297話
青々とした大空からフェニがお腹を空かせながらようやく戻って来たということで、コウ達一行は魔導国メークタリアの中心部に建てられた天高く聳え立つ魔塔に向けて、研究者として働いているというベンが乗ってきた馬車で向かっていた。
御者として堅苦しいメイドの格好をしたミリーが手慣れた手付きで馬を鞭で叩きながら馬車を運転しているが、目元が嬉しそうにしているのは何故だろうか...?
とはいえ、そのことについて聞くのは何だか良くないという第六感が働いたため、あえて口にすることはなかった。
「おぉ!食べ物が温かい状態で保たれているのは素晴らしい魔道具だ!」
「魔道具は便利だよな。」
「それはそうさ!魔道具は人々の生活を豊かにするものだからね!」
馬車内では昼頃ということもあって、皆が腹を空かせており、コウが収納の指輪の中から昼食として今まで多くの出店で買って溜め込んできた料理を取り出し、振る舞うとベンは食事そっちのけで魔道具を観察してくる。
確かにベンの言う通り、魔道具は現代の電子機器と同様、生活に欠かせない程の便利なものとなっているだろう。
コウだって収納の指輪はかなり重宝しているし、何だったら外套やトイレの魔道具なども既に手放すことが出来ないレベルで頼っているのだから。
馬車で揺られ、お互いに会話を楽しみつつ食事をしていると魔導国メークタリアの街並みが見えてきており、馬車は城門に向けてそのまま進んでいく。
最初は一般入口から入ると思っていたのだが、この馬車は何故かBランク以上の冒険者又は貴族などが通ることが出来る特別入口へと向かっていたのだ。
「俺達はBランク冒険者だからそのまま入れるけどベン達は入れるのか?」
「あぁその点は問題ないよ。魔塔で働いていたら入れるようにしてるんだ」
「へぇ...研究者は優遇されてるんだな」
「まぁ色々と優遇しないと優秀な人は集まらないしね」
どうやらこの魔導国メークタリアにある魔塔で働いている研究者達はかなり優遇されているらしく、城門の出入りや食事...はたまた住居など多くの面で手厚く支援を受けているとのこと。
まぁ実際のところそうでもしないと中々に魔道具を研究している者は集まらないようで、常に人材不足で悩まされているとベンは眉間を手で抑えて頭痛そうにしていた。
そんな苦労話を聞きつつ、中心部に向かって活気溢れる街中を進んでいき、ようやく街のシンボルとして建てられている魔塔へと到着する。
「わぁ~相変わらず高い塔ですね~!」
「キューイ!」
やはりというか実際に魔塔を間近で見てみるとかなり大きく建てられており、現代に建てられている建物と比べると通天閣と同じぐらいだろうか?
ただ魔塔を正面からどこを見ても中に入るような入口は見当たらず、頭の上にクエスチョンマークが浮かび上がる。
「なぁこれってどうやって中に入るんだ?」
「自己紹介の時に言ったじゃないか...入るために魔道具がいるって...」
「あれは本当だったんだな」
あぁ確かに最初であった時にそんなことをベンは言っていたが、まさか本当に屋内に入るだけのための魔道具が必要だろうとは思っていなかった。
まぁ魔道具だけでしか屋内に入れないようにすれば、中に上手いこと侵入することは出来ないだろうし、悪さも出来ないと考えれば防犯対策としては中々に良いものではあるのかもしれない。
「さぁコウ君達はこれを付けて欲しい」
「いいけど何なんだこれ?」
「付けてこっちに来れば分かるよ」
ベンから手渡されたのは銀色で細かな装飾が施された腕輪であり、中心部分には深い紫色ではないがそれなりに紫色の濃い魔石が埋め込まれている。
とりあえず付けてみれば分かるということなので実際、腕に付けて目の前に建っている魔塔へ近づいていくと、正面一部がぐにゃりと粘土のように曲がり始め、突然入り口が作り出された。
作り出された入口へ躊躇なく、一歩を踏み出したベンとミリーは魔塔の中へと入っていき、途中で立ち止まると、コウ達に向かって振り返る。
「ようこそ!大陸随一と呼ばれる頭脳へ!歓迎するよコウ君達!」
そしてベンとミリーは我が家へ迎え入れるかのように深くお辞儀をするので、コウ達も魔塔の中へ一歩踏み出してみると、そこは中央が吹き抜けとなった作りとなっており、至る所には見たこともない魔道具が設置されている。
またそんな様々な魔道具が設置されている場所では、魔法使いのようなローブを羽織った多くの人々が忙しなく動き回っているのであった...。
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