627話
「こんなところにいるのか?」
「変わってるよね。祭典の時だけこんなところで店を開くんだよね」
魔塔から出たコウ達がベンに連れられて向かった先はメークタリアの街の中心部から少し離れた区画で、そこは祭典だというのに店などが開いておらず静まり返っており、あまり観光する人々が訪れないような場所であった。
「えーっと...確かこの辺に...あったあった」
そんなベンは周りを見渡しながら何かを探すような仕草をし、目的の何かを見つけたのか店先に何も置いていたりしていないボロボロの屋根を持つお店に近づいていく。
そしてそのままベンはボロボロの屋根の小さなお店の中へ入っていくため、コウ達も同じように入っていくと、そこは外観から想像が出来ないような広々とした空間となっており、使用用途が分からない様々な魔道具が棚の上に並べられているではないか。
「なんだこりゃ...」
「外から見れば狭かったと思うんですけど〜...」
「空間魔法の一種でしょうか...?」
「キュ?」
そのため、コウ達は驚きながらも店の中を興味津々で眺めていたが、ベンはカウンターの前に立つと、呼び鈴を何度か横に振ってちりんちりんと鳴らし出す。
するとカウンターの奥からぬっと魔道具職人と思われる人物が姿を現したのだが、その人物は成人男性ほどの大きさの二足歩行をするずんぐりむっくりとした三毛猫であった。
それにしてもまさか魔道具職人が獣人だと思ってもいなかったため、コウ達は目を丸くしながら驚きの表情を浮かべてしまう。
「ベンじゃにゃいか。にゃにしに来たにゃ?」
「君に会ってみたいって人達がいてね」
「そうにゃのか?誰にゃ...ってハイドの息子じゃにゃいか」
そしてベンから紹介されるように話されると、魔道具職人と思われる猫がこちらに視線を向けてきたのだが、コウのことを初めから知っていたのか、まさかの父であるハイドの名前を出されることとなり、更に驚くこととなる。
「えっ...俺のことを知ってる?というかハイドのことも知ってるのか?」
「知ってるもにゃにも友人だし君が眠ってる時に自慢されたにゃ」
「眠ってるって...もしかしてあの場所のことも知ってるのか?」
「勿論知ってるにゃ。それにあの家を作ったのは僕だにゃ」
どうやらハイドとは友人関係のようで、地下室にある培養槽でコウが眠っていた時のことを詳しく知っているらしく、またあの隠れ家を設計し、建てたのも目の前の獣人とのこと。
それにしてもあの場所に隠れ家のような建物をいったいどうやって建てたのかは分からないが、それが事実であるならば、目の前の獣人はかなりの技術を持ち合わせていることとなるだろうか。
「ちなみにハイドは元気かにゃ?」
「あー...実はハイド...じゃなくて父さんは寿命で亡くなってるんだ」
「にゃ!?それは残念だにゃ...」
そしてハイドは元気なのかと聞かれたため、コウは実は死んでいる旨を伝えると、今度は目の前の獣人が驚きながらも少し寂しそうにしていた。
「まぁ庭の隅に墓を作ったからいつか墓参りでもしてくれ」
「絶対に行くにゃ。まぁ寿命ならしょうがにゃいけど寂しいものだにゃ」
そんな少し寂しいそうにしている獣人に庭の隅にハイドの墓を作ったため、いつか墓参りでもして欲しいと伝えると、絶対に行くと約束してくれたので、これで死んでしまったハイドもきっとあの世で喜んでくれることだろう。
「そういえば自己紹介がまだだったにゃ。僕の名前はロジーって言うにゃ」
「俺はコウで冒険者をやってる。よろしくな」
「私はライラと言います〜コウさんとは一緒のパーティを組んでます〜」
「同じく私も冒険者のイザベルと申します。ロジーさんよろしくお願いします」
「こちらこそ宜しくにゃ!それにしてもコウが身に付けてる魔道具をちょっと見てもいいかにゃ?」
「ん...あぁ良いけどどれを見せれば良いんだ?」
とりあえずお互いに自己紹介も終えたということで、コウは棚に置いてある魔道具に目を向けようとすると、ロジーから身に付けている魔道具を見せて欲しいと言われたため、どの魔道具を見せれば良いのか聞き返すのであった...。
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次回の更新予定日は多分11月14日になりますのでよろしくお願いします。




