290話
水面から顔を出し、馬車と並走している魔物達からまるで消防車の放水かのように大量の水がこちらに向かって一直線に飛んでくる。
「さて...仕事でもするか。ライラとフェニは座ってのんびりしてると良いぞ」
「お~じゃあお言葉に甘えてお願いします~」
「キュイッ!」
コウは窓から身を乗り出して走っている馬車から落ちないように上手いこと屋根の上に乗ると、自身の周りに幾つものクルクルと回る水球を作り出した。
「よし...じゃあこっちも放水開始だな」
そして飛んでくる大量の水に向かって、コウも水球から大量の水を放水するかのように擊ち出して対抗していく。
お互いの水の放水同士がぶつかり合うと、その場で一瞬だけ膠着状態になったが、負けじとコウは水球に魔力を込めていくと徐々に押していった。
とはいえ相手の魔物達もこれでは押し負けてしまうと思ったのか、大きな鳴き声を発すると、追加として馬の頭が水面から次々と顔を出す。
「おいおい。増えたんだが...」
そして追加で増えた馬の顔をした水棲の魔物達は仲間の危機を察したのか、コウ達が乗っている馬車に目掛けて次々と水球を撃ち込んでくる。
そんな水球に対してコウも同じように水球を作っては撃ち出し、相手が撃ち出してきた水球へとぶつけて上手いこと相殺していく。
「というか何で一々ちょっかいをあの魔物達は掛けてくるんだ?」
それにしても何故、あの魔物達は襲いかかってきたのだろうか?こちら側から何か危害を加えた訳でもないし、理由がわからない。
まぁ魔物の行動理由など考えても仕方ないので、とりあえず倒すか追い返すかしないといけないのだ。
ただし相手は水棲の魔物である。
そんな普段から水の中に住んでいる魔物に対してコウが最も得意としている水魔法では流石に有効打にはならない筈であり、どうやって倒すか、追い返したりするのかが問題だ。
大量の水を作り出して押し流しても良いのだが、この先何が起こるのか分からないので、無駄な魔力消費は抑えたいところではある。
「むぅ...あぁそうだ。一旦凍らせてみるか」
馬車に並走してくるならば、これ以上ついて来させないようにすれば良い。
例えばあの水棲の魔物達の進む方向である前方を凍らせてしまえば、障害物として出来た氷があるため、馬車に並走してくるのは難しい筈である。
ということで水棲の魔物達からこちらに向かって放ってくる放水や水球を器用にいなしつつ、コウは湖の一部を凍らせるための下準備として水棲の魔物達が進行するであろう方向にも水をばら撒いていく。
「そろそろかな...?凍れ!」
そんな攻防を繰り返し、ある程度湖の水面に自身が作り出した水を撒き終わるとコウは凍れと言い放ち、水棲の魔物達が進むであろう進行方向を一気に凍らしていく。
「これでどうだ?」
湖の水面が突然、凍り始めたことによって馬車と同じ方向へ進んでいた水棲の魔物達は水面に張られた氷に頭をぶつけたり、迂回しようと別の方向へ移動したり様々であった。
「よしよし。これでもう追って来れない筈...ん?」
これでもう水棲の魔物達は馬車に並走して追って来れないであろうと思っていたが、一頭だけバキバキと水面に張られた氷を壊しながら、馬車に並走してきている気概のある者がいた。
水棲の魔物達の中では一回りも二回りも大きく、頭に付いているヒレは硬化しているのか、容易くコウの作り出した氷を破壊しており、恐らく群れの中で1番偉いリーダー的な者だと思われる。
そしてそんな群れのリーダーがコウの作り出した水面の氷を破壊したことにより、その後ろを追うようについてくる他の水棲の魔物達。
とはいえコウが作り出した氷はそれなりに進行の妨害として役に立っているようで、馬車に追いつきそうな速度で泳いではいなさそうである。
「コウさん!もう少しで湖を抜けます!」
ルーカスの言葉でコウは馬車の正面を見ると、確かに湖の終りが見え始めているため、この湖から近い道を通り抜けてさえしてしまえば、あの水棲の魔物達も追撃してくることはないだろう。
そのため、コウはなるべく水棲の魔物達の進行を妨害するために水を湖に向かって放水をしては凍らせを繰り返すこととなる。
そしてなんとか湖から近い道をコウ達一行は通り抜けると、水棲の魔物達は湖から出れないのか、湖の岸側からこちらを見ているだけであり、また一部の者達は諦めたのか蜘蛛の子を散らすかのように別の方向へと泳いでいく
「ふー...終わった」
コウもとりあえず水棲の魔物達がこれ以上追ってこず、問題が解決できたことに一安心し、雨風で濡れて冷えた身体を温めるために馬車の中へと戻っていくのであった...。
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