278話
「じゃあ何かあったらすぐにあがってきてくれ」
「無理はだめですよ〜」
「ゴッ!」「キュイ!」
フェニとゴーレムは元気良く返事を返し、真っ暗な井戸の中へと入っていくのを見送ったコウは本当に大丈夫なのか?と少し心配しながら井戸の中をライラと一緒に覗き込む。
まぁ覗き込んだとしても井戸内は真っ暗であるためか既にフェニとゴーレムの姿は見えないので、あとは彼らに任せるしかない。
ただ時々、フェニとゴーレムの仲良さげな声が井戸内で反響しているので、聞こえるうちは安心していいだろうか。
そして彼らが戻ってくるまでの時間をコウ達は有効活用するため、時々近くを通り過ぎる村人と世間話をしながら、ここ最近の井戸の調子を聞き込みして情報を得ようとするも、残念なことに良さげな情報は得られることはできなかった。
暫くすると井戸の底からフェニとゴーレムの反響する声が近付いてくるので、井戸に近づくと中から飛び出して井戸の縁に降り立つ。
フェニは濡れたりしていないが、ゴーレムは井戸の底まで潜って水が減少している原因を探っていたためか全身がずぶ濡れである。
今思えば飲料水や生活水として使用している水の中に、クルツ村内を巡回していたゴーレムが入るのは衛生的にあまりよろしくなかったのではないだろうか。
まぁコウが水魔法で作り出した水槽で洗浄され、ゴーレムは綺麗になっている筈だし、毒を入れているわけでもないが抵抗感があり、このことは誰にも言わないことにした。
「どうだった?何かあったか?」
「ゴォー...」
井戸の底を隅々まで調べたであろうゴーレムに聞いてみるも、原因になるようなものが見つからず、問題は分からなかったのか首を横に振って残念そうに項垂れる。
「ご苦労さん。まぁ何も見つからないなら別の問題なんだろうな」
「そうですよ~ご苦労さまです~」
とはいえ別の問題と言ってもさっぱり分からないし、考えても思いつかないので、とりあえずは働いたフェニとゴーレムに労いの言葉をかける。
しかしこんな時にこそ水の精霊であるアクエールにこの問題を解決できないかどうか聞くことができればなぁと思いながら精霊玉を取り出し、水のようなものが渦巻く精霊玉を眺める。
「やばっ!」
「ゴッ!」
そして、つい持っていた精霊玉をコウは手から滑らせてしまい、そのまま井戸へと真っ逆さまに落としてしまった。
それを見ていたゴーレムは井戸の底へ落ちていく精霊玉を追うように井戸の縁から井戸に向かって飛び込んでいき、主人の手から離れた精霊玉を上手くキャッチすると、何に反応したのかわからないが、全身を青く光り輝かせながら一緒に落下していく。
「フェニ!」
「キュイ!」
青く光り輝くゴーレムは気になるが、とりあえず井戸の底へ精霊玉と共に落下していくゴーレムを助けないと!と思ったコウはフェニへゴーレムを救い出すように指示を出す。
フェニは指示を受けるとすぐに飛び立って井戸の底に向かって飛んでいき、井戸の中を覗き込むと落下していくゴーレムを上手いこと掴んだらしく、井戸の途中で青く光っているのが見える。
そしてフェニによって井戸から救出されたゴーレムは再び、井戸の縁に立っているが、何故かゴーレムの手元にある精霊玉は色が抜け落ちて無色のビー玉となっている。
これではまるで魔力を吸い付くされた魔石のような見た目をしているではないか。
確かに今思えば精霊玉は魔石と近しい見た目をしてるので、ゴーレムは精霊玉から魔力を吸収することが出来るかもしれない。
「精霊玉をもしかして吸収したのか?」
「ゴッ?」
もしかしたらゴーレムが精霊玉の魔力を魔石のように吸収してしまったのかと思い、尋ねてみるも何のことか分からないのかゴーレムは首を傾げていた。
ゴーレムがそんな器用に嘘をつくことが出来るとは思っていないので本人の意志に関係ないのだろう。
すると青く光り輝いていたゴーレムの体の色が薄い肌色から徐々に変化していき、全身は水色となって元々魔石が入っていた窪みには精霊玉と同じように水のようなものが渦巻いていた。
「絶対にこれは精霊玉のせいだろ...何か変化はあるか?」
十中八九、精霊玉のせいだということは分かるのだが、どうなってしまったのか分からず、ゴーレムに何かしらの変化はないか聞いてみることにした。
「ゴッ!」
そんなゴレームは元気よく返事を返すと井戸に向かって飛び込んでいき、そのまま落下していくではないか。
何かしら意図があってゴーレムは井戸の中に飛び込んでいったのだろうと思い、コウはフェニへ助け出す指示は出さず、ジッと待って井戸を覗き込んでいると井戸の底から何かが上がってくる。
「冷たっ!」
「ひぃ~!ずぶ濡れです~!」
そして井戸からは噴水のように大量の水が溢れ出し、その場にいたコウやライラなど全員は井戸から溢れ出してきた冷たい水によって、ずぶ濡れになってしまった。
「ゴォー!」
その噴水のように溢れ出している水の上にはゴーレムが立っており、どうやらこれを起こしたのはあのゴーレムのようだ。
もしかしたら水の精霊が作り出した精霊玉ということで、それを吸収したゴーレムは水を操れる若しくは生み出すことが出来るようになったのかもしれない。
するとこの状況を目にした周りにちらほらといる村人達は気になったのか徐々に集まってくるではないか。
「騒ぎになる前に行くか」
「そうですね~これで水問題も解消したかもですね~」
とりあえず貴重な精霊玉は1個失ってしまったものの、水問題を解消できたということなので、騒ぎになる前にまだ終わっていない木を伐採するという依頼を達成するため、その場から離れるのであった...。
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