638話
「ようやく見つけたっす〜さぁ帰るっすよ〜」
がらがらと崩れ落ちる城壁を背後にアインはこちらに向かって声を掛けながら近づいてくるが、どうやらコウがいなくなったことに気づき、追いかけてきたみたいである。
それにしてもすぐにあの小細工がバレてしまうとコウは思っていたのだが、流石に追いつかれたりするのには時間が掛かる予定だったので、少し予想外ではあった。
まぁあの2階の部屋からはこの街が小さく見えるので、アインはコウがここに立ち寄ることを予想して追ってきたのかもしれない。
ただこの街に立ち寄ったのは悪手だったと言えるのだろうが、今更後悔したところで時すでに遅し。
とはいえ、唯一救いがあることといえば、もう1人の魔族であるレヴィーエルがいないことであり、もしもこの場にアインと共に居たとしたら今よりも更に絶望的な状況となっていただろうか。
「ん?コウの保護者か?」
そして隣に立っているドールはというと、今の状況がいまいち掴めていないようで、アインのことを何処からか追いかけてきた保護者だと勘違いをしてしまっている様子。
まぁ詳しい事情を話していないのだから何も知らないのは当たり前といえば当たり前なので、ここは手短にコウが抱えている事情を説明した方が良いのかもしれない。
「いやあれは魔族...」
「おぉあれが魔族か...初めて見るな。で...なんで魔族にコウは追われてるんだ?」
「それが...」
ということで、コウは先程説明しようとしていた目の前のアインが魔族ということと、自身が魔族に捕まったのだが、何とか抜け出して来たことをドールへ手短にそして簡潔に伝えていく。
「なるほど...もしかするとこの街が崩壊させた魔族かもしれんな。ここは先輩の俺が何とかしてやろう」
「何とかするって...相手は魔族だぞ?」
「なぁに問題ないさ。コウはゆっくりとメークタリアへ向かうといい」
そして話を終えると、ある程度の事情を把握をしたドールが一歩前に出ながら目の前にいる魔族のアインを何とかするからメークタリアまでゆっくり向かえば良いと言われた。
「逃すわけないっすよ!レヴィーエルさんに怒られるっすから!」
そんなコウ達のやりとりを見たアインは逃さないと言いながら片足で地面を強く踏みしめると、まるで地面から湧き水かのように大量の水が作り出されていく。
そしてその作り出された大量の水は建物だったであろう瓦礫や街中に転がっている兵士達の亡骸を飲み込みつつ、こちらに向かって津波のように押し寄せてきた。
このままでは瓦礫などと同じように津波に飲み込まれてしまうと思ったコウは押し寄せてくる津波を何とかするため、前に立とうとすると、ドーンは腰に添えていた剣を引き抜き、押し寄せる津波に向かって一閃を振るう。
すると壁のように押し寄せてきていた大きな津波が全て吹き飛び、アインの背後にある崩壊した城壁も同じように吹き飛んでいき、コウがここまで歩いてきた森の木々が顔を覗かせていた。
それにしても先程、ドールが振った剣の一閃は明らかにそこらの冒険者が出来るような一撃ではないため、コウは目を丸くしながら驚いてしまうこととなる。
「何なんすかあんたは!」
「俺か?俺はアルトマード王国のSランク冒険者ドールだ」
そして自身が作り出した大きな津波が吹き飛ばされたため、コウと同じように驚きの表情を浮かべていたアインはドールに対して誰なのかと問うと、まさかのエルフィーと同じアルトマード王国に2人しかいないと言われているSランク冒険者であった...。
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