともあり、コウの頭の中で一致し、ようやく喉まで出かかっていたことを思い出すことが出来た。


「ダンジョン?人族などが称しているがそれは違う。あれが我らの魔族領だ」


 そんなコウの呟きにオルグスは反応し、ダンジョンというのは人族などが言っているだけであって実際には魔族達が住まう土地らしい。


 ということはダンジョンが何処かへ消えてしまったのはもしかすると魔族が関わっていたりするのかもしれない。


「何となく理解してきたぞ...というか魔族をあんたが纏めてるなら人族やらエルフやらを攻めてくるなよ」


「人族はリーゼを病に伏せさせ殺した罪がある。そしてエルフは我らを封印していたからな」


 どうやらオルグスは人族に対しては娘であるリーゼを病にさせられた上に殺された恨みを持っているらしく、エルフに対しては封印されていたという事情があるため、攻め込んだとのこと。


 まぁコウ自身も母であるリーゼが間接的に人族に殺されたこともあり、多少なりとも思うところはあったりするため、気持ちは分からなくもない。


「さて...話はこれくらいでいいだろう。ではもう一度聞くが魔族領へ共に来る気は?」


「...悪いがないな」


「交渉決裂か...まぁ良い。いずれこの間と同じように無理矢理にでも迎えに行くから覚えておくと良い」


 そしてオルグスからもう一度魔族領へ共に来ないか?と聞かれたのだが、コウとしてはやはり納得が出来なかったので、首を横に振り、交渉は決裂になることとなった。


 そんなコウの答えを聞いたオルグスは残念そうな表情すらせず、いずれ無理矢理にでも迎えに行くと、一言言い残しながらパチンッ!と親指と中指を使い鳴らした。


 するとコウの視界は再びゆっくりと暗転することとなり、意識は徐々に深い闇の底へ引きずり込まれていくのであった...。

いつも見てくださってありがとうございます!


次回の更新予定日は多分8月15日になりましたのでよろしくお願いします。

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