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697話

 従魔達を広々とした草原に放流してからというもの、屋敷の敷地内よりも更に広々としているためか、伸び伸びと楽しんでいる様子。


 逆に従魔達の主人であるコウ達はというと、用意された椅子に座りながら美味しいお茶とお菓子をつまみつつ、お互いに交流も深まってきたということもあってか、なんだかんだ話は弾んでいたりする。


 そんなこんなで暫く自身達の従魔が自由気ままに遊んでいるのを眺めながらほっこりとしていると、急に青空広がる大空を自由に飛び回っていた従魔は地面へ降り、青々とした草が生える草原を駆け回っていた従魔はピタリと足の動きを止め出すではないか。


 その光景はまるで全ての時間が止まったかのようなものであり、従魔達の異常な行動にどうしたんだ?とコウは疑問を抱きながら首を傾げ出すも他の参加者も同じような行動をしていた。


 そして吹き抜ける風が先程まで心地良かったというに何故か生ぬるいような感覚へと変化し始め、白い雲一つない青空だったというのに何処からともなく流れてきたのか分からない暗雲が空を埋め尽くしていく。


「何だこの嫌な感じは...?」


「何だか嫌な雰囲気ですね〜...」


 そのため、様子を窺っていると、背筋がぞわりとするような感覚に陥り、一体何なのか?分からないがこの場にいるのは危険だという警鐘がコウの頭の中で鳴り響き出す。


 また一部の参加者も何かしら危険を察知したのか、自身の従魔に対して戻って来るようにと、呼び掛けを行い出すも指示に従うような素振りは一切なく、どうしたものかと戸惑っていた。


「フェニ!」


「キュ!」


 とりあえずコウも自身の相棒であるフェニが戻って来るかどうかの確認をするために大きな声で呼びかけてみると、他の従魔達と違って問題なく動くことが出来るのか、こちらへとすぐに戻ってきたため、心の中でホッと安堵した。


 それにしてもフェニは自身の下へ戻ってきたというのに他の従魔達が主人の下へ戻ってこない原因が全くもって分からない。


 自身もフェニが戻ってこないという状況となれば、どうしたら良いのか分からなくなり、不安な気持ちに押し潰されてしまうだろうし、戸惑っている参加者の気持ちも理解は出来る。


 そんな戸惑いが交流会の参加者達に広がる中、目の前に広がる草原の一角に黒い渦のようなものが出来、コウ達はそれが何なのか一瞬で理解すると、すぐさま武器を構え、警戒心が一気に跳ね上がった。


 何故、コウ達の警戒心が一気に跳ね上げたのかというと、黒い渦が移動手段の一つとして扱う魔法なのと、そこから出てくるの筈の者の種族が予測出来ていたからである。


 そして黒い渦の中からぬるりと外に出てきたのは2本の大きな角を生やしたヤギ頭の人物であり、片眼鏡にピシッとした執事の服を身に纏いながら紫色の光をぼんやりと放つ怪しいランタンのようなものを片手に持っていたりする。


「ふむ...ふむふむ...時間通りですね」


 するとヤギ頭の人物は自身のポケットから(おもむ)ろに懐中時計を取り出すと、時間を確認しながらぶつぶつと呟き出す。


「おい...お前は誰なんだ?そしてここへ何をしに来たんだ?」


「やれやれ...唐突になんでしょうか...ってあなたは...」


 とりあえず突然目の前に現れたヤギ頭の人物に対して誰なのか?ということと何をしに来たのか?について手に持ったサンクチュアリを向けながら強めの口調で問いただしてみると、どうやらコウのことを知っている様子であり、牛目を細めた。


 ただコウからしてみれば初対面の相手ということで、何故自身を知っているのか分からないが、他の魔族からも同じような反応をされたことがあるため、もしかすると既に死んでしまった母が有名な魔族だったからなのかもしれない。


「なんだよ?」


「まぁいいでしょう...私は魔族のゴートンと申します。ここへ訪れた理由は王都を潰すためですね」


 するとヤギ頭の人物はコウの質問に対してすんなりと答えてくれるようで、ゴートンと名乗り、ここへ訪れた目的は王都を潰すためと言い出したではないか。


 それにしてもやはりというかコウの予想通り、返ってきた答えは碌なことではなかったので、ここはなんとしてでも止める必要があると言えるだろうか。


 そしてそんなやり取りをしていると、こちら側に立っていた参加者の1人である男がゆっくりと歩き出し、ゴートンの隣へと立つと、にやにやと口元を歪めていた。


「これで良いんだよな?だから俺も仲間に...」


「ご苦労さまです。もうあなたはお役御免でしょうか」


「へっ...?」


 どうやら今回の交流会の参加者に内通者と思われる人物がいたようなのだが、心が込められていなさそうなお礼と共に用済みといったことをゴートンが口にすると、内通者と思われる人物の頭と首が別れを告げ、ごとりと地面へ頭が落ちると、大量の真っ赤な血を噴水の様に吹き出しながらその場にぱたりと身体も倒れ、青々とした草を真紅に染め上げていく。


 そんな突然の状況に参加者達は悲鳴を上げながらその場にへたり込む者や人の死に慣れている冒険者などは冷静に自身の武器を構え出すのだが、魔族ということを知ってか、手をふるふると震えさせている者も多い。


「お前1人で王都が潰せるとでも...?」


「数はこっちのが有利です~」


「1人?いいえ私だけではありませんよ?」


 しかし人数的にはこちらの方が有利ではあることには変わりなく、王都にも実力を持った者達が控えているため、強気な態度を示すと、ゴートンは鼻で笑いながら片手に持っていた紫色の光をぼんやりと放つ怪しいランタンのようなものをゆらりゆらりと左右に揺らす。


 すると先程まで呼び掛けても一切反応せず、動くことがなかった従魔達がコウ達に目掛けて赤い目を光らせながら牙を剥き、襲い掛かってくるのであった...。

いつも見てくださってありがとうございます!


次回の更新予定日は多分6月5日になると思いますのでよろしくお願いします。

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