693話
「えっ...僕の負け...?」
そしてコウから首に槍の先端を突き付けられたことによって自身があっさりと敗北したことが信じられない様子なのか、口を開けながらポカンとした表情で尻餅をついていた。
まぁ新人冒険者がBランク冒険者に勝てる筈もなく、敗北してしまうのは当たり前のことなのだが、見知らぬ少年からしてみれば、自身と同じ年齢に近しい相手に圧倒的な差を付けられての敗北だったため、理解が追いついていないのだろう。
「あー大丈夫か?色々と騙して悪かったな」
「え...どういうことですか?」
ということで、コウはそろそろ誤解を解くことにし、尻餅をついている見知らぬ少年に対して手を差し伸べながら謝罪を行うと、何故自身が謝られているのか分からず、更に困惑した状態となっていく。
「えっーと...あったあった。俺はコウ。Bランク冒険者でルビィ達とは新人の引率で出会っただけの知り合いだ」
「Bランク冒険者...?」
そんな何も知らない状態の見知らぬ少年に対してコウは自身が持つギルドカードを収納の指輪から取り出すと、誤解を解く様に見せながら改めて自己紹介していくことにした。
そしてコウのギルドカードを見た見知らぬ少年は何度も見直すかの様に両手で目をごしごしと擦り、自身よりも圧倒的に格上の相手ということを知ってから徐々に表情が変化し、顔が青ざめ始めた。
まぁ見知らぬ少年の表情から察するに自身よりも高ランクの冒険者に対して失礼な言動や態度をとっていたのはもしかすると不味いのでは?ということを心の中で思っているのが何となく読み取れる。
「す...すみませんでしたぁ!」
「いや誤解を解かなかった俺が悪いだけだから気にしないでくれ」
「本当ですか...?実は怒っていたり...?」
「本当だっての...じゃなきゃこんなこと言わないだろ?」
「確かに...」
すると突然、見知らぬ少年は大きな声で謝りながら頭を下げて来た訳なのだが、そもそもコウが最初に誤解を解いておけば良かった話だったため、謝る必要もないし、別に失礼な態度は自身もよくとってしまうことが多々あるので、指摘出来るようなものでもない。
そのため、自身は別に気にしてないといった旨を伝えるてみると、疑い深い性格なのかおずおずと本当なのかと聞いてきたので、コウはため息を吐きながら首を横に振りつつ否定すると、とりあえずは納得をしてくれた様子。
「ほれ。これでも食って元気出せって」
「えっ...ありがとうございます?」
とりあえず見知らぬ少年からの誤解も無事に解けたということで、コウは収納の指輪の中から先ほど露店で買った串焼きを取り出し、そのまま手渡すと不思議そうにしながらお礼を言ってきた。
「ちょっといいか?」
そしてそんなやりとりを見知らぬ少年としていると、背後から渋めの声で話しかけられたため、何だろうとも思いつつ、コウはくるりと反転して振り返ってみたら、そこには片手に斧を持った屈強な男性冒険者が立っていた。
「ん?何か用か?」
「さっきの模擬戦を見てな...俺とも手合わせをして欲しい」
「あー...なるほどな。それくらいなら別にいいけど」
そのため、何の用かと聞いてみると、どうやら先ほどの模擬戦を傍で見ていたらしく、片手に斧を持った屈強な男性冒険者はコウがBランク冒険者ということを知り、是非とも手合わせしたいとのことであった。
まぁまだ家へ帰るには時間的に早いし、別に断る理由もないので、少しくらいであれば付き合うのに問題はないと答えると、周りにいた冒険者達が聞き耳を立てていたようで、話していた男性冒険者の後ろへ自分も相手して欲しいといったような雰囲気を醸し出しつつ、ぞろぞろと列を作るかのように並び始めたではないか。
またその中には何故かトゥリッタまでもが並んでおり、コウとの模擬戦は出会った時以来ということもあってか、楽しみにしている様子だったりする。
「おいおい...」
「じゃあよろしく頼む」
そんな突然の状況にコウは目を丸くするのだが、斧を片手に持つ男性の冒険者は関係なさそうに早速始めようと言わんばかりに武器を構え出す。
「あーもう...分かった分かった...。とりあえず並んでる奴らだけだからな!」
そのため、コウは諦めるかのように列を成した冒険者達に向かって大きな声を掛けつつ、手に持っていた槍を構えると、何本勝負になるか分からない模擬戦が始まることとなり、その模擬戦については日が暮れる時間帯まで続くのであった...。
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