283話
コウ達が冒険者ギルドに到着し、中に入ると受付には暇そうにしているサーラがおり、入ってきたコウ達に気がついたようである。
「コウさんじゃないですか。また私を虐めに来たわけじゃないんですよね?」
「さっきぶりだな。そんなつもりはないが...」
「むぅ~本当ですかねー?」
どうやら先程、弄られたこと対してまだ根に持っているのかコウの言葉に疑いの眼差しを向けてくる。
しかしそんな目で見られると心の底から沸々と弄りたくなる衝動が湧いてくるが、話がややこしくなりそうなのでここは悪戯心をぐっと堪え、やめておくことにした。
「まぁいいです。で...ご要件はなんですか?」
「あぁそのことなんだけど...今日の夜にとある店で夕食を食べるんだが一緒にどうだ?」
「へっ?今日の夜ですか?勿論良いですけど...もしかして奢りですか?」
まさか夕食の誘いだとは思っていなかったようだが、コウからのお誘いということで、サーラの目つきが鋭くなると一瞬だけキラリと光った気がする。
むぅ...確かに女性を夕食に誘っているということは、お金を出さないといけないのかもしれない。
今思えば魔食堂の料理の値段はいくらなのか知らないので、リクトンに聞いておけば1人分の支払いの目安を出せたので、少しだけ失敗である。
とはいえ料理の値段などはたかが知れているだろうし、ここは日頃お世話になっているお礼ということで奢るのもやぶさかではない。
「まぁいいけどさ」
「おっ!流石Bランクの冒険者様は違いますね!もしよかったらミラも誘っていいですか!?」
コウが今回の食事に関して奢ってもいいと認めると、調子が良いサーラはへりくだるかのような態度で更に同期であるミラも誘っていいかと聞かれる。
「もう好きにしてくれ」
「やったー!またミラに話しておきますね!」
投げやりに返事を返すも、今思えばこうやって芋づる式の方法で人を誘っていくとなると、もしかしたらコウが支払うということが独り歩きしてしまって人数がどんどんと増えていき、多くお金を支払う羽目になるのではないだろうか?
とすると人数を考えずに何となくで知り合いを魔食堂へ誘っているのは色々とまずいかもしれない。
「おう。コウじゃねぇか」
そんなことを考えていると後ろから聞き慣れたおっさんの野太い声が聞こえ、振り向くとそこにはギルドマスターであるジールが酒瓶を片手に立っていた。
「なんだジールさんか」
「なんだとは失礼だな。俺は一応ギルドマスターなんだぞ!」
いやまぁ冒険者ギルドのギルドマスターで偉い人物だというのは分かっているが、片手に酒瓶を持ってアルコールの臭いを周りに振りまいている時点で何とも言えない。
「ふぃ〜...何の話をしてるんだ?」
「重っ!あと酒臭っ!」
「男なんだからこまけぇことは気にすんじゃねぇ!」
ジールはコウの方に手を回し、伸し掛かるかのように全体重を乗せてくるとアルコールの臭いが増し、そのことに対してつい余計な一言が口からぽろりと漏れてしまう。
圧倒的なダル絡みであり、完全にただの酒に酔っ払った親戚のおじさんである。
ジールは何を言われても気にしていない様子であるが、コウの頭の中でとあることを思いついた。
それは今日の夜に魔食堂で集まるという誘いにジールも一緒に誘って、最終的な支払いをすべて任せるということだった。
幸いにもジールは既に出来上がっている状態であるため、魔食堂で追加として酒を適当に飲ませ、更に酔わせて言いくるめてしまえばいいだろう。
そうと決まれば財布...ではなく酒に酔っ払ったジールを誘ってみることにした。
「今日の夜とある店で一緒にご飯を食べる人を探してるだけどジールさんも来るか?」
「俺は問題ねぇ!まさかコウから食事に誘われるとは思ってなかったぞ!」
食事を誘われたジールは嬉しそうに笑顔を浮かべ、嬉し涙をゴシゴシと腕で拭っていたりしていたので、若干罪悪感は感じるがこれも余計な出費を防ぐためなのだ。
まぁ実際はギルドマスターなのだからそれなりにお金は持っているはずだろうし、ここはやはり大人として体裁を保つために支払いをしてくれるだろう。
とりあえず酔っ払ったジールの対応は冒険者ギルドの職員達であるサーラ達に任せつつ、他に今から誘えそうな人はいないか周りを見渡すも誰も見知った顔の冒険者はいない。
「そういえば解体倉庫の人達も誘いますか~?」
「確かにそうだな。レグルのおっさんもお世話になってるし誘ってみるか」
ライラの言う通り、大量の魔物を丸投げしているので、日頃のお礼として解体倉庫の人達も誘うのはありかもしれない。
また同期であるジャン達やAランク冒険者であるマルクなど見知った顔の者達が戻ってくるまでの時間つぶしにもなるだろう。
まぁすれ違いになってしまう可能性もあるがそれはそれでしょうが無い。
ということでコウはサーラへ今日夜に食事をする魔食堂の場所を詳しく説明した後、冒険者ギルドから出て隣にある解体倉庫へと向かうのであった...。
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