300話
部屋内に取り付けられていたであろう警報機器が暫くの間、小煩く鳴り響いていたが、突然ことが切れるかのように途中でピタリと止まってしまった。
「一体何の警報だったんだ?」
「長いこと勤めているけど聞いたことないね。一旦周りを見つつ下の階に行ってみようか」
どうやらベンも聞いたことの無い警報だった様で、一体何の警報だったのか分からないらしい。
ただ何かしらの問題がこの魔塔内で起こったというのは分かるが、今いる自身達の階層ではないのか周囲の確認は必要だろうか。
とりあえず周囲の確認をしながら、コウ達はベンと共に一番下の階層へ降りようと自動昇降機まで向かい、壁に取り付けられたボタンを押すも反応せず、また自動昇降機も一切動く気配はないようだ。
「もしかして降りれない?」
「んーみたいだね。これは魔塔の魔力供給が足りないのかもしれないのかなぁ」
この魔塔では自動昇降機などの魔道具は基本的に魔塔に蓄えられている魔力を使用して魔道具を使えるようにしているらしい。
ベンの予想としては、もしかしたら実験で大規模な魔道具を使用するために魔塔の蓄えてあった魔力を使用してしまい結果として他の部分の魔道具へ供給が足りなくなったのではということであった。
「じゃあどうするんだ?当分このままなのか?」
「うーん...すぐに復旧するとは思うけど...まぁ僕の予想も違うかもしれないし」
流石にあくまで予想ということであって一番下の階層に行かなければ状況として判断できないということで、歯切れの悪い返事がベンから返ってきてしまう。
まぁそこまで今からにでも急いでこの魔塔から出たいというわけでもないし、まだ夜まで時間はあるので問題はないのだが、ずっとこのままという訳にもいかないだろう。
「おーい!」
「うん?誰の声だ?」
そんなこんなで、このまま魔塔の魔力が復旧するまで待つかどうかを自動昇降機の前で話していると、何処からかコウ達を呼ぶような声が後ろから聞こえてきた。
「お前さんら降りれないなら下に降ろしてやろうかー!?」
振り返るとそこには先程まで気球に乗って作業をしていた研究者達からの声であり、どうやら下の階層に降りれないコウ達を見かねて有難いことに声を掛けてくれたようだ。
「でもあれって空を飛ぶのが出来ないんだろ?」
「天井からロープで吊るしてるだけだから問題無さそうだけどね」
「じゃあ乗せてってもらいましょ~」
ベンの言う通り気球をわざわざ飛ばさなくとも天井に気球を吊るしている長く、そして太い強度の高そうなロープを伸ばせば、なんとか下に降りれそうではある。
一応、何かあったのか下の階層にいる研究者たちに確認したいため、コウ達は気球に乗せてもらうことをお願いすると、気球に乗っている研究者がこちら側に固定しているロープを引っ張りながら気球を寄せてきてくれた。
「乗りな!」
「うぅ~狭いです~」
「これくらい我慢しろって...」
寄せてきた気球にコウ達は乗り込むと、まるで満員電車のように狭くなってしまうがそこは我慢しつつ、ゆっくりと強度の高いロープを伸ばしながら下の階層へと降りていく。
見知らぬ研究者のおじさんとライラの間に割って入ると半分ほど柔らかい感触が身を包み、女性特有の香水の匂いがふわりと香る。
気を散らすため下の階層を覗くと魔塔内の魔力を復旧させようと忙しそうにしている者や上から降りてくる気球を気にしてか、多くの魔道具を気球に押しつぶされてしまわないよう必死に動かしている者もいたりした。
そして下の階層に到着した気球から全員が降りると同時に他の研究者達が蛍光灯に集まる虫の如く、ベンを囲むように集まってくる。
「もしかしてベンって実は偉い人なのかもな」
「どうなんでしょうかね~?18階に研究室を構えてるなら偉いのかもですね~」
とりあえずベンと研究者の話を盗み聞いてみると、どうやら先程の警報については複数の大規模な魔道具を使用するために魔塔内の魔力を使ったのだが、魔力消費が大きかったらしく、魔塔の魔力設備の一部が壊れてしまったようだ。
壊れた部分については今現在、復旧途中ではあるらしいが、復旧に必要な魔石の数が足りないため、直すことは容易では無いという話を耳に挟み、今手持ちにある魔石を譲れば、この魔塔へ恩を売ることが出来るのではないか?ということを思いつくのであった...。
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