262話
「厄介な相手だなっ!」
上下左右、様々な方向から次々と襲いかかってくる黒い触手に対して応戦するようにコウは使い慣れたサンクチュアリを自身の手足を操るが如く自由自在に振るい、切り落としていく。
そして切り落とした黒い触手の先端は地面に落ちると先程、手で救った時と同じような澄んだ水へと戻り、乾いた地面へと吸い込まれていく。
ただし切り落とした部分から再び、黒い触手は再生するかのように生えてくるためか、幾ら切り落としてもキリがない。
それもその筈、バンシーが操っているのは池の水全てということもあり、幾ら切り落としたとしてもすぐに再生するのは、ほぼ無限に近しいリソースを持っているからである。
またバンシーに近づいて攻撃しようにも、黒い触手が身を守るように周囲を囲い、黒い池の中心部にいるため、これでは近づくこともままならない。
「どうするかなぁ...っと危な!」
正直、バンシーが操れる池の水の範囲外にまで逃げてしまえば良いのであろうが、相手がついてくるとは限らず、また根本的な解決には至らないため、迫りくる黒い触手を切り捨て解決策を考えながら戦っていると、意識を割かれているためか、つい不意を突かれそうになったりしていた。
とりあえずパッと考えて思いついた池の水を全て無くす方法で1番手っ取り早そうなのは火力の高い火魔法で全てを蒸発させることなのだが、残念なことにコウは火魔法に適性はないため却下。
ただし火魔法の適性があったとしても、森の中ということで大規模な火魔法を使ってしまえば火事になってしまう可能性が高かったため、使うことは無かっただろうが...。
ともかく、あの黒い触手や池の水を何とかしないといけないことには何も始まらない。
「ちっ...いちいち鬱陶しいな!氷壁!」
流石に次々と襲いかかってくる黒い触手に対して多少の苛立ちを覚えたコウは少しだけ休憩するため、目の前へ自身を囲うように巨大な氷壁を作り出し、全ての黒い触手を一時的に防ぐことにした。
そして、その氷壁に向かって何本もの黒い触手が鋭い槍のように尖らせて、突き刺すと、氷壁の冷気によって冷やされたのか、氷壁に触れた部分からピキピキと凍っていき、黒い触手の動きがどんどんと鈍くなっていく。
「あぁ!最初からこうすれば良いじゃないか!」
コウはその光景を見ると何か思いついたようで、囮用の氷壁を追加しつつ、身を隠しながらバンシーに気づかれないようにその場からこっそり離れて、池の縁まで移動していく。
バレずに池の縁へと到着したコウは亜技を使うのか、自身の身体の中にあると思われる魔石から魔力を引き出すと、頭のこめかみ部分に羊の角に似た小さな氷の巻角が生え、地肌には薄っすらと氷が張り付いている。
そしてサンクチュアリの刃先である先端部分を黒い油のようなものが広がっている池に触れさせて、身体から溢れ出る魔力を全力で流し込むと、周囲が一瞬で真冬が訪れたかのように冷え込み、池の水の全てを凍らせる。
池の水を凍らせたということで、水面と繋がっている黒い触手の先端までも凍りつき、バンシーは突然、全てが凍りついて操れなくなったことに対してかなり動揺しているようだ。
そしてコウは逃げる暇すら与えず、一瞬で終わらせるために足に力を込めると地面を抉り、凍った黒い池を踏み壊しながら加速していき、バンシーの元へものの数歩で一気に距離を詰めた。
「終わりだっ!」
浮かんでいるバンシーに対してサンクチュアリを胸の中心に突き刺し、貫くと藻掻き苦しみだし、同時に突き刺した胸の中心部からピシピシとヒビが入り始め、そこから青い光が漏れていき、バンシーを包み込んでいく。
何が起こるのか分からないと思ったコウはサンクチュアリを引き抜き、その場から離れて、様子を見ていると閃光のように強い青い光が一瞬だけ輝いて周囲を照らす。
「うっ...一体なんなんだ...?」
閃光のように輝いた青い光を直接見てしまったコウは視界が欠けてしまい、目を擦って何とか周囲の状況を把握しようとする。
もし先程の一撃でバンシーが倒せていないのであれば、今の隙を突いて反撃をしてくる可能性が高いからだ。
しかし目の状況は先程の青い光によって状態があまりよろしくないため、ぼやっとしか目の前は見えず、バンシーがいた池の中心部から何かが近づいてくるのが見える気がするので、いつでも迎え打てるようにサンクチュアリを構えて備える。
ただし襲いかかってくる雰囲気はなく、徐々に視界が回復していき、なんと目の前には最初に出会ったアクエールが綺麗な青い髪を風で揺らしながら立っているのであった...。
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